2018.02.26

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

野草界のマドンナ「のんさん」と、多摩川で野草をとって食べる

いつもは男三人で地味に釣り取材を行っている同連載。しかし、今回は釣りもしないし、 メンツも違う。野草とりの達人をゲストに迎え、タマゾン川で草パーティーに興じた。

用意するものはハサミとナイフ、野草の本。たったこれだけ。念のためポイズンリムーバーも携帯すれ ば、サバイバル気分が味わえる!?

知らなければ単なる雑草、知っていれば美味しい野草!

多摩川河川敷で一番の大物といえばハマダイコン。柔らかい部分なら葉も根も食用可能。スコップを持参して掘り起こそう。

身近な場所で一番簡単にハントできる食材といえば、四季折々に生えてくる野草である。特別な免許や道具は一切不要で、必要なのは食べられる植物の知識だけ。山に分け入ってキノコや山菜を採るとなれば、装備や体力に土地勘など、越えなければならないハードルがあるものだが、ターゲットが野草であれば自宅の近所で誰でも採取可能。どこでもその土地に根付いた食べられる野草が数種類は生えているもの。
 
なんて偉そうに書き出してみたけれど、実は私も野草に関しては素人同然。わざわざ採って食べようという興味が薄く、それほど知識が無かったりする。そこで今回はナビゲーターとして、毎日のように河原で旬の野草を摘んでいる、のんさんにお越しいただいた。なんでも最初は飼っているウサギのエサとして摘んでいたが、自分も食べられる野草が多いことに気が付き、今では野菜を買う機会が激減するほどハマっているのだとか。のほほんと一緒に散策したのは、のんさんのホームである多摩川の河川敷。どの世界でもそうだが、マニアの視界は一般人のそれとは別の機能が備わっており、野草マニアののんさんと河原を歩けば、それこそ食べ切れない量、そして覚えきれない種類の野草と出会うことができる。世の中はこんなにも食べられる野草で溢れていたとは!

動物性タンパク質も確保しようと川を攻めてみたものの空振り。時期が良ければナマズやスッポンが捕れたかも?

クレソン(オランダガラシ) / 独特の辛味が特徴のクレソンは、日本各地の水辺で増殖している外来種。生で食べるイメージだが、加熱をしてもうまい。

カラシナ / 種からカラシがとれる本種は、葉っぱもピリッとした辛さがある。新芽を曲げてポキンと折れる部分が柔らかくて美味。

スイセン※有毒 / ニラやノビルと間違えて食べてしまうと中毒を起こすのがスイセン。葉の形だけでなく、匂いや根の形状も確認すること。

ノゲシケシ / ではなくキクの仲間であるノゲシ。誰もが見たことのある雑草だが、若葉は食用になるのだ。別名ハルノゲシ。

クコ / 春は柔らかい若葉が食用となり、秋になれば薬膳としても珍重される赤い実がな る。トゲがあるので採集には要注意。

ギシギシ / どこにでも生える雑草だが、春先に出る新芽には強いヌメリがあり、オカジュンサイとも呼ばれる知る人ぞ知る珍味。

のんさんと野草探しをしていると、本当に驚くことばかり。ノビルやヨモギくらいなら私でもさすがに知っているが、多摩川の河原に野生のダイコンが太い根を生やしているなんて初耳だし、カラシナも名前くらいは聞いたことがあっても自生しているのを見るのは初めて。またその存在を知ってはいたけれど、食べられることを知らなかった野草の多さに驚いた。ギシギシなんて雑草中の雑草とも呼べる存在でわざわざ食べる意味などないと思ったが、その新芽がまさかジュンサイのような高級感のある食材だとは。収穫する種類も量も多すぎて、持ってきたビニール袋だけでは足りない程である。
 
誰でも無料で食材確保ができて、ハンターとしての好奇心も満足させてくれる野草摘み。時期や場所を変えることで、また違った種類の野草に出会えるのだから、その奥はどこまでも深い。
 
目的を外れて時間を取られるという意味の「道草を食う」という言葉があるけれど、道端の草をよく知り、食べ頃を摘んで、美味しく食べるゆとりのある生活という、褒め言葉になる日が近いかもしれない。皆さんもぜひ野草図鑑を一冊持って、近所の河原でも散策してみてほしい。食べられる野草の多さにきっと驚くことだろう。私も今後は積極的に道草を食って生きていこうと思う。

この日に収穫した野草は、ハマダイコン、カラシナ、クレソン、ギシギシ、ノビル、ノゲシ、クコ、タンポポ、ウシハコベ、タネツケバナ、ヨモギなど多数。近くの畑から種が飛んでくるのか、時期によってはトマトやレタスなどが生えていることもあるのだとか。

店では買えない食材、食べられない料理を楽しむ

編集の鈴木さんは得意料理のペペロンチーノにノゲシを加えた一皿に挑戦。

ギシギシの新芽はオカジュンサイとも呼ばれるだけあって、溢れ出る粘りがすごい!

食用に栽培されている野菜に比べると、勝手に生えてくる野草というのは、よく言えば風味が強く、悪く言えばアクが強い。美味しく食べるには多少難易度が高いかもしれない。とはいっても、種類に応じた扱い方さえ掴んでいれば心配無用。カラシナやノゲシなどの葉物であれば、サッと茹でればアクは抜けるし、ハマダイコンなどは硬い繊維質さえ避けられれば問題なし。
 
素材を生かしてどう料理するかが腕の見せ所であり、風味を残しつつ適度にアクを抜くことができれば、今この季節しか食べられない一期一会の逸品となるだろう。もちろん野草料理だからといって、買ってきた野菜や肉を使ってはいけないというルールはないので(そういうルールを設定しても楽しいが)、ちょっとしたアクセントとして使うのもあり。たとえば餃子でニラの変わりにノビルを使うだけでもひと味違った仕上がりとなるし、いつもの天麩羅にヨモギやタンポポを加えるだけでも春を感じることができるだろう。

多品目を一気に調理できる3バーナーが大活躍。スタンドにウォータージャクをつければ水道いらず。soto 3バーナーST-532 ¥29,160 <新富士バーナーお客様係 tel.0533-75-5000>

私が作ったハマダイコンのキンピラは、硬い繊維質の部分が混ざって不評。失敗を通じて学んでいくのだ。

「え、それ食べられるの?」という視線を投げかける猫。 食べられるし、食べる意味があるのだよ。

春に摘んだ柔らかい若葉なら、軽く湯がくだけでアクはきれいに抜けてくれる。塩を一つまみ入れるのがコツ。

「食べられるから」ではなく、「食べたいから」食べる

のんさんの野草仲間を交えて試食会。次回はバケツ一杯も採れるという菜の花を狙うことを約束した。

この体験で野草摘みに目覚め、後日フキノトウを探しにいった。オーバーに言えば、野草を知ると世界が少し広がるのだ。

自分の手で調理して、それを味わうという経験は、美味しい時期や部位を理解することにも繋がり、次の野草摘みへと活かされる。わざわざ摘んで、手間暇かけて調理して、美味しくいただく意味がそこにはあるのだ……ということをのんさんから教えていただいた次第である。

何も言わずに出したらジュンサイと間違えるかもと思えたギシギシのお吸い物。クセもなく上品な味。

奥は軽く湯がいたカラシナの醤油漬け。手前は生でも食べられるノビルの球根。程よい刺激がクセになる。

不思議とレタスの香りがするノゲシの入ったペペロンチーノ。食べ慣れた料理も野草が入れば新鮮な味となる。

まるでおままごとのようだが、ちゃんと食べられるオリジナルの七草粥。春らしい青臭さを楽しもう。

ノビルの葉っぱ部分をたっぷり入れ たチヂミ。ちょっと下処理の大変なノビルだが、その労力に見合った味わいを保証する。

こじゃれたカフェで出されてもおかしくなさそうな、ヨモギとタネツケバナが入ったパンケーキ。甘いにおいが辺りにただよう。

text:Yutaka Tamaoki / photo:Yoshiro Yamada

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