2018.01.28

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

東京メトロのお仕事~東西線深川車両基地編・後編~

深川工場内建屋で、「台抜き」のために宙に浮く15000系先頭車。

普段、乗客の目には触れない部分で鉄道現場職員の方がどのようなお仕事をされているのか? 東京メトロではそういう現場の取り組みをより多くの方に知ってもらい、ひいてはファンになってもらいたい…という思いで「東京メトロメディアツアー」を実施。前編につづいて東西線深川車両基地の「お仕事」を見ていきたいと思う。

鉄道車両を分解整備 〜「工場」のお仕事

前編では日常的な検査を行なう「深川検車区」を訪ねたが、後編では広大な同じ敷地内にありつつ、今度は分解を伴う大規模な修繕等を担当する「深川工場」を見ていこう。この工場で行なわれるのは、4年以内ごとに実施される「重要部検査」、8年以内ごとに実施される「全般検査(全検)」がメイン。両検査の最も大きな違いとしては、後者では車体までが対象に含まれることだろう。かつて電車が鉄製で塗装仕上げが主流だった頃はその機会に再塗装も行なわれたものだが、アルミ製無塗装車体が主流の東京メトロではその車体塗装の工程は存在しない(ラインカラーのフィルムの貼り替えなども通常は必要ないとのこと)。

一挙大人数の作業者の方たちにより、車内のシートが取り外されていく。

取材当日は、ちょうど全検に入場する車両(10両編成を分離した3両分)があった。最初に行なわれたのは客室内シートの取り外しで、駅ホームのように車内と段差のないデッキへ多くの作業員の方が一斉にシートを持ち出し、車内があっという間にがらんどうになる様は圧巻。取り外されたシートは当然徹底的な洗浄と修繕が行なわれることになる。

工場建屋内に進入してくる被検査車輌。編成の逆端に構内入換車(通称アント)が連結され、推進されている。  

クレーンを掛ける位置の調整は、このように極めて近い位置での目視が基本。それだけ繊細な作業なのだ。

その後車両は構内入換車に推進されて工場の建屋内に進入する。車両と車両をつなぐ連結器を切り離し、いよいよ1両ごとに車体を持ち上げて台車を外す「台抜き」のシーン。本日のメインイベントだ。建屋内に設置されたクレーンは車体を前後2ヶ所で支えて持ち上げるが、大事なのはその位置とバランス。4点に均等に荷重がかかるよう目視によってセンチ単位の調整が行なわれる。数十トンの車体を持ち上げるための作業とは思えないほど繊細、かつ作業者のチームワークが要求される作業である。

台車から主電動機(モーター)を取り外す作業。主電動機と残った台車部分は、この後それぞれ別の場所で分解整備される。

エアブレーキや台車空気バネなどの動作源となるコンプレッサーは、ユニットで取り外された後、トラックで別の工場へ運ばれる。

分離された車体と台車はそれぞれ別の工程に進む。台車からは主電動機(モーター)が取り外され分解整備へ。車体からは床下機器について、それぞれ専門に担当するチームが取り外して自分の持ち場へ持って行く。一部の機器(例えばコンプレッサー)はこの深川工場ではなく日比谷線の千住事業所へ陸送して整備をするようになっているそうだ。

分解整備が完了したブレーキ機器を、台上で空気管を接続して試験する装置。

本日はこの建屋の2階に位置する「空制班」の作業場も取材させていただいた。「空制」とは「空気制動」、つまりエアの力を用いたブレーキシステムのこと。まさに電車の安全をつかさどる部署である。ここではブレーキの弁装置や調整装置、非常用ブレーキ装置などの分解整備が行なわれており、一つ一つの機器は整備完了後に試験装置に接続して実際に空気を流して正常に動作することを確認。そして初めて元の車両に戻されるのである。

湯気にかすんでいるが、鉄道工場ならではの大浴場。社員食堂とともに、職場のオアシス的存在であろう。

取材の最後に、ホッとするシーンを垣間見ることができた。それはなんと大きなお風呂(!) 一日油まみれで働く作業者の方たちが、終業後に汗と汚れを落とし、仲間たちとリラックスして会話を楽しむ空間なのだろう。取材時はまだ入浴時間ではなかったが、近代的な設備の一方で、おそらく鉄道の現場では昔から変わらないこうした厚生施設の存在…それが長い歴史に培われた鉄道現場の強さであり、魅力なのだろうと感じた。

(完)

text & photo:Ken HAYAMA(羽山 健)

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