2018.04.13

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

カセットテープ名鑑 透明ハーフが眩しかった1984年! TDK DS &...

近年になると安いテープこそ透明のハーフを採用しているように感じるが、カセットテープ史上最初に透明ハーフを採用したモデルは、意外にもTDKのMA-Rだった。もともとダイキャストのフレームを見せるために作られたものだ。その後、しばらくは透明ハーフは上級モデルの証だった。

エントリークラスの戦い

 1984年、カセットテープの高性能化が進み、とくにエントリークラスの性能が飛躍的に向上していた。またヘッドフォンステレオの普及によって、カセットユーザーが若年化。カセットテープそのものの低価格化も進んだ。そんな中、カセットテープメーカー各社が1984年から1985年にかけて、揃ってエントリーモデルのテコ入れを図った。マクセルはURの派生モデルUR‒F、ソニーは新HFを投入。そしてTDKはDをモデルチェンジした。さらにTDKは黒い重厚な樹脂ハーフのDに加え、透明ハーフのDSをラインナップ。まったくの同価格で発売した。

 これによりUR‒F、HF、DSと各社のエントリーモデルが透明ハーフで揃い踏みとなった。価格はそれぞれ46分で390円、370円、370円とUR‒Fだけ若干高かったが、実勢価格はほとんど差がなかったと記憶している。
 各社透明ハーフを採用したのにはわけがあった。もちろん軽そうで若々しいイメージで若年ユーザーをターゲットにした、ということもあるが、透明ハーフとスリップシートの進化が大きかったのだ。

 TDKは1979年にMA‒Rで初の透明ハーフを作り上げたメーカーだった。その際に苦労して作り上げた透明のスリップシート。その技術はDSにも活かされている。新設計の透明シート、精度を高めたパーツの採用など、透明ハーフのために開発されたRC‒Ⅱメカニズムでスムーズな走行を実現していた。そのためか通常の黒いハーフのDよりも若干走行が安定していたように思える。今回撮影のためにパッケージを開けたので、実際に使ってみたのだが、記憶していた印象と違い引き締まった低域とキラキラした高域は十分にハイファイ。ノイズリダクションを入れなくても十分実用に耐えるノイズレベル。今回はあえてバイアス調整をせずに使ったのだが、その音は素晴らしいものであった。

 さてこうしてエントリークラスでは透明ハーフ三つ巴の戦いが繰り広げられたが、TDKはひとつ上のクラスでも透明ハーフモデルを展開していた。ノーマルポジションの中級モデル、ADの派生モデルである。

TDK DS

高性能のための透明ハーフ

 当時TDKでは主に3クラスのノーマルポジションをラインナップしていた。エントリーがD(とDS)、上級がAR、そして真ん中がADである。価格でいえばDの46分が370円に対し、ADは470円、ARは500円となっていた。そのTDKのノーマル3兄弟にDSと同じく1984年加わったのがAD‒Sだった。

 クラスとしてはADと同じテープを使用しているので中級モデルということになるのだが、新開発の透明ハーフを用い、価格ではARを逆転し、46分で520円と、アビリン磁性体を使った最上級ノーマルのAD‒Xに次ぐモデルであった。

 AD‒Sでは低共振を目指して作られたSP‒XCメカニズムを採用。またハーフは特殊プラスチックで作られ、剛性アップと走行精度の向上が図られた。さらにハーフ共振も低減。ハーフが原因となる音質低下を極力排除している。そのため、ADと同一のテープを使いながら、ADよりもワンランク上のカセットテープとして認識されていた。

 実際、AD‒Sの『S』はスプレンダー(Splendor、豪華、素晴らしいの意)の『S』で、ハーフもDSの無色透明に対し、若干スモークがかっており高級感は抜群だった。ちなみにDSの『S』は『Spirit』の『S』なので、そもそもコンセプトが違うものだった。

 こちらも試しに録音してみたところ、DSと比べると高音も低音も伸びのびとしつつ、全体的に音が厚い感じで、こんなテープがあればハイポジもメタル不要なのでは、と思わせるほど。

 現在、唯一生産が続いているカセットテープ、URが透明ハーフで生き残っているのは、透明ハーフでも高音質が実現できるようになったDSとAD‒Sの功績も小さくないと思うのだが。

 いずれにせよ、同じテープに何種類ものハーフを用意する、そんな手法が取られていたこの頃。カセットテープの黄金期と言っても差し支えないだろう。今は昔の話である。

TDK AD-S

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