2018.04.13

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

LEGEND CARS #01 アメリカ発祥の世界基準レースが遂に日本上陸!

Text/Takayoshi SUZUKI / Photo/Ken TAKAYANAGI (Daytona 312号掲載記事)

言わずもがな、アメリカはクルマ大国であり、モータースポーツ大国だ。この国には様々なレースが存在し、多くの人々が参加し、観戦し、熱狂している。そしてその中には、まだ日本で知られていないレースも数多くある。『LEGEND CARS』もそのひとつだ。徹底したローコストとイコールコンディションを追求し、誰でもモータースポーツを楽しめるように作られたこのレースが、遂に日本でも本格的にスタートした。

WHAT IS IT ABOUT? / レジェンドカーってなんだ?

レジェンドカーは、1992年にアメリカで誕生したレースカテゴリーだ。そのコンセプトは「低コストで、メンテナンスも容易で、誰もが楽しめるレースを創る」というもの。レースマシンの生産はノースカロライナ州にあるレジェンドカーズ・インターナショナルで一貫して同じモノが生産され、ユーザーはそれを使用することでイコールコンディションを徹底。実車の5/8サイズで作られたマシンは、パイプフレームのシャシーにヤマハのバイク用エンジンを積んだ車体構成で、非常に小型なので保管や積載がしやすいというメリットがある。車両価格もおよそ2万ドル( 日本仕様のコンプリートマシンは229万8000円)程度と、レースマシンとしてはかなりコストが抑えられている。

アメリカでは年齢やスキルによって4つのカテゴリーに分けてレースを行っているが、マシンスペックは全て共通。発足当初からNASCARの入門用カテゴリーとしても人気を博しており、現在NASCARに参戦中のレーサーの中には、何人もレジェンドカー出身の人間がいるほどだ。
いわばレジェンドカーは、ヨーロッパや日本におけるカートと同じ登竜門的な役割りを果たしているのだが、今レジェンドカーはその手軽さとパッケージングの良さが受けて、世界中に広まり始めている。カナダを含めた北米全域を始め、欧州、オーストラリア、メキシコ、南アフリカでレースが開催されており、レース人口が増加中。
そして遂に、日本でも『レジェンドカージャパン』が発足。車両の販売、メンテナンス、レースの主催等を一手に引き受ける公式団体が誕生したので、日本にいながらにして誰もがレジェンドカーでレースを楽しめる体制が整ったのだ。気軽にレースを楽しみたい人にとっては、またとない機会の到来だ。

DIMENSION / アメリカン・レジェンドを体現したボディ形状

レジェンドカーの特徴は、まず何と言ってもその小ささだ。軽自動車よりも小さいそのボディサイズは、実車の5/8サイズと言われており、NASCAR規格に準じたパイプフレームシャシーに、FRP製のボディカウルを被せた構成となっている。レジェンドカーはNASCAR創設時のレースカーへのオマージュから、1930〜1940年代のアメリカ車のボディカウルのみがラインアップされており、日本仕様車は34フォード・クーペと37シボレー・セダンの2車種が用意される。このカウル形状の違いによる空力効果にほぼ差は無いので、どちらを選ぶかの基準は好みでしかないそうだ。

エンジンはヤマハXJ 等に搭載されているバイク用の排気量1250㏄空冷4気筒を縦置きで搭載。130馬力の出力は、車重わずか450㎏のレジェンドカーには充分なものだ。駆動方式はチェーンドライブからシャフトドライブへと変更され、直結デフへと繋がれる。ちなみにホーシングは70系カローラの物がベースらしく、意外と日本製パーツが使われているのが面白い。ミッションはバイクそのままで、5速シーケンシャルとなる。

INTERIOR / 小型ながらレースマシンらしいスパルタンなインテリア

小さなコックピットは完全に一人用サイズだが、シートはプロペラシャフトを避ける為に僅かに左側にオフセット。ボディは小さなFRP 製にも関わらず、1ピース構成ではなく何とドアを装備。後ヒンジで開閉するので、小さい車体ながら乗り降りはしやすい。コックピット内部は完全にレースカー仕立てで、フロントスクリーンはあるが、両サイドに窓はなくネットのみを装備。シートもアメリカンレーサーらしいアルミ製のバケットシートを装着する。

タイヤは現在の所日本でも入手しやすいヨコハマ製を装着。サイズは13インチと小径だが、レジェンドカーとは見た目的にもマッチしている。フェンダーがあるボディカウルにも関わらず、トレッド幅がさらに広くタイヤが大きくハミ出しているのは、タイヤがバンプラバーの役目を果たしているから。他車やウォールと仮に接触しても、ボディやフレームではなくタイヤが先に接触するので、車体が負うダメージが少なくて済む、というわけだ。
足まわりは前後共フルピロボール式のダブルウィッシュボーン。ワンメイクレースなので厳しいレギュレーションが設けられているが、キャンバー角、キャスター角、車高、スプリングレートは調整が可能。フロントブレーキは2ピストンキャリパーのディスク式だが、リアはシンプルなドラム式だ。

FEEL THE RIDE? / Daytona編集長 サーキット走行インプレッション

雑誌の編集という仕事柄、手元には様々なジャンルの最新情報がジャンジャン飛び込んでくる。そこには大抵、大げさなキャッチコピーと共に良いことばかりが書かれているものだが、しかし本当のことは実際にそのものに向き合ってみないとよく分からないというのが正直な所だ。「レジェンドカーって言うすごいクルマが日本に入ってくるらしい」という噂を聞いた。なんでも、アメリカで作られた本格的なレーシングカーで、30年代のフォード風のボディを纏っているんだとか。一体何だそのクルマは? 早速取材してみることにした。撮影当日、その日はあいにくの天気だった。千葉県にある『袖ヶ浦フォレストレースウェイ』というサーキットに行く途中から、雨量は増すばかりである。
サーキットに着くと、ピットにはトランスポーターから降ろされたレジェンドカーが佇んでいた。想像よりも遙かに小さな車体にビックリ。〝アメリカ製=デカイ〞という想像の真逆を行くサイズ感。軽自動車よりも、二回りぐらい小さな印象である。

レジェンドカーの輸入を手がけているのは『オートファクトリー』の代表である田代さん。自分と仲間が趣味で楽しめるレースカーを探していたときに、その存在を発見したそうだ。
アメリカ在住の経験がある田代さんは、早速本社工場のあるノースカロライナへ向かった。レジェンドカーとの初対面である。そこでまず驚いたのがマシンのクオリティの高さであった。コレはきっと素晴らしいクルマに違いない。そう確信した田代さんは、購入を決意。いよいよ、レジェンドカーが日本に初上陸を果たすこととなる。
当初のコンセプトは、友達と共に、遊べるクルマ。つまりは、あくまでも個人的な趣味の範疇である。週末、サーキットで楽しめたらそれで良いはずだった。しかし……。乗れば乗るほど、見れば見るほど、レジェンドカーの楽しさに惹きつけられていった。「すでにアメリカだけでなく、世界中でシリーズ戦が開催されているわけだし、よかったら、日本でもレジェンドカーのシリーズ戦をやってみないか?」というアメリカサイドからの提案もあり、レジェンドカーのワンメイクレースを日本で開催することは出来ないだろうか? と、いつしかそんなことを本気で考えるようになったのだった。

【あっという間に参戦者がズラリ】
祖国アメリカでは、誰でも気軽にレースに参加できるカテゴリーとしてレジェンドカーは人気を博している。本気でレーサーを目指す少年から、趣味でレースを楽しむおじさんまで、様々な人たちがレジェンドカーに乗っている。構造がとても単純で、メンテナンスも自分自身で簡単に行え、破損した場合のパーツ代もメチャクチャ安価。さらに、車体も小さいので、保管するのも運ぶのも楽チンというのが、レジェンドカーが万人に愛されているポイントである。
リーズナブルにレースカーを作りたいということであれば、中古の市販車を買ってきて仕立てるという選択肢も無くはない。しかし、車体の安全性や耐久性、そしてエンジンや足まわりなどの機関面をサーキットスペックに仕上げるまでには莫大な時間と労力が必要となってしまうし、市販車ベースとなると、突き詰めていくのにも限界がある。レースをするためだけに開発された車輌には、最後の最後でかなわないのである。その点、レジェンドカーの場合は、生まれたままの状態で「レディ・トゥ・レース」。しかも、市販車をちまちま作り込んだって到底たどり着くことができない、サーキットを走る為だけに生み出されたクルマだけが持つクオリティも内包している。
そんな事実は、レースを少しでもやったことがある人ならぱっと見たその瞬間に分かることなのかもしれない。だから、レジェンドカーは、サーキットを走れる〝楽しいクルマ〞を探している人たちをあっという間に虜にしてしまう。輸入してから一年も経たないうちに、すでに14台が販売され、そして、日本でのシリーズ戦の開催も決定することとなったという事実が、それを証明しているのではないだろうか。

【脳みそが溶けちゃうかも】
アメリカのサーキットが提示している安全基準をバッチリ満たした本格的なパイプフレームシャシー。車体前方にはカワサキの4気筒1250㏄が縦に収まる。レブリミットは約9000回転。ミッションはシーケンシャル。アルミ製のバケットシートに腰を下ろし、脱着式のステアリングをシャフトに差し込めば、目の前に広がる風景は、マジなレーシングカーだ。
イグニッションをオンにして、スターターボタンを押す。クルマに比べると、明らかにフライホイールの小さいバイク用エンジンだから、吹け上がりの良さはハンパじゃない。排気管長の短い直管マフラーからは、パリパリと勇ましいエグゾーストノートが響く。左足でクラッチを踏み、シフトレバーを押すと、シフトインジゲーターに〝1〞という数字が現れ、クラッチを離せばクルマはスルスルと前に進んでいく。車重が軽いということもあり、バイクのエンジンでもトルクは十分。スタートに気を使う必要はない。あとは、アクセルをオフにしてシフトレバーを手前に引けば、2速。スタートしたら、クラッチを踏む必要なないので、左足はブレーキペダルに。そのかわいらしい姿からは、想像もできないほどけたたましい排気音を奏でるレジェンドカーをコースインさせてみることにした。

400㎏台のボディに130馬力のエンジンを搭載しているから、パワー感は十分すぎるほど。ウェットだから、アクセルをラフに開ければテールが流れていくけれど、それが怖くないのは、レジェンドカーのシャシーバランスがとても良いから。サーボの無いブレーキもコントローラブルで、踏んだら踏んだだけ効いてくれるのが嬉しい。ブースター付きのブレーキにはないソリッドな感触は、パワーブレーキが当たり前の現代車ではなかなか味わえない感触なのである。
スロットルを煽りながらシフターを前に倒せば、シフトダウン。ここでもクラッチを踏む必要は無い。袖ケ浦フォレストレースウェイの最終コーナーを立ち上がり、4速、5速とシフトアップし、ブレーキングしながら1コーナーに向けてパンッ! パンッ! とシフトダウンしながら突っ込んでいく。2コーナーに向けてコースを下りながら一瞬スロットルを離してシフトアップ。そして、3コーナーへ向けてブレーキングしながら1個シフトダウン、そしてヘアピン手前でさらに減速しながらもう1個シフトダウン。ヘアピンでテールが出ないように丁寧にスロットルを開け、またまたシフトアップ。5コーナーに向けて全開でアプローチしていく。
気分はまるでスーパーGTである。市販車にはないレスポンスのエンジンとシーケンシャルシフトでクルマを操る楽しさは何物にも代え難いほどの快感だ。
取材のための占有走行枠として用意してもらった時間は約30分。軽く試乗して、すぐに戻ってこようと、決めてコースインしたはずなのに、気づけばチェッカーフラッグを受けていた。こんな楽しいクルマ、乗ったこと無いかもしれない・・・。
【続く】

[REGEND CARS JAPAN]
www.legendcarsjapan.com

(Daytona 312号掲載記事)

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