2018.04.23

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

特集『実景模写』〜憧れの景色をレイアウトに〜

あなたが鉄道模型を始めたきっかけは、旅先で出会った列車の思い出からでしょうか? それとも、地元を走る列車の力強い姿からでしょうか? どちらにせよ、心に残る列車との出会い、そしてその舞台となった鉄道風景の記憶が、この趣味の根底にあるのではないでしょうか。感動のシーンを手に触れられる姿で残したい、再現したいという思いから、レイアウト製作を志す方も多いことでしょう。 「実物の姿をありのまま小さく、手もとに」という模型への根源的な願いは誰もが描くものですが、実際にはスペースや費用、時間…などなど様々な理由から、実物の鉄道をまったくそのまま再現することは不可能。今回は実物の風景を巧みに切り取ることで、限られた条件の中でその夢を実現した作品を見ていきます。スペースに収めるためのデフォルメをかけつつも実際の風景らしく見せるエッセンスはどこにあるのか、それぞれの作品からあなたなりのヒントを見出していただければと思います。(編集部)

東北本線『松島駅』

自動運転システムで眺めて楽しむ『Nゲージモジュールレイアウト』

東北本線松島駅を発車するE721系上り普通列車。かつては455系や417系など、国鉄急行・近郊型電車が活躍していた同線も、現在はステンレス車体の近代的な電車が活躍する。

◆はじめに

 かねてから幹線のレイアウトを持つのが夢でしたが、幹線級ともなるとホームや留置線、走行させる車輌などを考慮するとどうしても広いスペースが必要となってしまうため、賃貸アパート住みの自分には少々ハードルが高く、検討を繰り替えしてはまた考えを改める日々が続いていました。 小さなスペースにカーブと勾配を繰り返して距離をかせぐ、いわゆる一般的なエンドレスのレイアウトは、まるで遊園地のジェットコースターのようでリアリティに欠ける感じが個人的にはあまり好みでありません。貨物も優等列車も走れる幹線がいいけど、スペースを極力絞りたい、しかし多層構造にはしたくない…という様々な欲求と約10年程向き合った結果、レイアウトの見える部分と見えない部分を有効に活用し、見えない部分で「距離=時間」を稼いでもらうことで、限られたスペースの中でもそれらしい表現ができるのでないかという考えに至りました。

◆モチーフの選定

 関東圏の場合、10~15輌編成対応というホームが多いので、それよりは全長の短い東北エリアで最初のモチーフ先を検討しました。その中でも貨物、優等列車が走るようなレパートリーが豊富な路線、なおかつ折り返し運転があるような中規模駅に選定を絞ります。幹線で大規模な駅となると、スペースの大きな弊害となる新幹線のホームがあったりするので…。候補としては羽越本線のあつみ温泉駅や東北本線の藤田駅等があがりましたが、前者は取材の移動距離の問題、後者はあまりにもニッチすぎるという身内からの苦情(?)があり、最終的には知名度もあ
り、比較的近場で車輌のレパートリーが多く、折り返しの運転が(2年程前までは…)多かった東北本線の松島駅となりました。

▲レイアウトの線路配置図。図の赤線より下側が情景付きの駅モジュール部分で、その上側(レイアウト裏側)は隠しヤードとなる。レイアウト上では赤線部分に背景板が設けられ、風景を分断している。また、情景部分の曲線は緩やかであるのに対し、見えない裏側の曲線半径は小さいものを使用している。
◀︎上り線(外側)はTCS自動運転ユニットNの「パターン6(」左図)をベースに、駅側と隠しヤード側にそれぞれセンサーを設けている。センサーの働きはまず水色のセンサー感知で減速し、赤色のセンサーで停車する。隠しヤード側のセンサー間隔を長めに設けているのは、減速から停車までの時間を稼ぐためだ。
▶︎下り線(内側)の自動運転モードは「パターン7」がベース。駅構内にセンサーは設けず、自動運転の場合は駅を通過する(手動では停車可能)。ヤードは2線分用意されているので、異なる列車を交互に運転可能。なお、駅構内の中線は折り返し運転の「パターン5」で設定しており、3線あるヤードから異なる列車を交互に折り返すことができる。

◆TOMIX製TCS自動運転ユニットの採用

 小さなスペースの中で、自分で車輌を運転して停止させることを繰り返すのは少々無粋な気がしたので、TOMIX製のTCS自動運転ユニットNを採用しました。見えない部分で時間を稼いでもらう…自動運転ならそれが実現可能になります。
 自動運転装置の停止センサーを、レイアウト裏側の見えない部分(隠しヤード)に設置することで、停車により時間を稼ぎ、その後手前の駅に向かって車輌がやってくるという流れを繰り返すイメージです。元々、走らせる事よりも眺めるほうが好きな自分にとって、自宅でいつでも線路際にいるような雰囲気を楽しめたら…という希望も加味しています。

◆自動運転の流れ

 上り線(上野・仙台方面)はTCS自動運転ユニットNの「パターン6」を組み込み、駅で停車→発車後は奥のスペースでさらに停車し時間を調整。列車が再び駅に来るまでおおよそ3分程かかります。
 隠しヤード内の「減速→停止」のセンサー距離を広めにしたのは意図的なもので、この区間で足止めをすることで駅側にやってくるのをさらに遅くしています。TCS自動運転ユニットNの待ち時間は、1センサーにつき最大でも1分程度なので、これでは山手線レベルの運転頻度になります。それを少しでも抑えるために、このようにセンサーの間隔で時間調整をしています。理想を言えば、この界隈の現物通り20~30分に1回程度の走行が望ましいのですが…。
 続いて下り線(青森・小牛田方面)は「パターン7」を応用し、2種類の車輌が交互に駅を通過します。駅構内の中線については自動運転「パターン5」を組み込み、隠しヤードの3線より順番に駅に到着しては、折り返し運転で発車します。地方の中規模駅らしさを演出できるこの中線での折り返し運転が、このレイアウトで一番実現させたかったシステムでもあります。しかし製作途中のダイヤ改正で仙石東北ライン誕生により、日中の松島駅折り返しが廃止されてしまったのは思いもよらぬピンポイントな事件でした…。

◆レイアウトのボードと使用レール

 ボードはTOMIXの「コンビネーションボードA」を曲線区間を含めて使用。レールも基本的にはTOMIXを使用していますが、松島駅の緩やかな曲線表現にはPECOのフレキシブルレール(上下線はPC枕木)を使用しました。しかし自動運転装置に必要なセンサーレールを組み込む必要があり、その上カーブとなる駅付近ではストレートのセンサーレールをそのまま配置することが難しいため、センサーレールのレール以外(道床とセンサー部分)を、PECOのフレキシブルレールに移植しています。また、カーブにカントを利かせるため、線路下に敷いたコルクボードの下にt0.5のプラ板を挟み込みました。

◆ホーム・建物について

緩やかなカーブを描くホームはプラ素材による自作で再現。線路にはカントを設け、車体を傾斜させたまま停車する姿をリアルに再現している。また、架線柱は既製品をベースに、ビームから吊り下がるブラケット類を追加して交流区間特有の仕様を再現。景観上目障りそうな部分こそが、作品をよりリアルに演出する重要なファクターとなる。

 できれば既製品に頼りたい所でしたが、カーブホームな上に、駅舎や建物類も特徴的で、流用できそうな製品が見当たらなかったので、ほぼフルクラッチとなりました。
 駅舎や保線用の車庫・詰所、跨線橋はAdobe Illustratorで図を書いたのち、家庭用カッティングプロッタの「シルエットカメオ」でプラ板をケガいて、建物の輪郭と板の継ぎ目を表現します。窓部分はそれをガイドにカッターナイフで切り落としました。「シルエットカメオ」は紙やカッティングシートなど薄い素材をカットするものなので、使用できるプラ板はt0.2程度の薄いものに限られます。そこで同様にカットした内張りを貼り合わせることで、壁面の肉厚と強度を確保しました。
 松島駅の駅舎は、製作を行なう1年ほど前の建替えにより近代的な建物に変わっていましたが、作品では現在の姿をできる限りそのまま反映しています。窓口や待合室などの室内は撮影した写真をラベルシールに印刷したものを貼り付けて表現。駅舎入口には現代の駅らしいバリアフリーのスロープが設けられていますが、その柵は真鍮線を瞬間接着剤で1本1本地道に取り付けており、これだけで数週間を費やしてしまいました。
 付帯する跨線橋や詰所、保線用車庫についても同様に製作しました。

◆架線柱について

 地方路線(特に交流地区)では、複線架線柱の下に単線架線柱のブラケットが付いているものが多いので、製品ベースで加工を施しました。接着剤で強引に取り付けているので強度に不安が残りますが、東北本線(交流区間以降)らしい佇まいになりました。

◆レイアウトの両端について

裏側の隠しヤードとの境界となるレイアウト両端は実際にはないトンネルで処理。ポイント等線路のメンテナンスに備え脱着可能。

 見えない部分との境目となるレイアウト両端部はトンネルにし、そこから先を隠すように処理しました(実物はトンネルではない)。

◆おわりに

 このレイアウトが完成してからは、良くも悪くも(?)鉄道を撮りに出かけることも少なくなり、自動運転のスイッチを押してやってくる車輌たちを眺めながら部屋で過ごすことも多くなりました。

駅舎や跨線橋、ホーム上屋にはLEDによる電飾が施されており、夜景も再現可能。東北本線を行く様々な列車を、部屋の中でゆったり眺めて楽しむ…。そんな素敵な時間を、このレイアウトは存分に演出してくれる。

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