2018.05.08

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

九十九里でヒラツメガニを採って、ラーメンを作る!

雄大な太平洋の力強い荒波。サーファーが良い波を探すように、離岸流はどこにあるかを見定めようと海を見つめる、マイナー釣り愛好家の玉置豊さん。今日の目的は一つ。漁獲量が少なく、世間一般には流通していない、ヒラツメガニを捕って食べることだ。

準備は簡単、イザ九十九里へ!

カニ網を先端に取り付けた糸巻きは、ハイクレと呼ばれる細い化繊のロープが100m巻いてある。頭が回転するようになっていて、取っ手を持てば糸が勝手に出ていく。お店では1400円で販売。

森川漁網店謹製のカニ網は、所謂釣りのテグスで編み上げられた網を束ねたもので、これでカニを絡め捕る。これは網が絡まないようにと改良を重ねた新作。これで1600円というから、本当に手軽だ。

竿を使わないカニ網漁だけに、これがあれば濡れる心配もない。漁師町でよく見かける、錨マークのウェーダーは、安心のメイドインジャパン。こちらもお店で購入可能。

森川漁網店

手作業で網と網を繋いだり、仕掛けを作ったりする全国でも数少ない網専門店。魚の漁網から鳥の猟網まで、様々な種類の網を取り扱っており、地元の釣り師や、レジャーで九十九里に来たファミリーも訪れる。

ものの1時間でカニがどっさり

迫りくる波に向かって、カニ網を投げ込む。果たして獲物はちゃんとかかるのか?

 我々が知らないだけで、世の中にはいろんな釣りや漁法がある。玉置豊さんは、干潟でマテガイを捕ったり、ウチダザリガニを釣って食べた
り、マイナーな釣り・漁を実践してウェブで紹介しているライターだ。そんな彼の一日を覗くため、秋の九十九里へ向かった。
 朝7時。玉置さん、そして知人の森川さんがやってきたのは白波立つ秋の浜辺。目標はワタリガニの仲間、ヒラツメガニを捕る事で、道具はカニ網と呼ばれる投げ網の一種。素人からすると、網漁は敷居が高いと感じてしまうけれど、実際は至極簡単なものだった。餌をネットに入れ、網を海に放り投げる。そして15分程度待ってから引き上げる。ただそれだけだ。玉置さん曰く、海に向かって凧揚げをしている感じ。

なんと、第一投目から大量のヒラツメガニが捕れてしまった。

 ヒラツメガニ捕りは春と秋がシーズンで、早朝や夕方の引き潮の時間帯が狙い目だ。しかし、森川さんが前日来たときは一匹も捕れなかったというから油断をしてはならない。
 最初にそんな情報を聞き、不安を覚えていた一行。しかし、フタを開けてみると満員御礼の入れ食い状態だった。手のひらサイズのヒラツメガニが、鍋いっぱいになるのに要したのはたったの1時間程度。網に絡まったカニを外すのだけが面倒だけれど、捕る楽しみを教えてくれるカニ網は、とても魅力的な漁であった。

小 野式製麺機で麺を打つ

 どっさり捕れたヒラツメガニで料理をしようと、今度はいすみ市の海岸沿いで田舎暮らしをしている友人宅へ移動。ヒラツメガニラーメンと、パスタを作ろうというのだ。
 服屋にディスプレイされているヴィンテージミシンのような、威厳のある鋳物の製麺機。男なら、その造形美に惹かれる感覚は分からなくもない。しかし、家庭用と言えど、そこそこ大きな製麺機を16台も所有している玉置さんはある種異常だ。
 「世の中に製麺機ファンってそんなにいないと思うんですけど、自作ラーメンに凝っている人の中には意外と愛好者がいるんです。押し出し式のパスタマシーンでは水分量の少ない、コシのある麺が作れないんですよ」。今回は製麺機界のトヨタ、小野式製麺機で麺を打ってくれた。

製麺機で伸ばされた生地は、最終的に切刃で麺状にカットする。これはラーメン用の細麺。

麺から作る贅沢ランチ

まずは絶品、ヒラツメガニパスタ

細麺・太麺2種類の切刃が付く両刃型は、ラーメンも、パスタも、うどんも、これ一台で作れる。長さは好みでカット。

小ぶりながらしっかりとダシが出るヒラツメガニは甲羅とふんどしを取って、トマトソースの中へ。もちろんカニミソも無駄なく、隠し味として投入する。熱伝導の良い銅製のフライパンでじっくり煮込んでいる間に、友人宅の庭に自生しているセリを摘む。ヒラツメガニによってうま味が増したソースに、自家製フィットチーネが良く絡んだ。

 「僕のうちでは週に一回は製麺機で麺を作って食べてますよ。慣れればご飯を炊くより早いですし、感覚的には炊飯ジャーと同じですね」

 玉置さんを中心に3人の製麺機好きが集まって作った同人誌『趣味の製麺』では、魅力的なヴィジュアルで製麺機を見せながらも、道具とし
ての魅力や楽しさを紹介している。玉置さんに言わせてみれば製麺機は「所詮実用品」でしかないそうだ。

 パスタは卵麺、ラーメンはかんすい麺。それぞれの工程を踏み、製麺機のハンドルを力強く回して麺を作り上げていく。特にかんすい麺は水分量が少なく、綺麗な麺を作るには何度もハンドルを回して、伸ばしていかなければならない。そして、麺が本格的ならばラーメンスープも本
格的だ。ベースはもちろん今朝捕れたヒラツメガニ。そこに野菜や豚肉を入れて弱火で煮込む。プリッとした歯ごたえが印象的だった太めのパ
スタを食した後には、素揚げのヒラツメガニが飾られたラーメンが登場。この一杯に何匹のヒラツメガニが使われているのだろうか。贅沢なスープに打ちたての中細麺が良く絡んだ。

 自分がした珍しい体験を標本の様に記録し、誰かに見てもらおう。『私的標本』で始まった、様々な挑戦。そして辿り着いた『捕って、製麺して、食べる』スタイル。その真髄を堪能した濃厚な一日だった。

シメはあっさりヒラツメガニラーメン

玉置さんが捕って食べる魚介類

1/ウチダザリガニ【エビ目ザリガニ科】アメリカ原産の外来種のザリガニで、北海道や福島に帰化してしまっている。その大きな体のザリガニをスルメで釣りあげて、塩茹でで食べると、高級なエビの味がする。

2/ホシザメ【メジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属】海釣りをしていると一度は釣ってしまうホシザメ。新鮮なものは身も美味しく塩焼きに。フカヒレにする為、ヒレは何か月も乾かす。それ自体に味は無いので、知識で味わう。

3/トビウオ【ダツ目トビウオ科に属する魚類の総称】静岡県伊豆市で開いていた、とびうおすくい体験に参加。漁船が灯すライトに集まるトビウオを2mほどの網ですくう。優雅に泳いでいるように見えるが、なかなかすくえない。

4/マテガイ【マルスダレガイ目マテガイ科マテガイ属】干潟の表面を軽く掘って巣穴を見つけるまではアナジャコ同様。マテガイの穴を見つけたらあとは塩をまいて暫し待機。突然ニュッと穴から飛び出すマテガイを素早くキャッチする。

text:Yutaka Tamaoki / photo:Yoshiro Yamada / Illustration:Saya Kubota

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