2018.05.09

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

MALTA CLASSIC『静と動、最高のコントラストに嘆息』

太陽に祝福された地中海の小国、マルタ。ゆっくりと時がたゆたうこの島で、その静寂を突き破るのはマルタ・クラシック。知られざるクラシックカーの祭典だ。

活気を取り戻す「静寂の街」

 イムディーナはマルタに初めて首都として築かれた古都だ。マルタ島の中心部に位置し、小高い丘になっているため周囲を一望すると遠く海まで臨むことができる。少し離れて街を見ると、城壁がめぐらされ、内側の細い路地がめぐらされた街を強固に守っていることがよくわかる。中世の様子を今にとどめる、時が止まったような街。ここはヴァレッタへ遷都されて以来住民が減り、かつての活気が失われひっそりと静まり返ってしまったことから「静寂の街」と呼ばれるようになった。だがその静けさ――住民以外の車の走行が禁止されているため観光客向けの馬車の足音だけが響き渡る――もまた、見どころのひとつ。のんびりと石畳を踏みしめながらの中世散歩は、マルタに来たら必ず体験したいアクティビティである。
 そんなイムディーナでじっくり過ごすことになるのが、このマルタ・クラシック。開催期間は毎年10月初旬の4日間で、初日はヒル・クライム、2日目に美しい車が並ぶコンクール・デレガンス、そして後半は目玉となるグランプリだ。うち、城壁の中で行われるのはデレガンスのみ。マルタで最初に建設された歴史ある大聖堂、聖パウロ大聖堂の前の広場が会場となっている。あとは城壁外での開催。レースはところどころに観戦ポイントが設けられ、どこでも出入り自由だ。かつてマルタの足として活躍した、カラフルでキュートなマルタ・バスも周遊しており、旧市街と観戦ポイントの間を無料で移動することができる。このバス、それ自体もクラシックカーで現在は運用されていないため、もはや乗ることができるのはこのイベント時のみとなっている。ただ周遊するだけでもぜひ乗ってみたい。開催10回目となる2017年は10月5日から8日の日程だ。

参加者はスポーツカーばかりではない

深いブルーのボディとイエローバルブ、そしてかなり下げられた車高が印象的な、1975年式シトロエン2CVは英国ナンバーを付けていた。必ずしもスポーツカーばかりでないのがこのイベント。

地中海の乾いた大気を震わせる排気音

海岸を見下ろすコーナーで快音を轟かせるフェラーリ250GT SWB。250GTシリーズはサーキットで強かっただけでなく、公道レースでもGTだけに安定していて、数々の戦績を残した。

バンパーレスのヤル気がマルタ風

 マルタ・クラシックは4日間もかけて行われる、マルタ島では最大級のスポーツ・イベントであり、ヒストリック・カー・ミーティングとしても大がかりなものだ。そのコンセプトはシンプルで、マルタ島の歴史建造物や街並をバックに、旧いクルマ、ヴィンテージなスタイルを目いっぱい楽しもう、というものだ。ようは素材がいいから余計な味つけは要らないという話だ。
 初日の木曜日午後は地中海を見下ろしながら丘でヒルクライム。2回の練習走行と2回のタイムトライアルを各エントラントはこなした後、ウェルカム・パーティという流れだ。
 金曜のコンクール・デレガンスはイムディーナにて日中に審査スタート。夕方に審査が決まるまで、ワインやケータリングを楽しみながら、ゆっくりする日だ。
 さらに土曜はクローズドの市街地コースで朝から練習走行と3回ものタイムトライアル。とはいえこれも翌日の序章かもしれない。
 日曜は6つのグループごとに午前中が予選、午後がレースだ。レース勝者には後援スポンサーであるショパールの時計が贈られる。
 ヒストリック・カーを駆る楽しみをシンプルに熱く。いい大人がムキになって遊べる場なのだ。

のんびり、完璧なリゾートライフ

漁村マルサシュロックにはビタミンカラーがさく裂。ショッピングにも、食事だけでもぜひ訪れたい。

 マルタという国は主に3つの島からなる。首都ヴァレッタのあるマルタ島、自然豊かでマルタよりもさらにのんびりムードが漂うゴゾ島とコミノ島。フェリーで気軽に行き来することができ、島をまたいで毎日通勤する人もいるくらい。せっかくマルタまで来たなら、ほかの島々の魅力にもぜひ触れてみたい。
 ここで楽しむべきは、マルタ島ではマルタ騎士団の歴史文化を、そしてどの島でも地中海の雰囲気を存分に味わうべきだ。かわいらしい漁村には必ずといっていいほど地元の人も絶賛する新鮮地中海料理がいただけるレストランがあり、驚くほど豪奢なカソリック建築からは人々がいかに敬虔なクリスチャンであるかがうかがえる。照りつける日差し、おいしい料理、気のいい人々(そしてネコ)――マルタほど完璧なリゾート地はほかにない!と断言できる。

地中海料理といえばさんさんと太陽の光を受けたトマトにオリーブ、それに新鮮獲れたての海鮮!

木造の出窓が特徴的なヴァレッタの街並み。数百年前の建築物が現在も商店や家屋として使われている。

カフェレーサー&ラリーカーは公道が舞台!

初代シビックは何と2台が参加。1200RSは海外でも今もアイドルなのだ。アロイホイールと微妙なネガキャンがじつに似合う'70年代の日本車といえるだろう。

 ヒルクライムにコンクール・デレガンス、タイムトライアルにレースまで、マルタ・クラシックはヒストリック・カーの「四種競技」みたいなところがある。
 よって参加車両のプロファイルも、かなりユニーク。あくまでストリートをベースとしつつ、カフェレ―サー的ななモディファイや外観のクルマが多い。何せ走るステージも多様ながら、イベントとしての会期も長いのだから、メンテもシンプルに済む方がいい。よってピーキーそうな、いかにものレース仕様はあまり見かけない。ほとんどノーマルといえるクルマだっている。
 逆にかなりの度合いでやっているな、というクルマには、安全対策としてのロールケージを入れて、ナンバーを切った競技車両がいる。往時のタルガ・フローリオやツール・ド・コルスのような雰囲気のクルマもいれば、英国の影響が強かったマルタ島だけに英国のサンデー・レーサーがそのまま路上に出てきたようなクルマも多い。バンパーレスは基本で、ターマック・ラリー仕様ともツーリング・カー仕様ともいい切れない感じのこれらのクルマが、地中海の中でも異国情緒のあるマルタ島を背景にすると、なぜかすんなりとハマってしまうのだ。
 それにしても優勝賞品に時計がかかっているところも、いい。往年のツーリスト・トロフィーさながらのナチュラルな盛り上がりは、素晴らしい気候と歴史的な街並だけで成り立つものではなく、出走ドライバーの心を弾ませる何かに預かるところも大きいのだ。

こちらは限りなくオリジナルに近い状態でマルタ・クラシックに出たオースチン・ヒーレー・スプライトMk.Ⅲ。センターロックのワイヤーホイールが美しい。

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