2018.03.18

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ヨーロッパ戦線に異状アリ?「ジュネーブショー解体新書2018」

毎年ヨーロッパで最初に開催されるモーターショーであるジュネーブ・モーターショーは、クルマ業界の動向を占う意味でも重要な存在だ。今年も各メーカーが、野心的なニューモデルやコンセプトカーを披露。本誌が注目したブースを厳選してご紹介しよう。

「スープラが堂々復活!!」

初めからレース仕様を想定して戦闘力の高い市販車を開発

ロングノーズ、ショートデッキの伝統的なスポーツカーのフォルムを再現したFRレイアウト。サイズは全長4,575 ×全幅2,048 ×全高1,230㎜、ホイールベースは2,470㎜、タイヤは前後とも18インチ。

 ジュネーブショーの取材に行ったのは、お目当てが二つあったからだ。一つはレクサスがブランニューの「UX」を発表すること。開発総責任者は加古慈氏。トヨタ初の生え抜き女性役員である。もう一つは、トヨタからの発売が噂されていた「スープラ」だ。開発担当者は多田哲哉氏だ。かつてはトヨタ86の責任者を務めた。そう、ニューモデルにも興味が注がれたが、開発を担当した二人のキャラクターが濃く、開発秘話などを耳にするために、空路12時間もかけてスイスまで飛んだのである。ともあれ、スペースの関係上、ここではスープラに話題を絞ることにする。

 とはいうものの、噂のスープラは姿を現さなかった。正確に言えばそういうことになる。アンベールされたそれは、「GRスープラ・レーシング・コンセプト」だ。量産モデルとしてではなく、レース仕様が先に発表されるという異例のスタイルだったのである。マシンは、ル・マンに出場可能なLMGTE規定だという。すでに走行テストをこなしたであろう痕跡もあった。

 そんな変則的な手法を採用したことを開発責任者の多田氏はこう説明した。

「市販車を完成してからレース仕様を作ったのでは、戦闘力が劣ることがあります。あらかじめ、レースに適した細工をしておくことで、勝てるマシンになれるのです」

 とても納得できる言葉だった。というのも、僕も長いことツーリングカーでのレース生活を続けてきており、そんな障害を目にしてきているからだ。レース仕様に改造した場合には、市販車がこうなっていたらもっと良かっ
たのになぁ、ということが起こる。

 例えば、タイヤサイズは市販車の2インチアップまで……だとか、空力的付加物は車形の範囲内で……といった規則が壁になる。だったらあらかじめ車幅を広げておく、あるいはタイヤ径を拡大させておけば、戦闘力アップが容易になる。そんな、開発段階での問題を、量産車と並行して開発することで解消しようというわけなのだ。

 多田氏は具体的に、フロントフェンダーの空気抜けの処理や、リアフェンダー前のインテークの形状などを指差しながら、量産段階での細工を口にしてくれた。つまり、量産スープラにも、フェンダーの開口部があるということである。
 一方で多田氏はスープラであることの二つの定義を、こう紹介してくれた。

「スープラであるための条件は直列6気筒のエンジンを搭載することと、FRであることです」

 近い将来デビューする、公道走行可能な量産「スープラ」は、直列6気筒エンジンをフロントの長いノーズに搭載し、4WDではなく後輪で駆動する。そしてフェンダーには大きな開口部を備えた攻撃的な姿で誕生することになるのである。

 そしてそれは、レースでの圧倒的な戦闘力を得るために、なんの言い訳もできないということ。つまり、ジュネーブでのプレゼンテーションは、スープラの勝利宣言でもあるのだ。

大きく開口したフロントフェイスにはカナードも備わる。

LM-GTE規定に則ったGRスープラ・レーシング・コンセプト。コクピットも完全にレース仕様で作りこまれており、ダッシュボードには後方確認モニターが見える。

「新型ベルランゴは日本への導入も期待大?」

道具性を意識したデザインが、らしさ!

ウインドーの面積は、ワイド方向に長く広くとられている。例のパノラミック・ルーフも前後方向に長い。

 SUVやクロスオーバー、セダンも含めて、4ドア・クーペ風のデザインがやたらと多かった今回のジュネーブ・モーターショー。そんな中でシュッとしていないカクカクのデザインでありながら、サロンのスターの座を射止めてしまった一台、それがヌーヴォー・ベルランゴだ。

 ジュネーブで発表された今次の新型ベルランゴは、1996年に登場した初代から数えて3世代目。その祖先はヴィザから派生したC15、さらに遡れば2CVから派生したアカディアーヌに辿ることができる。フランス本国でも発売開始と納車は今年9月からで、まだ受注オープンになってメーカーは生産計画を策定中の段階だ。

 なのになぜ、この3代目ベルランゴがティーポの誌面で2ページを割くほどの大スターかといえば、EMP2プラットフォームに基づいていて、ピュアテック130S&S(スタート&ストップ)+ATというパワートレーンが載る予定だから。つまりルノー・カングーの単独天下が10数年以上も続いている日本市場に、ついに導入される可能性が限りなく高いのだ!

 ちなみに予定されるATは、本国ではすでにプジョー308などに採用されているアイシンAW製の8速仕様、EAT8。現行の日本のラインナップに用いられるEAT6より進化したトランスミッションで、市販版には2019年4月以降に搭載される。

 初代から「リュドスパス」、つまり商用車から転じてレジャー用途の広大なスペースを売りにしていたベルランゴだが、最新型は「マルチスパス」を名乗り、デザインの大胆さと座席やスペースのモジュラー性、実用性に磨きをかけている。切れ長のLED顔はC4ピカソに連なるが、エアバンプや蛍光色のアクセントがあしらわれた外観は当然、C4カクタスやC3エアクロスに通じるところがある。

「もちろん新しいベルランゴにも、シトロエンのSUVに共通するデザイン・ランゲージやディテールが使われています。エアバンプは最たるもの。でも異なるのは、正面から見てピラーが立っていて、グリーンハウスを広く四角くとってある点です」

と、スティル・シトロエンのチーフデザイナー、アレクサンドル・マルヴァル氏は語る。

「ベルリーヌ(カクタスのこと)やSUV(C3エアクロス)なら逆に絞り込むところですから。あとはボディサイドのグラフィックに、道具性を込めることを意識した点が、ベルランゴが商用車というユーティリティ・ヴィークルでもある所以です」

 全長約4.4 mの「サイズM」と、4.75mで3列7人乗り仕様の「サイズXL」の2種類のボディがあって、前者の荷室容量は最大775ℓ、後者なら1,050ℓにまで達し、車内には吊り下げシェルフなど計186ℓもの収納スペースも備わる。他にインテリアで際立つのはATのセレクタで、センターコンソール上にダイヤルとして配されている。

 日本での展開は早くても来年後半。とはいえ、今から貯金を始めれば頭金に丁度いい頃合かもしれない。

チーフデザイナーのアレクサンドル・マルヴァル氏。ここ数年、ポップで親しみやすいシトロエン・デザインを創り上げた仕掛け人。

ダッシュボード中央には8インチの大型タッチスクリーンが設けられている。

「508は4ドアクーペに新生!」

有無をいわせないイケメンなオーラが漂う

 合言葉は「ベルリーヌ・ラディカル」。写真で見てその強い目ヂカラに驚いたが、実物を見たらその低く構えた姿勢にさらに驚かされた。フルモデルチェンジして2代目となるプジョー508は、文句ナシにカッコいい。プジョーはベンチマーク、いわばマークすべきライバルはアウディA5スポーツバックだと公言している。ハッチゲートを備えたファストバックでありつつ、サッシュレスドアとした点も、きわめてスタイリッシュだ。

 実際、新しい508の外寸は、よく比較されるVWアルテオンより全長が11㎝ も短く、全高については初代508より8㎝、A4セダンより2.7㎝も低い。むしろ近似値として近いのはA5スポーツバックで、CD値は0.26と完全に横並びだ。

 「世界中でこれぞプジョーと誰もが認識するのが、その独特の足周りがもたらすドライビング・エクスペリエンスです。新しい508のGTやガソリン仕様は標準でアクティブ・サスペンション・コントロールを備え、比類ないスポーティな走りと快適性を両立。そこはプジョーとして絶対に約束として守るところですから」

と、ジャン・フィリップ・アンペラートCEOは力強く述べる。

 パワートレーンは、ガソリンがGTに積まれるピュアテック225、同180の二つの仕様で、いずれも8速ATの組み合わせ。ディーゼルはBlueHDi180を筆頭に3種類、同じくEAT8が組み合わされる。

 日本には早ければ年末から上陸か。

Bピラーが目立たないサッシュレスドアを採用。リアビューも個性的で美しい。リアガーニッシュ一体型の、3連コンビネーションランプも特徴。

「セアトからクプラ・ブランドが独立」

フルEV ツーリングカーレース"E TCR"の専用マシンが登場

 今年のジュネーブショーで、日本のほとんどのメディアからスルーされながらも、実はアツいブースがあった。スペインのメーカー、セアトである。1950年にフィアットの出資で設立され、93年からはVWの子会社に。VWのコンポーネントを用いたローカライズ版といった趣きで、日本へわざわざ正規輸入される道理もなく……。この先もおそらく、ない。

 しかしセアトは近年もツーリングカー選手権に積極参戦する一方、2012年にMQBプラットフォームを採用し発売されたゴルフ7の兄弟車、3代目レオンのホットバージョン・クプラ280が、14年にわずかな期間ながら、ニュル北のFF最速の座に輝いたりと、スポーティでイケイケなラテンノリが魅力のメーカーなのだ。

 そして今年のジュネーブショーにおいて、セアトは新たなハイパフォーマンスブランドとして「クプラ」を立ち上げると発表!ボルボが「ポールスター」を独立させたのと同様の構図だが、鼻息の荒さはそれを上回る。

 事前に予告されていたTCRマシン「クプラ・レオンTCR」は、早速地元のカンポス・レーシングが採用してWTCRに参戦すると発表。さらなるサプライズとして、レース用フル電動ツーリングカーとして世界初となる「クプラeレーサー」が公開された。これは、同じく今回のジュネーブで発表されたTCRのEV版「E TCR」の構想に合わせた第一弾マシンであり、最高出力670PSを誇る。今後の続報にぜひご期待いただきたい。

市販のホットハッチはまだ「セアト・レオン・クプラR/R ST」だったりし、今後ブランドの整理が進むと思われる。

「他にも注目のクルマがいっぱい!」

カーボンハードトップを装着した追加モデル「ABARTH 124 GT」

 ブランニューモデルが全くなかった今回のフィアット、アルファ・ロメオ、アバルトだが、それぞれ気になる追加モデルや特別仕様を発表してきた。アバルトはフィアット500にも以前登場したプレジャーボートブランド、リーヴァとのコラボモデル、695リヴァーレ(ちなみに日本導入の可能性あり)とこの124GT。

 ラリー参戦中のマシン、124ラリーのイメージを彷彿させる、脱着可能なカーボン製ハードトップを装着したモデルだ。他にもブラックのOZ 製17インチホイール、カーボンミラーなどが特徴となっている。

90kg軽量&50PSプラスとなる最強の488「FERRARI 488 PISTA」

 360モデナ→チャレンジストラダーレに始まる、フェラーリV8ベルリネッタの高性能& 最終形、その488版が登場。ピスタとはサーキットを意味するイタリア語だ。488GTBから90kg 軽量化&50PS アップのV8ツインターボはもちろんのこと、ポイントは20%向上したという空力。

 例えばフロントフードを絞り込んで、フロントバンパーから空気を通過させるSダクトや、形状も変更されたサイドインテークからの吸気温度を約15度低下させるなど、作り込みはレーシングカーさながら。オープン版も遠くない将来追加か。

25台限定で生産されるニューストラトス「NEW STRATOS」

 2010年にフェラーリ430スクーデリアをベースにピニンファリーナが製作したワンオフモデル、ニューストラトスが25台限定で生産されるということで、マニファチューラ・アウトモビリ・トリノ(MAT)のブースにオリジナルのランチア・ストラトスと共に展示された。

 MATは当時ピニンに在籍していたパオロ・ガレッラが2014年に立ち上げたカロッツェリアで、ニュル24時間にも出たジェームズ・グリッケンハウスのSCGを作ったりしている。なお展示車は2010年に作られたワンオフモデルそのものだった。

セナの名を掲げたマクラーレン最速カー「McLAREN SENNA GTR」

 アイルトン・セナの名を掲げたマクラーレンのハイパーカーがセナ。500台限定で、しかもデビュー前に完売したという。そしてジュネーブではそのサーキット専用モデル、セナGTR が75台限定で登場した。

 4リッターV8ツインターボは"少なくとも"825PSを発揮。乾燥重量1198㎏、ダウンフォース最大1000㎏と壮絶なスペックが並ぶ。フォーミュラのF1を除くマクラーレン史上最速のラップタイムを記録。生産は2019年となる。決して流麗ではないが、そのインパクトは絶大だった。

ヴァルキリーのサーキット専用モデル「ASTON MARTIN VALKYRIE AMR PRO」

 レッドブル・レーシングとの共同開発が話題となるアストンマーティンのハイパーカー、ヴァルキリー。そのサーキット専用モデル、ヴァルキリーAMR プロが登場。発表にはレッドブルのクリスチャン・ホーナーとエイドリアン・ニューウェイが登場しアピールした。パワートレーンは6.5リッターV12NA +モーターのハイブリッドで、最高出力は1,100PS以上。車重は1000kg で、ダウンフォースはそれを上まわるという。生産は25台、2020年に納車開始予定だが、既に完売とのこと。

ラゴンダがゼロエミッションブランドで復活「LAGONDA VISION CONCEPT」

 アストンマーティン・ブースでサプライズ。ラゴンダが、ゼロエミッションパワートレーンを搭載するラグジュアリーブランドとして復活すると発表されたのだ。これは2021年に発売開始される最初の1台を予告するコンセプトモデルで、2023年までにもう1台発売するという。会場にはこの4ドア以外に40%スケールながら、クーペとSUVも展示。1回の充電で最大400マイル走行し、レベル4までの自動運転に対応。アレック・ライヒマンによるEVならではの大胆なデザインも興味深い。

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