2018.06.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

世界随一のヴィンテージラジオ・コレクション「NIPPER」

"ニッパー"という名の犬を知っているだろうか?

かつてミラノには数多くの運河があり、水の都と称されるほどだった。ニッパーは、現在ミラノで唯一残されたナヴィリオの運河沿いにあり、周りにはセレクトショップも点在している。

おおまかにジャンル分けされてはいるが、電話の隣にステアリングがあり、その隣に飛行機のプロペラがあり……と、ごった煮状態。目が慣れるまで時間はかかるが、見ていて飽きないのも確か。

亡くなった主人の声が蓄音機から聞こえた

1938年製、真空管アンプのラジオ。かなり大型で、まだ家庭にテレビなどなくラジオが家電の代表格だった時代のもの。ちなみにニッパーで販売されるものは、基本的に完動品。

 あなたはニッパーという犬をご存じだろうか?もしその名に聞き覚えがなかったとしても、ビクターのCMに出ていた犬のことだといえば、一定の年齢以上の方はピンとくることだろう。

 19世紀末、イギリスで画家に飼われていたニッパー。喧嘩っ早くよく噛むことから、工具にちなんで名づけられ愛されたが、飼い主の画家はニッパーより先に病死。同じく画家である弟がニッパーを引き取った。

 そんなある日、元の飼い主の声が蓄音機から流れると、ニッパーは蓄音機に耳を傾け、その場所から離れなかった。弟はその様子を描き「His Master's Voice」と呼ばれる絵が誕生した──。そんな逸話が遺されている。ニッパー関連のグッズは多数販売され、世界中にコレクターが存在する。

スポーツ観戦などで使うポータブル扇風機。もちろん電池ではなく、ゼンマイで動く。写真では見にくいが、子供2人が息を吹きかけて風を起こす絵が刻まれている。1901年製。

お店の外からよく見える一等地に置かれた、等身大以上の大きさのニッパー。3次元に起こされた置物は、絵のニッパーよりもひょうきんな顔をしていることが多いのはナゼ?

蓄音機の味わい深さに耳を傾けてみる

SPレコード(Standard Playing/蓄音機用レコード)の時代、鉄製の針は一度聞くごとに交換していた。そのため、このような様々なデザインの針ケースが生まれた。手前のA.H.MAYERSのイラストが、"His Master's Voice"。

見るだけじゃなく耳でも楽しめるのが魅力

レジの前には蓄音機とラジオ、His Master's Voice関連のグッズが並ぶ。アルフォンソさんが常に眺めていたいと思う、もっとも好きなジャンルである。

「これいくらですか?」と聞いてもくれないんだ

フランス・パリのDACTYLE社が19世紀末〜20世紀初頭にかけて製造したタイプライター。ニッパーで取り扱う商品としては珍しく欠品があり「値段は格安」。

 ニッパー好きが高じてその名をお店に付けてしまったアルフォンソ・ミニョーリさん。店内には大小やジャンルの区別なく、本当にさまざまなガラクタ……ではなく、逸品が取り揃えられている。

 「ヴィンテージグッズにも流行があります。次に何が人気が出るのかを予想しながら商品を取り揃えるのですが、これがなかなか上手くいかない。昨年のクリスマス商戦では古いタイプライターが流行ると思い買い漁ってきたのですが、見事に外れまして。ご覧のとおり、こんなにたくさん売れ残っていますよ。それから僕は個人的に、大きなモノが大好きなんです。ここにある高さ3mのオスカー像は、家族旅行で出かけたオランダで買って、クルマのルーフに載せて持って帰ってきました。でもね、これが売れないんですよ。『いくらですか?』と聞いてくるお客さんすらいないんだから……」

ディズニーのアニメに出てきそうなファンシーな電話だが、もちろんちゃんと使える。すべての商品は販売だけでなくレンタルも行っているという。

どこかのお店が掲げていたであろう、時計付きの電光機能付き看板。こういった大型の商品は、イベント用にレンタルされることが多いのだという。

最高で100以上のラジオを所有していた

 アルフォンソさんが最も好きなヴィンテージグッズは、ラジオだ。

 「父はゲーテに関するグッズのコレクターでした。それで僕も幼い頃からヴィンテージグッズに興味はあったんですが、僕が20歳の時、父が古いラジオをプレゼントしてくれたんです。1935年の、Saviliano Model.5というモデルでした。それから一気にラジオが好きになってしまいまして。あまりに熱中しすぎて、大学を辞めてしまったくらいです」

 アルフォンソさんにとって、ラジオの魅力とは何なのだろう?

 「まず機械であること。僕はメカが好きなんです。そしてさらに、様々なデザインがあること。例えばテレビだと画面が四角いのでデザインに制約がありますが、ラジオにはそれがありませんから。僕が今ハマっているのは鏡と一体型のラジオなんですが、液晶以前のテレビでは実現できませんからね。若いころはメカが複雑で、歴史的にも意義深いモデルが好きでした。特に、ベークライトの初期の頃の、濃い色のプラスチックのラジオを集めていました。」

「20歳の頃からどんどんコレクションを増やしていきましたが、すぐにお金が足りなくなったので、ラジオ以外のヴィンテージグッズを売買して、その利益をラジオにつぎ込みました。その結果として、1999年にお店をオープンしたのです。ラジオは一番多いときは1,000個くらい持っていたけれど、維持しきれないのでだいぶ手放しましたよ」

1927年、アメリカのカタリン社はベークライトをベースに鮮やかな発色を可能とした技術を開発した。こちらはAddison社のA5というモデルで、1940年頃製造。

アールデコの流れを汲んだデザイン

1940年代、FADA製のラジオ。マーブル模様が入った青の発色の良さは、とても70年前のプラスチックとは思えないほど素晴らしい。このラジオは、このカラーが一番人気だとか。

1930年代後半、EMERSON社のラジオ。一見何の変哲もない箱だが、微妙につけられた曲線が可愛らしさを演出している。周波数の目盛りに至るまでしっかりとデザインされている。

 「ここ数年は、同じベークライトでも、カラフルなカタリンのラジオが好きですね。それまでのベークライトは高い温度で焼き付けしているので色が濃いのですが、カタリンは低い温度で作るので鮮やかな色ができるんです」

 新品の時は決して高いラジオではなく、寝室などに使う2台目として買われることが多かったが、現在は1,800ユーロから5,000ユーロ(1ユーロ=140円として約25〜70万円)ほどで売買されるという。

 「商品の正しい情報を得ることはとても大切です。そのためにはインターネットで売買するのではなく、コレクターと実際に会って売り買いして信用を得ること。そして当時の資料を手に入れることも重要です。最近の資料だと、正しい情報が載っているのか判断が付かないこともありますからね」

 アルフォンソさんは、特にヴィンテージ・ラジオの世界では第一人者。2006年には雑誌社から要請を受け、ヴィンテージラジオのミニチュア・コレクションの監修を引き受けたほどだ。

アルフォンソさんが最も大切にしているというニッパーの首振り人形。首がカタカタと動く様が微笑ましい。残念ながら非売品で、アルフォンソさんの自宅に置かれている。

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