2018.06.04

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

全員が時計好き。家族経営の隠れた銘店「LE MUSE」

親子4人のヴィンテージウォッチ好き

 我々編集部は、ミッレ・ミリアに合わせ、5月にイタリアで一週間ほど取材を行った。最終日前日の夜、コーディネーターの野口祐子さんから「家の近くに、面白そうな時計屋さんがあるのよ。明日の朝、空港に行く前に寄ってみる?」と言われて軽い感じで訪れたのが、こちらにご紹介するLE MUSEである。

 失礼ながらさほど期待もせず「何かのネタになれば……」という程度でドアを叩いてみたのだが、実に面白い銘店であった。このようなショップがゴロゴロしているのだからイタリア恐るべし、である。ちなみにこの日、我々は午後2時の飛行機で帰国せねばならず、LE MUSEに滞在できたのは僅か1時間足らず。サラッとしか拝見することができなかったので、機会があれば是非再訪したい。

長男のFranescoさん。生まれ年である1986年製のペプシカラーのロレックスGMTマスターを身に着けていた。「兄弟の中で、僕が一番の時計好きですね」

腕時計よりも、置時計や掛け時計の方が店内に占めるスペースは大きい。300年前のものであってもレストアやオーバーホールを行うことができるという。

最も得意とするのは、1950〜70年代のロレックスだという。左は1946年製のバブルバックで、右は1957年製デイトジャスト。価格は共に7500ユーロとなる。

はじまりはアンティーク置時計から

 1987年に創業したLE MUSE。当時はイタリアでヴィンテージ・ウォッチの価値が認められ始めた頃で、数年後にはレストアやオーバーホールを行う工房も併設した。趣のあるビルの1Fにお店を構えており、人の背丈ほどの高さがある掛け時計から腕時計まで、実に大小様々な品揃えが自慢だ。

 「このお店を始めたのは私ですが、元々は父がアンティーク好きで、様々なジャンルのモノを集めていたのです。中でも多かったのが置時計でした。その影響で私も時計が好きになっていったのです」と、Prina Valentinoさん。

3人の息子はネットと修理を担当

三男のMartinoさんは主に置時計や掛け時計の修理を、次男のMicheleさんは主に腕時計の修理を担当している。若いが腕は確かなようだ。

 LE MUSEでは1700年(!)頃から現代までの置時計、掛け時計、腕時計、懐中時計まで、時計と名の付くものは何でも扱っている。時計のすべての歴史を網羅しているといっても過言ではないのだ。得意とするのは1950〜70年代のロレックスで、イタリア国内のみならず、オーストリア、イギリス、アメリカ、中国、日本など、様々な国から引き合いがあるという。「ついこの前も、日本で時計屋を営んでいるという人が買付けに来ましたよ」とValentinoさん。

 まだまだ現役世代のValentinoさんだが、ここ数年で息子さんがスタッフとして加わっている。長男のFranescoさんは主にインターネットでの販売を担当。次男のMicheleさんと三男Martinoさんは共にレストアやオーバーホールを担当している。文字通りの家族経営だが、全員が時計好きというから素晴らしい。

ディスプレイとして置かれているのかと思いきや、Prinaさんのご友人が所有するビアンキだった。「家に場所がないから、ここに置かせてもらってるんだよ」とのこと。

日本をはじめ、世界中から引き合いがある

1940年代に作られたオメガ・クロノグラフ。タキ・テレ機能を持ち、ムーブメントはCal.33.3を搭載。非常にコンディションのいいレアモデルだが、残念ながら売約済み。

1970年代特有の、当時抱いていた未来感が漂うポップなデザインの置時計たち。腕時計でも有名なJUNGHANS製などがあり、価格はおおむね200〜400ユーロといったところ。

手持ち用のノブが付いたカルティエのデスククロック。ケースは金箔とエナメル製で、美しいアラビア文字が印象的。機械式ではなくクォーツとなっている。

龍の刻印が入った60年代のロレックス

 そんな話を聞いている最中、センスのいいビアンキの自転車に乗った男性がやってきた。よく慣れた感じでValentinoさんと談笑する、この方は……? と聞いてみると、常連でValentinoさんの友人のパオロさん。もちろん腕時計も趣味のひとつだという。

 「突然何かが好きになっちゃうことってあるんですよね。それから趣味が始まってしまうのだから困ったものです。私の場合は、1960年代のヴァシュロン・コンスタンタン、エクストラシンから腕時計趣味が始まってしまいました。今着けているのは、60年代のロレックスですが、龍が刻印してあります。ただ誰が作ったかはわかりません。私は7つ見つけて、そのうち3つは息子にプレゼントしました」

 時計が紡ぐ親子の絆を確認できた、素敵な出会いであった。

気張っているわけじゃないのに、服も靴も自転車も全てが決まっているパオロさん。「私の家にはカメラも時計も、ヴィンテージなものがいっぱいあるんですよ。今度遊びに来てください」と誘ってくれた。次回イタリア取材の際には是非!

工房のスペースは決して広くはなく、所狭しと機器が並んでいる。ここの主が20代の若者2人なのだから驚かされる。LE MUSEの未来は今後50年は安泰だろう。

1930~40年頃のものとおぼしき、イタリア国内で発行されたロレックスの広告記事の切り抜き。よーく見ると、直営店リストの中に「Osaka」の文字が。

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