2018.06.20

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

旧車好きないつかは訪れたい! 「GOOD WOOD REVIVAL MEETIN...

恒例のグッドウッド・リバイバル・ミーティングは、 史上初めてデイトナ・コブラを6台集結させるなど、今年も彼の地の目利きをも唸らせる話題に溢れていた。

猛毒を持つ6匹のコブラが凱旋

 今年のグッドウッド・リバイバルのハイライトは、なんといっても史上初めて6台のシェルビー・デイトナ・クーペが顔を揃えたことだった。多くのエンスージァストが待ち望んだ念願の "リユニオン"だけに、シーブリングのピットを模したガレージに揃う姿は壮観そのもの。その中には、8月のペブルビーチ・コンクール・デレガンスでクラス優勝に輝いたばかりの日本の丸山和夫氏の所有するCSX2602(No.16)の姿もあった。
 
 1964年、デイトナ・コブラは打倒フェラーリ250 GTOを目指し、ACコブラに鬼才ピート・ブロックのデザインによる流麗で空力的なボディを纏ったスペシャルとしてシェルビー・アメリカンによって開発された。その目論見はまんまと当たり、64年のル・マンではCSX2299が総合4位に入る健闘をみせクラス優勝。65年には様々なレースのGTクラスを席巻し、見事年間タイトルを獲得することに成功している。

1964年のル・マンで総合4位に入り、クラス優勝を果たしたCSX2299。6台ともフォルムやディテールが微妙に異なるのに注目。

 しかしミッドシップの嵐が吹き荒れ始めていた当時のレース界に大排気量フロント・エンジンGTの活躍の場がなくなりつつあったのもまた事実。フォードが1966年からGT40のレース活動に注力することを決定したこともあり、6台が一堂に会してレースをする機会(1号車であるCSX2287以外の製作が、イタリアのカロッツェリア・グランスポルトに委託された影響も大きい)は、永遠に失われてしまったのである……。

「6台が揃うなんて、おそらくこれが最初で最後でしょう。オーナー冥利に尽きますよ。本当に最高だよね」

 そう語る丸山氏の言葉が、この奇跡のリユニオンのすべてを象徴していたと思う。

ニコラス・ミナシアンのドライブで参加したCSX2601。65年シーズンにモンツァやニュルなどで5度のクラス優勝を飾った個体だ。

CSX2287のコックピット。約半世紀にわたる行方不明の間、ほぼ手付かずだったこともあり、当時の姿のまま残されている。

RAC TT Celebration & Sussex Trophy

50sスポーツレーサーのサセックス・トロフィーと60sGTによるRAC TTセレブレーションは、旧き佳き時代のスポーツカーレースの象徴だ。

ロングノーズ&ショートデッキの魅惑

 1950年代後半にクーパーがミドシップ革命を起すまでレーシングカーの主流はFR、しかもフロントにパワフルなエンジンを搭載したロングノーズ&ショートデッキのプロポーションがもてはやされていた。

 サセックス・トロフィーとRAC TTセレブレーションに出場しているレーシングマシンたちは、まさにそんな時代の申し子というべき存在だ。ドライバーがステアリングにしがみつき、パワーに任せてテールを振り回しながら走る姿は、優雅で美しいボディスタイルとは対照的だ。そんなサラブレッドたちが放つエキゾーストノートに包まれながらコースサイドで見ていると、モーターレーシングがロマンチックだった時代にタイムスリップした気分になる。

Aston Martin DP214/DB4 GTザガートをベースに更にコンペティションなモディファイを加えたマシンが、1963年式DP214プロトタイプである。このDP214はわずか2台しか生産されなかったモデルであり、現存するのはここにある1台のみの超が付く稀少車だ。エンジンチューニングはわずかだったが、ボディは空力の事を考え、より流線型になり車重は1トンを切る962kgを達成していた。

Aston Martin DB4 GT Zagato/アストン・マーチンの中で、最も美しいモデルとして挙げられるのがこのDB4 GT ザガートである。イタリアはミラノにあるカロッツェリア「ザガート」に在籍していたエルコーレ・スパーダの手によりデザイン・形成され、1960年から1963年までで僅か19台が生産された。車重はDB4よりもさらに軽量化し、1,159kg。それにツインプラグ&3基のウェーバーキャブで武装した、314馬力を誇る水冷直列6気筒エンジンを組み合わせる。

かつての名物レースをモチーフに

 今でこそF1がモーターレーシングの頂点に君臨しているが、かつてスポーツカーレースの方が、質、人気、内容ともに充実していた時代があった。グッドウッド・リバイバルで繰り広げられる"サセックス・トロフィー"と"RAC TTセレブレーション"は、そんなスポーツカー黄金期のエッセンスを凝縮したカテゴリーということができる。
 
 というのも、サセックス・トロフィーは50年代に興隆を極めた9時間レースを、そしてRAC TTは1958年から64年にかけて開催された英国スポーツカーレースの最高峰、RACトゥーリスト・トロフィーをモチーフとしているからだ。
 
 また両レースとも1時間のセミ耐久形式を採用し、途中で一度のピットインが義務づけられているのも特徴。コースだけでなく、ピットで起きる様々なドラマもレースを盛りあげる大事な要素だ。

伝説の王者、グッドウッドに還る「Tribute to Sir Jackie Stewart」

今年のリバイバルがフィーチャーしたのは、サー・ジャッキー・スチュワート。
1969年、71年、73年と3度のF1ワールドチャンピオンに輝いたレジェンドである。

 いまから50年前のこと。無名のスコットランド人レーサーがグッドウッド・サーキットのマネージャー、ロビン・マッキーの推薦によりティレル・フォーミュラ・ジュニア・チームのクーパーT72BMC F3のテストをする機会を与えられた。
 
 彼は初めて乗ったF3マシンにも関わらず、チームのエースだったブルース・マクラーレンを上回るタイムを連発。慌てた名将ケン・ティレルは、すぐに自身のチームとの契約を申し出たという。
 
 この脅威の新人の名はジャッキー・スチュワート。その後ティレルとともに69年、71年、73年と3度のF1ワールドチャンピオンに輝いた経歴をもつ偉大なレジェンドである。
 
 今回のプログラムには、キャリアの初期にドライブしたマーコスGT ザイロンから、栄光のティレル006まで、彼が様々なカテゴリーでドライブした歴代マシンが一堂に勢揃いした。その1台、1台を見わたすと、彼は満足そうな表情を浮かべて自身の原点であるクーパーT72BMC F3のコクピットにおさまり、颯爽とコースへと駆け出していった。
 
 それはまた、ジャッキーのトレードマークであるタータンチェック柄のヘルメットが、ひと際カッコ良く見えた瞬間でもあった。

全てはこの場所からはじまった

ティレルの黄金期を彩った006

1973 Tyrrell 006/1973年にE.フィッティパルディ、R.ピーターソンのロータス72Eとタイトル争いを繰り広げたティレル006。当時製作された3台のうち現存する2台が揃って登場。そのうちの1台をドライブしたのはジャッキーの次男であるマーク・スチュワート。

 ジャッキーが駆ったマシンの中でベストはどれか? というのは、なかなか難しい質問だ。しかしその中のひとつとして、1973年に僚友フランソワ・セヴェールとともにシーズンを席巻したティレル006を挙げることに、異論はないだろう。
 
 奇才デレック・ガードナーが設計したコンパクトでグラマラスな006は、3回のポールポジションと5回の勝利を獲得。同年の最終戦でセヴェールの悲劇的な事故があったものの、70年代前半のベストマシンのひとつという評価はゆるぎない。

背の高いインダクションポッド、幅広のスポーツカーノーズなど、70年代前半のフォーミュラマシンのトレンドを築いた006。スマートなロータスとは対照的なスタイル。

Tribute to Sir Jackie Stewart

1965 Rover-BRM’65/長らくガスタービン・エンジンを研究してきたローバーがBRMと手を組み製作したル・マン・カー。この65年モデルはグラハム・ヒルとのコンビで出場し10位完走を果たしている。4年越しのレストアを経て、今回初めて走る姿を披露した。

1964 LOTUS 26R Ian Walker Coupe/ゴールドに塗られた珍しいエランは、ル・マン参戦を目標としてイアン・ウォーカー・レーシングが製作したスペシャルボディの26Rクーペ。1964年のパリ・モンレリーでジャッキーが総合4位、クラス優勝を果たした。

50周年を記念したワンメイク・レース「ST MARY’S TROPHY」

 毎年恒例グッドウッド・リバイバル・ミーティングの目玉と言えば、オーナードライバーとプロがタッグを組んで行われるツーリングカー・レース「セント・メアリーズ・トロフィー」。
 
 今回は1956年に誕生した小さな大衆車、オースティンA35の生誕50周年を祝うワンメイクが行われた。

プロ・ドライバーによる寸止めバトル

雨の中行われたレース1で優勝したのは、BTCCチャンピオンのアンドリュー・ジョーダン。最終ラップまで続いたゴードン・シェデンとのバトルは見事なものだった。

 グッドウッド・リバイバルの花形レースのひとつとして人気を博している「セント・メアリーズ・トロフィー」。
 
 これまでは1年毎に対象となる年式を変えて行われてきたが、今回はイギリスを代表する大衆車、オースティンA35の生誕50周年を記念して特別にA35(とその前身であるA30)のワンメイク・レースとして開催されることとなった。
 
 セント・メアリーズ・トロフィーがワンメイク形式で開催されるのは、2009年のミニ誕生50周年以来のこととなるが、なんと総勢30台のA30/35が集合。土曜のレース1にエントリーしたプロ・ドライバーもアンドリュー・ジョーダン、マット・ニール、ゴードン・シェデンなどBTCCのヒーローを筆頭に、デイヴィッド・クルサード、マーク・ブランデルなどの元F1レーサー、さらに喜劇俳優のローワン・アトキンソンや自転車競技の金メダリスト、サー・クリス・ホイといった豪華な顔ぶれが勢揃いした。

その名もセント・メアリーズ・コーナーから、ウッドコート・コーナーへと向かう一群。ほのぼのとした光景に見えるが、一歩間違うと横転の危険もある難所である。

ドライバーの中にはMr.ビーンの姿も

1959 AUSTIN A35/1951年に発表された小型車、オースティンA30の発展型として1956年に登場したA35。塗装されたフロントグリル、大型化したリアウインドーなど外観の違いは僅かだが、28psを発揮する804ccの4気筒OHVエンジンが948ccにボアアウトされ34psにパワーアップしたのが最大の特徴。

 参加するA30/A35は、HRDC(ヒストリック・レーシング・ドライバーズ・クラブ)がコストを抑えたエントリー・カテゴリーとして用意している“アカデミー・クラス”で使用されているのと同じもの。基本的なレギュレーションはHRDCの規定に基づくが、イコールコンディションに保つため、エンジンはClassic & Modern Engine Service社の手で1293ccにボアアウトするなどのチューンが施されたBMC Aタイプ・ユニットが、封印された状態で供給されている。
 
 それでも、マシンによって速い、遅いがあるのは、ステアリングを握るドライバーの腕はもとより各チームのもつセッティング・データなどノウハウの差によるところが大きいのだろう。実際、F1で13勝を誇る実力の持ち主であるクルサードは、思い通りに動かないA35にかなり手を焼いている様子だった。
 
 ちなみに雨の土曜に行われたレース1でポールtoウィンを飾ったのは2013年のBTCCチャンピオン、アンドリュー・ジョーダン。2012年、15年、16年のBTCCチャンピオンであるゴードン・シェデンと最終ラップまで続いたテールtoノーズのバトルは見応えがあったが、トップ争い以外でも各所でダンゴ状態のバトルが繰り広げられていたのは、やはりワンメイク・レースならではの醍醐味といえるだろう。
 
 その想いは、グッドウッドに詰めかけた観客も同じようで、土曜のレース1、日曜のレース2ともに大盛況。それに合わせて市場におけるオースティンA30/35の人気も急上昇しているという。

No.24のA35をドライブするのは、Mr.ビーンでお馴染みの俳優、ローワン・アトキンソン。無論、レースでは真剣そのもの。

そのクオリティはBTCCマシン並み

 レーシング・モディファイの内容を含め一見同じに見えるA30/A35だが、実際には各チームで最初にベース車のボディをバラバラに分解。フロアだけを治具に載せ、正確にアライメントを出した上でロールケージを組み込んだあとに、改めてボディパネルを溶接し直すという、BTCCマシンと同じ手法でシャシーが仕立て直されているという。

 そう、例えヒストリックといえども、レースは本気で楽しむものなのだ!

No.77を押してアッセンブリーエリアに入るのは、アンドリューの父でレーシング・ガレージを経営するマイク・ジョーダン。レース2に出場し、見事3位入賞を果たした。

彼の地のメカは、芝生の上に作られた簡素なパドックで、エンジンやギアボックスの交換も平気でやってしまう。 FRPで作られたボンネットの薄さに注目していただきたい!

今回の大成功でA35人気が急上昇!

予選の風景。シケインを攻めるのは、BMWワークスのエースとしてBTCCなどで活躍した"ハコ遣い"スティーブ・ソパー。予選、決勝ともに3位に食い込んだ。

1日のプログラムが終わり、観客が帰った頃になると各所でエンジン交換が始まるなど、セント・メアリーズのパドックは活気に溢れる。朝までが勝負だ。

さすがに30台のレーシングA30/35の並ぶ姿は圧巻。今回のレースの成功で彼の地ではA35ブームが巻き起こっているという。

往年の大衆車がこんなにカッコイイとは!

これぞテールtoノーズという緊迫した駆け引きを見守る鈴なりの観客に注目。さすがヒストリックカーレースの本場。この週末に集まった観客はなんと10万人以上にのぼるという。

日曜の第2レース。ドライバーがプロからアマチュアに変わっても、アングリアとミニのバトルの白熱ぶりは変わらない。シケインはドライバーの腕が問われるポイントのひとつ。

バラエティに富んだ車種も魅力のひとつ

Stメアリーズのオープニングラップは見物だ。往年のワークスカーを模したケリー・ミッシェルのクルマは、コーティナ勢の中でもトップクラスの実力の持ち主。ミニを従え、先を目指す。

1966年のBRSCCタイトルを獲得するなど、可愛らしい姿からは想像できないポテンシャルを
誇るアングリア。ドライバーは2006年英国F3チャンピオンのマイク・コンウェイ。

photo:The Good Wood Estate Company Limited. / Kozo Fujiwara / Flank Kletschkus / Yoshio Fujiwara
text:Yoshio Fujiwara

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