2018.07.03

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

それはロイヤルな週末!「Concours of Elegance Windsor...

近年の欧州では本気のコンクール・デレガンスが復活傾向。英国ではロイヤル・ファミリーの後援で、毎年9月に宮廷で行われる特別なコンクールがある。

女王のお膝元へ登城するクルマたち

城の南側、ロング・ウォークと呼ばれる約4kmもの直線を上って、コンクール車両が続々と登城。手前は1953年式フィアット8Vラピ・ベルリネッタ。2Lの挟角70度V8を積む。ファビオ・ラピが手がけた社内デザインだ。

 これまでコンクール・デレガンスといえば世界的にはアメリカのペブルビーチ、イタリアのヴィラ・デステがもっとも知られていた。だが2014年から始まったフランスのシャンティイに先立つこと2年、2012年から欧州でのコンクール・デレガンスの復権を象徴するイベントとして、英国では「コンクールズ・オブ・エレガンス」が開催されている。競い合うコンクールそのものは複数だが、エレガンスそのものは単数であることに注意されたし。

 9月1週目の週末3日間かけて行われれるこのイベントの際立っているところは、ロイヤル・ファミリーの後援を得て、ロンドンやその近郊にある本物の王宮や城を舞台に行われることだ。具体的には、故ウィンザー公の甥でエリザべス2世の従弟の関係であるマイケル・オブ・ケント王子が名誉顧問として名を連ねているのだ。第1回はヘンリー8世が建設したハンプトン・コート・パレスにて、そして直近の第4回はウィンザー城にて開催された。

 それでもまだピンと来ないようであれば、日本でいえば葉山や那須の御用邸の庭でクラシックカー・イベントが開かれ、一般の観衆も数多く詰めかけているような状況を想像してみてほしい。それほどまでに英国の芳しい伝統と格調高さが漂う、しかし公に広く開かれたイベントなのだ。

 女王が公務を執り行うための居城がバッキンガム宮殿であるのに対し、ウィンザー城は週末を過ごすための離れという位置づけだが、格の高さに差はないと考えていい。

顔パスで気分はまるで007、かも

ロング・ウォークの長い登り坂で、来訪者たちをジャガー・ランドローバーやフェラーリなど自動車メーカーのブースやヒストリック・カーが迎える。相当にレアなクルマばかりだが、まだコンクール会場ではないのだ……。

ウィンザー城は女王陛下のお膝元だけあって、入口となったケンブリッジ・ゲートの警備は厳重。それでも元ワークスカーの1954年式ジャガーDタイプと、1963年式Eタイプ・ライトウェイトの編隊は、顔パス状態で通過。

3台が製作され2台現存するといわれる1952年式ジャガーXK120ギア・スーパーソニック。ノーマルの1920年代のアールデコ風デザインに対し、'50年代の最先端モードだったストリームラインのクーペ・ボディが美しい。

絨毯のように柔らかな中庭の芝生の上で

 かくして城の中庭に、自らのクルマを駆って辿り着いたオーナーたちの心中というか高揚ぶりは、察して余りあるだろう。

 実際、普段から厳重な警戒がしかれたロング・ウォークの門を、コンクール車両たちは顔パスで通過していくのだが、その際にステアリングを握るオーナーたちの頬が上ずるように緩む。自慢のヒストリック・カーで女王陛下の元に馳せ参じる、気分はもう007といって差し支えないだろう。

 しかも中庭にクルマを停め、足を下ろした瞬間、おそろしく柔らかくクッションの効いた、手入れのいい芝生がオーナーの足元を迎えてくれる。周りを見渡せば、ロンドンで観光客から写真に撮られているような、本物の衛兵が身じろぎもせず仕事を、つまり立番をしている。

 ちなみにコンクールのエントリーナンバー最初の数台はロイヤル・コレクションから、女王が普段使っているベントレーや戦前の御用車にあてられていた。

1964 Ferrari 500 SUPERFAST/36台のみ製作された500スーパーファストは、5LのV12を積むFRという点では兄弟車といえる275GTBの倍ほど高いプライスを提げた、まさしくスーパーなフェラーリだった。ピーター・セラーズのような往年の名優や中東の王族に好まれた優雅な4座クーペだ。

1960 ASTON MARTIN DB4 GT/正装の士官すら見入っているのは、ノーマルより5インチもショートホイールベース化され、カロッツェリア・トゥーリングが仕上げたアルミボディで85kgも軽量化、しかもツイン・ウェーバー3連装とツインスパーク化で302hpを発揮した、特別なアストンだ。

真性ブリティッシュな時間が流れる

1960 Ferrari 250 GT SWB Berlinetta Competizione/スターリング・モスとマイク・パークスが英国内のレースで乗った2119GTと呼ばれる個体で、著名なF1エンジニアのロス・ブラウンが現在所有している。

1961 Ferrari 250 GT SWB/当時のフェラーリには珍しい、右ハンドル仕様の250GTカリフォルニア。何と最初のオーナーはイタリア人で、レーシングカーは右ハンドルであるべしと思い込んでいたとか。

1964 Porsche 911 Monte Carlo/1965年のモンテカルロ・ラリーに向けてポルシェが仕上げた初期の911ラリー・ワークスカー。ヘルベルト・リンゲが駆り、総合5位、クラス2位に食い込む活躍だった。

中庭はセレブなヒストリックカーでいっぱい!

1974 Lamborghini Countach LP400/イタリアでスクーターや小型車メーカーであるイノチェンティの社長が最初のオーナーだった、量産車として5台目の初期カウンタック。後方視界のない初期モデルはとくに「ぺリスコピカ」と呼ばれる。

1972 Ferrari 365GTB/4 Competizione Sr.III/ベルギーの有力プライベーター、エキュリー・フランコルシャンが'73年シーズンにスパ1000㎞、ル・マン24時間で走らせた個体。デイトナ・コンペティツィオーネの最終進化版、シリーズ3の5台しかないうちの1台だ。

 石造りの城に四方を囲まれた中庭で、近衛部隊付きの楽団が演奏を始めた。そこへ居合わせた人々の会話のさざめきが重なって、何とも優雅な、ベリー・ブリティッシュな時間が流れる。

 そんな中、ちょっぴり遅刻したようにロング・ウォーク側の門からエキゾーストを轟かせて現れ、ひときわ注目を浴びたのは、元グラハム・ヒル車という白い250 GTO、ジョージ・ハリスンのサイケデリックなイラストを施したミニ・クーパーS、そしてストレート8の野太い音を響かせるブガッティ・タイプ57Sだった。それにしても、いずれもおそろしくセレブなクルマばかりではないか!

 ちなみに英国人はイタリアン・エキゾチックも大好き。一連のフェラーリはいうに及ばず、エンツォ・フェラーリがジャンニ・アニエリに贈ったワンオフのテスタロッサ・スパイダーなど、よくもまあレアな個体ばかり。英国の趣味道のディープさを、まざまざ見せつけられたイベントだった。

1935 Aston Martin Ulster Competition Sports Mk.II/21台が作られたアルスターの中でもCMC614のナンバーをもつこの個体は、アストンマーチンが唯一、ワークスとして走らせた貴重な一台。最高速100マイル超を誇ったアルスターのモデル名は、同地で1934年のRACツーリスト・トロフィーに優勝したことに因む。

ロングノーズ&美ボディの競演!

1938 Hispano-Suiza H6B Dubonnet Xenia/フランスの航空エンジニア、アンドレ・デュボネがパリ近郊のカロッツェリア・ソーチックで誂えた、水滴型モチーフの特異なアルミボディと曲面ウィンドウガラスに注目。

1956 Ferrari 250GT TdF/筋肉質なボディラインが特徴的なツール・ド・フランス。ヘッドライトカバーガラスの有無やサイドのルーバーの数に、年式によって様々なバリエーションがある。

1939 Alfa Romeo 6C 2500 256 Touring Coupé/当初はスパイダー・ボディでイタリア国内のレースに数戦出た後、トゥーリング社で優美な2座のクーペ・ボディを架装された一台。直6・2.5LのDOHCエンジンを積む。

Photo & Text:Kazuhiro Nanyo

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