2018.07.09

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ワークス・レーサーに見る、唯一無二の存在感「GPH 3C EX-WORKS」

自動車メーカーが仕立てた公認レーサーは“ワークスカー”と呼ばれている。それらはありふれたカタログモデルに酷似しながら、唯一無二の存在として独特のオーラを放つ。“GPH 3C”を掲げるミニ・クーパーSは、我が国に棲息する歴戦の勇者である。

ウェーバー・キャブレターが組み合わされたBMC Aシリーズ・エンジンはダウントン・エンジニアリングによってチューンされたレーシング・エンジンである。現役当時は9,000r.p.m.近くまで使用していたと見られる。

隠せない、純レーシングの血統

 我が国に現存するGPH 3Cというレジストレーションナンバーを掲げたミニ・クーパーS。

 この1台は、ミニがまだ現役だった’60年代当時に、ミニ・クーパーの生みの親として知られるF1コンストラクター、クーパー・チームによってツーリングカーレースに投入された貴重なワークスカーである。

 プロダクションカーをベースとした車輌で争われていた当時のツーリングカーレースは、ノーマルに準ずることが重要な規則だったが、その限界を探ることもまたチームの仕事だった。省けるものは全て省いて軽量化をはかり、レース用のエンジンは、ミニのエンジンのチューニングで右に出る者がいないといわれたダニエル・リッチモンド率いるダウントン・エンジニアリングで特別にチューンされたものだった。

 そして改造範囲の広いグループ2というカテゴリーにエントリーしていたミニ・クーパーSの場合は、さらなるモディファイも込められていた。鋼鉄製であるはずの左右のドアをはじめ、前後のリッドが軽量なアルミニウムで作り変えられていたのだ。

 こうして見た目はノーマルのミニでありながら、とてつもない速さを手に入れたGPH3Cはジョン・ローズをはじめとするミニ遣いたちの手によって多くのトロフィーを収集していったのである。

 近年クラシックカーの世界では、レーシングヒストリーを持った個体の価値が、以前にも増して高まっている。GPH3Cのような有名なワークスカーは、姿かたちこそプロダクションカーと基本的に同じだが、実際には世界でただ1台しか存在しない(このため贋作が存在する)骨董品のようなものなのである。

 オークションにかけられると2ケタの億で落札されることが珍しくないヴィンテージ・フェラーリほどではないにせよ、このGPH3Cの価値もまた、標準的なミニ・クーパーSの数台分に相当するはずである。

 憧れの1台の価値が年々上がっていくことに失望するエンスージァストもいるが、しかし唯一無二の骨董の価値は、株価のようなリスキーなものとは一線を画すこともまた確かなのである。

 ヒストリック・レーシングの世界では、どれだけ価値が高まったとしても、ヒストリックカーレースを戦うことが一流のオーナーの証として評価される傾向がある。この域に至れば、歳月を経てきた歴戦の勇者たちはやはり、自動車文化の大切な担い手なのである。

 多くのクラシック・ミニ・ファンがいることで知られる我が国に、GPH3Cのような1台が棲息していることは、文化的な見地からも重要なことなのである。

ワークスのレーサーでありながら、プロダクション・モデルの面影を完璧に残したコクピット環境。ダッシュ右端のウインカーレンズは油圧の警告灯である。

4点式シートベルトをきつく締めこんだ状態でもイグニッションキーに手が届くように、アルミの板切れでキーのツマミを延長してある。

可能な限り軽くすること、そして当時の英国ではサイドミラーを付ける規則がなかったことから、サイドミラーはドライバー側だけに装着されている。

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