2018.06.05

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

勝つためのヒストリックスポーツカーに恋して『ROBERT BARRIE』

 ロンドン都心から高速道路M4を西に小一時間。住宅地もごくまばらになり、南イングランドらしい緑の丘が連なる田園地帯。ここにロバート・バリーのガレージはあった。このあたりは英国でも有数の富裕層の多いエリアでもある。
 クルマのガレージのことを「ステーブル(馬小屋)」と言うことはあるが、ここは以前、文字通り馬の飼育・調教がされていた場所で、いまも馬がヒョイと首を出しそうな建物が残っている。そんなノスタルジックな馬小屋の前にはアーチ型のガレージがあり、中にはロータス・エランがたたずんでいた。

1960 Lotus 18 Formula Junior/1960年代、フォーミュラ1、2とともに発表された車種で、現在でもヒストリックのフォーミュラ・ジュニアのカテゴリでは表彰台の常連。欧州や英国では出場できるレースが多く、サポートも厚くなっているのも魅力だ。フォード・アングリアの1100ccエンジンにルノー・ドーフィネのギアボックスが天地逆さまについている。価格応談。

1970 Lotus Elan S4 SE FHC/最終モデルのひとつ前のシリーズ4、シルエットの美しいフィクストヘッド・クーペ(FHC)。ロンドン郊外のディーラーを40年ほど前に巣立って以来の整備手帳がついており、シャシーとエンジンのリビルドはエラン専門のヴィガンチューン社など信頼のおけるところが行っている。走行距離もオーナー数も目立って少ない出物だという。売約済。

1969 Porsche 911S/「ステーブル(馬小屋)」の前に、うずくまるようにたたずんでいた空色の911S。ポルシェ356の後継車種として1964年にディストリビューションが始まった911「Oシリーズ」から「Aシリーズ」を経て、リアホイールが57mm後ろに移動してホイールベースが長くなった「Bシリーズ」。これにより重量配分がやや改善され、ハンドリングが大幅に向上した。また、メカニカル・フュエルインジェクションが装備された最初のモデルでもある。全体のスペックが1967年に少数生産されたレース用の911Rに近いため、ハンドリングはクイックで応答性が高いとロバートさん。近いうちに販売予定。

走ってナンボのヒストリック

「ようこそ遠くまで!」と右手を出しながら颯爽と迎えてくれたロバート・バリーさんは、自らもレース歴20年、ヒストリック・スポーツカーの選手権で優勝歴多数のドライバーでもある。若い頃からクラシックカーレースが好きで、金融で働き始めてすぐにレースを始めた。レースをすればクルマは壊れる。金も時間もかかる。ホビーレーサーとして身銭を切り、たびたび痛い思いをして学んだ経験を生かしたいと、この道を選んだという。
 ということで、彼が扱うのはピカピカのコンクール・コンディションのものではない。走ってナンボ、勝つためのヒストリック・スポーツカーなのだ。走ればパーツも必要になるので、レアなパーツを探すサービスもしている。自分でレースをしているから、その人脈で一般のオークションに出てこないものも引いてこられるのだ。
 ガレージに並んでいるクルマも、FIA認定付きなど、レース・レディなものが多い。グッドウッド・リバイバルなど欧州のクラシックカー・レース界では「初期型911男」として知られているというだけに、扱う台数で言えば911シリーズがもっとも多く、得意だという。

日本では一般的には1973年までの911が「ナローポルシェ」と呼ばれるが、このBシリーズからホイールアーチがついたため、厳密なナローではないともされる。インテリアには本格的な消火器が備わっている。名前の「S」はスポーツの頭文字で、どの時代でも高出力のエンジンやより性能の高いブレーキなどが装備された。これをロバートさんはよりレーシングスペックにリビルドしてきた。

 空色の911Sはロバートさんの個人所有で、数年前にバラバラの状態で見つけ購入、レース仕様に仕立てたところだとか。1969年のレアな右ハンドルで、オリジナルのペイントがオレンジ色だったものを、ほぼ反対の補色に化粧直しをした。1960年代中頃の純正のレース仕様車にスペックが近く、反応がクイックで身のこなしが驚くほど軽く、公道でもサーキットでも楽しめるそうだ。近い将来これも販売する予定だというから、気になる人は今のうちに問い合わせたほうがいいかもしれない。
 緑の1960年型ロータス18も、以前はロバートさんの所有車かつ彼のドライビングにより、フォーミュラ・ジュニアの英国チャンピオンシップで優勝している車両。「スターリング・モスやジム・クラークがハンドルを握っていた時代のロータスのオープンホイール。スポーツカーもいいけれど、こういうクルマのセンセーションは格別ですよ。驚くほどフレンドリー&フォギヴィングで、ドライバーが間違えてもクルマが助けてくれるんですよ」とロバートさん。
 自分でレースを走ってみて、必要があればさらにチューンをしたものを販売することもしばしば。「結果を出しているクルマなら説得力も魅力もアップしますしね」

1963 Alfa Romeo Giulia Super/ジュリア・スーパーをベースに、FIAのジュリア・Tiスーパーカテゴリに適合する基準で徹底的にレーススペックに改造されている。アルファのエンジンのスペシャリスト、ボブ・ダブによる160馬力の軽量エンジン、ツイン・ウェーバーのキャブレター。リアアクスルも新調されている。グッドウッドなどレース参戦歴も多いが、驚くほどのボディ剛性を保ちドアも小気味よくカチャッと閉まる。すぐにレースに出てみたい人に。£32,950

リアシートにどうぞ!?

「当時は、ストリートで走ってるままレース場に向かって、ナンバーだけ外してレースしてたからね。外観はステッカーなんか貼らないし、見てくれはほとんど普通のクルマだよ。」

最近新しく載せ替えられたエンジンの出力は、むき出しになっているプロペラシャフトを経て、これまた最近奢られたリアアクスルに伝えられる。グッドウッド・リバイバルにも出場した。

1958 Lotus 7 Series 1/シャーシ番号426、401番からスタートしているためわずか26番というごく初期のセブン。有名なコヴェントリー・クライマックスの1200ccエンジンを搭載、ロバートさん曰く「一般道には速すぎる(笑)」コンディションだという。2014年はこれで1950年代のヒストリック・スポーツカーレースに参戦する予定だという。

オリジナルで搭載されていたフォードのサイドバルブエンジンから載せ替えられた、コヴェントリー・クライマックスとウェバーのキャブレターがアイコニック。426というシャシーナンバーが見える。コリン・チャップマンが北ロンドンのトテナム・レーンでロータスエンジニアリングを立ち上げた時期に限りなく近い。

イギリスではレアなエスハチ「1967 Honda S800 Sports Coupe」

 イギリスではレアなS800。1967年に初めて英国に少数輸入された際の1台だという。ツインカムツインキャブレターで驚くべき70馬力を生み出すエンジンは、当時の1リッター以下カテゴリではS800を最速のクルマに仕立てあげた。約10年前、前オーナーがボディを外す本格的なレストアをほどこしたため、コンディションは極上。クーペというのがその美しいボディシルエットをさらに際立たせている。寒い雨の午前中だったが、エンジンは一発始動。英国の田舎にも似合う一台。£13,450

前後バンパーが外され、ステアリングホイールもスポーティなものに交換され、レーシーな雰囲気(どちらもオリジナルあり)。エンジンもボアアップされ、ギア比も変更されている。

ジム・クラークは永遠のアイドル

 スポーツカーでも、ロバートさんはピカピカの床の間コンディションよりオリジナルの味わいを大切にする。可能ならリペイントなどもできるだけ行わない。バハマ・イエローと呼ばれる黄色のエランも、ディープグリーンのS800もほぼ完全オリジナルだ。ちなみにホンダを扱うのはこれが初めてだそうだが、かなり気に入っているとのこと。
 ロバート・バリーでは車両の保管、トランスポーターサービスなどから、レーシングドライビングのレッスンなども行っている。海外で出物らしきものを見つけたが、買うべきかどうか……というときのアドバイスなども引き受ける。
 ガレージの隅にあるデスクの脇に、ロータス25のコクピットから振り返るジム・クラークのモノクロ写真があった。1962年、ランスでのフランスGP。ロバートさんの永遠のアイドルだという。

ロバート・バリーさんは以前、金融機関でアナリストをしていたという。

ステーブルには1961年型の赤いジュリエッタSS 1300クーペも鎮座していた。

ロータス18のコクピット。スターリング・モスらが座っていた時代のクルマだ。

カメラマン:Soichi Kageyama
媒体:VINTAGE LIFE

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