2018.07.20

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

その盛り上がり方も英国流「Eroica BRITANNIA」PART2

イタリアから世界各国に飛び火しているヴィンテージ自転車イベント「エロイカ」。イギリス版の大盛り上がりな内容をレポート!

各国の言葉が飛び交うスタート

1970年代のツール・ド・フランスの写真から抜け出てきたようなエディ・メルクス、モルテーニ仕様のボルボ140! なんと粋なことにボルボ・カーズからの提供だった。

 土曜日に持参したバイクの組み立てをしたあとイベント会場を楽しみ、夜も華やかに進行しているパーティに後ろ髪を引かれつつ念のため早寝をした。ヴィンテージロードバイクはギア枚数が少なくギア比も大きいので、90kmとはいえ未舗装路が多く勾配がきついと聞いて体力温存しようと思ったのだ。

 翌朝はイングランド中部の高原らしく気温が10℃近くまで下がっていた。立ち込める霧に不安を感じつつ、街の中心商店街そばのスタート地点へ。次第に同じくスタートに向かう人たちが増え、不安は消えていった。

 大仰に中世風なコスプレをしたスタッフが順番を待つ人たちを演劇調の口上で祝福し、笑わせ、送り出してくれる。周りからは英語のほか、イタリア語、ドイツ語、フランス語が聞こえてくる。「Eroica BRITANNIA(エロイカ・ブリタニア)」を楽しみに来ている人が多いようだ。かくいう私たちも日本人チームだ。

よく焼けた(ベイクウェル)パンやパイを提供中。イタリアならパニーニだろうけれど、ここはイギリスなのでソーセージロールや、チキンとリーキのシチュー入りパイなどをどうぞ。

通なフレームカップル

ショートホイールベースを得るために、シートチューブが垂直でシートポストが後ろにオフセットされているフライングゲートフレームの男性。パートナーの女性はスタッガードフレームと通なセレクト。

ちょっとゆるいのが英エロイカ流

ヴィンテージバイクにクリップペダルでなくいまどきのクリートペダルとシューズで来てしまっても英国エロイカならまぁOK! 誰も目くじらは立てないのがいいところ。

頭からつま先まで完璧コーディネート

バイクはもちろん、フランスの雄鶏ロゴのウールジャージといい、完璧なまでのフレンチトリコロールコーディネートの男性。バイクも完璧に一点の曇りもなく磨き上げられている。並々ならない参加意欲の高さがにじむ。

ロンドンが誇るライトウェイトフレームメーカーだったヤングスの男性。ウエアとキャップはメルクスカラーのモルテーニ。

ホールズワース・カンパニョーロの自転車にマッチした復刻ジャージ、ゴーグル、極めつけによくたくわえた口ひげで完成度が高いひとり。

スタンプを押してもらい、準備万端

40年代のロンドンのフレームビルダー、ハリー・レンチが作っていたパリ・シリーズのガリビエ。赤く塗られたラグワークが美しい希少車だ。クランクとブレーキキャリパーが新しいのが惜しい!

 スタート地点でカードに最初のスタンプを押してもらって出発! わたしたちは30マイル(48㎞)、55マイル(90㎞)、100マイル(160㎞)の3つのコースのうち中間の55マイルを選んだ。ルートは丘を上ったり下ったりするが、上りだけを累計した獲得標高は1,700m。最近のコンパクトクランクがついたロードバイクでもそこそこハードなコースだ。このうち1/3近くがエロイカの伝統に準じて未舗装路だというから、覚悟して臨んだ。

 ルートは最初は旧軌道を使った気持ちのいい道を行く。斜度2%程度でこのくらいならヴィンテージ車でも楽ちんだ。しかし道はすぐにそのやさしい顔つきを豹変させるのだった。

パリ郊外のフレームビルダー、ルジューヌのバイクとマッチしたジャージの男性。オリジナルパーツが多そうで、シックでポイント高い。

自転車はやや適当な80年代前期頃のシティサイクルだが、コンセプトが謎のセーラー服で一発逆転の人。お祭りにはこういう人はいてほしい。

英国人のヴィンテージへの気負いのなさ

緑の丘また丘がひたすら続く景色

 ピーク・ディストリクト一帯は古くから放牧が盛んで、緑の丘また丘が続く景色になっている。緑の中の白いぽつぽつは、草をはむ羊たちだ。人間より前から存在していた森はほぼ皆伐されてしまっているわけだが、自転車からも見られる景色は青空に縁取られ、ただすばらしい。急勾配に、ハンドルバーにしがみついて必死にペダルを踏み下ろしつつ、お尻の筋肉に焼けつくような疲労を感じつつ、目は風景から離せない。

 牧草地の間の細い未舗装路の上りが大きな穴ぼこだらけになり、やっとの思いで上りきって一息入れていると、ツイードのニッカーボッカーにフラットキャップを被った70代と思われる紳士が、泥除けにキャリアまでついた重そうな70年代頃の自転車を押してひとりで上がってきた。

 普段着然とした服装なので近所の人かとも思ったけれど、ゼッケン番号が見えた。短いコースの人たちと別れて90kmのコースに入ったところだったので、あのスタイルで90km完走したのだと思う。このタイプの参加者もイタリアのエロイカではまったく見なかった。イギリス人のヴィンテージへのスタンス、若い人たちが企画するいまどきのライドに参加する気負いのなさには頭が下がる。

ショッピングバイクからレーシングバイクまで手がけていた、日本で言えばブリヂストンサイクルやパナソニックといった印象のDAWES(ドーズ)。トップチューブにあるミルクレースとは、牛乳協会がスポンサードしていたシリーズレースの名前だった。

休憩所では地元のビールも!

イギリスはタンデムでのレースの歴史もあり、また公道を走ることに規制はないので、今回もタンデム参加の人たちが多かった。しかもこのアーガイルベストチームは速かった!

エイドステーションでは地元のソーセージやチーズ、ビールもふるまわれていて、何度も戻っておかわりをしている人もいた。なかなかのホスピタリティ。

 いくつもの丘を越え、運河を越え、水道橋をくぐり、エイドステーションで供されたビール(!)を飲み、たくさんの羊と牛に観察され、サイクルコンピュータに表示される自分の航跡が円に近くなってきた。ゴールは近いか? この頃になるとまわりの参加者の顔ぶれが変わらなくなってきて、仲間意識が芽生えてくる。ポケットのお菓子を交換したりした。

 エロイカ・ブリタニアは、ピーク・ディストリクトの大地主であるデボンシャー公爵が、私有地内の未舗装路にコースを引くことを快く許可してくれたから、素晴らしく評判のいいイベントになっている。どこからどこまでが公爵の領地なのかはよくわからなかったけれど、最後のエイドステーションが設けられていたチャッツワース・ハウスはデボンシャー公爵の宮殿で、16世紀から現在も一家が暮らす本邸だという。

グラベル越えの先にあるもの

今回の参加者の平均年齢はおそらく40歳前後、やはり男性が圧倒的に多かった。左の男性のウールジャージはブルックスのもの。

 最後の丘も上り切り、あとは下るだけとなったときに、後輪に違和感が。チューブラータイヤを嵌めるのに力が足りなく四苦八苦している小さな東洋人を見かねてすぐに3人ほどが止まって手伝ってくれた。復帰後もおしゃべりしながら走る。

 そしてフェスティバル会場にゴールイン! 最後数百メートルは沿道にびっしりと人垣ができていて、轟々の拍手と歓声に包まれた。本家エロイカのゴールはもう少しあっさりしたものだったので、この一体感には驚きつつも感動するものがあった。エロイカ・ブリタニアは、ちゃんとエロイカではあるのだけれど、愛好家の内輪にとどまらないゆるくてファミリーな夏のイベントとしてまた格別なものになっている。

生産数が多かった英クロード・バトラーのマジェスティック。レイノルズの531チュービングでラグワークも後期でも凝っている「ザ・英国スポーツ車」。

誰もが楽しく過ごすことができる

パナマハットにスチールのロードバイク。ジャケットに短パンに、インナーはジャージがお揃いの二人。ちなみに、うしろのお嬢ちゃんたちもお揃いなのは偶然?

子供が楽しく遊べるというのが、このイベントのすごいところ。砂場があり藁があり、ピアノがあり芝生がある。あとはオブジェで遊んだりよじ登ったり。

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