2018.06.20

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ロンドン中心部のアンティークモール「grays」

 ファストファッションの旗艦店が立ち並ぶオックスフォード・ストリートに疲れたら、都心のアンティーク・マーケット、グレイズに足を向けるのをお薦めする。

 こんな都心でマーケットとはこれいかに? といぶかしく思われるのは当然だが、華やかなテラコッタ張りでそれ自体がアンティーク、歴史的建築物指定も受けている建物に一歩入れば理解できる。間口の小さなアンティーク専門店が所狭しと軒を連ねているのだ。その数およそ200超。規模的にもアンティークを扱う店舗群としては世界有数だそうだ。

 ここの「ぎっしり感」は、どこか閉鎖になった秋葉原のラジオストアーを思わせる。迷路のような館内を探せば探すほど宝物が出てきそうな匂いがする。品目としてはファインジュエリーや時計からレース、骨董武具まで際限なく、時代的にはなんと紀元前(!)から20世紀までと幅広い。もちろん商品のお値段も数百円から上は天井知らず。ロンドンならではのユニークで粋なおみやげを探すにもよさそうだ。ここでは数ある中から本誌編集者の目にとまったショップをご紹介する。

SHOP01「Michael Lee(マイケル・リー)」

貴族の大旅行に使われたトランクの数々

グレイズの本館、館内の番地でいうところの325-326番にうずたかく積まれたヴィンテージやアンティークのスチーム・トランク。

 ルイ・ヴィトンのモノグラムがドーンと目に飛び込んできたのは、アンティークとヴィンテージのトランクや旅行鞄を扱うマイケル・リーさんのストールだった。19世紀の後半は上流階級の間で海外旅行が大ブームとなり、旅行に持っていく荷物を収納するスチーマー・トランクや長持、ハット・ボックスなどをルイ・ヴィトンやエルメスなどが受注するようになった。

 長い船旅であり、トランクは使用人達に運ばせるため、ちょっとした家具のような大きさや引き出しを内蔵しているなど凝った造りのものも多い。自分のトランクに使う革をとる牛の飼育を発注するところからすべてビスポークの時代なので、19世紀のトランクはほぼどれも一点もの。そして注文主のイニシャルや紋章が入ったものも少なくない。

リーさんは女性のために王位を捨てたことで有名なデューク・オブ・ウィンザーが仕立てさせたものも扱ったことがあるそうだ。また、19世紀のトランクで質が高いものには軍用のものも多いという。

「ラルフ・ローレンなどが店舗の装飾にトランクを使うようになったのはわたしのマネ」というリーさん。

ラルフ・ローレンも取り入れたアイデア

ゴヤールのトランクに残っているステッカー。トランクに旅先のステッカーを貼る習慣はこの数十年のものではないことを知る。

 眺めるだけでエレガントな物語を想起させるこれらのトランクをコーヒーテーブルなどとしてインテリア・デコレーションに使うことを流行らせたのはラルフ・ローレンやダナ・キャランだが、この道30年というリーさんは「彼らはそもそもオレのアイディアを真似したんだよ」と笑う。実際、当時それらのブランドにデコレーション用のトランクを多数おさめていたのだそうだ。

 骨董品としての価値でいえば、同じルイ・ヴィトンでもロンドン支店で受注生産されたもののほうが上級な造りになっているなど、好事家が楽しめるポイントも多いという。

総亜鉛板張りのルイ・ヴィトン・ロンドン製のスーツケースは、インドなど熱帯性の地域にハンティングなどででかける際に使われた。亜鉛なら虫が穴をあけないからだ。

トランクの値段は年代や大きさ、程度によって大きな幅があるが、およそ£1,000から手に入れることができる。

SHOP02「Timespec(タイムスペック)」

比較的手頃な価格帯がお得

Tag Heuer Calculator/ベゼル部分が計算尺になっていることから「カリキュレーター(計算機)」と呼ばれる1970年のタグ・ホイヤー。このモデルでこの年代でオリジナルのブレスレットは珍しいとマイクさん。

 小さな店舗がひしめき合っているグレイズの店主同士は、横丁の住人たちのように和気あいあいとやっている。とくに大声で周囲の人と楽しそうに話しているのが「タイムスペック」のマイクさんだった。

 「あん? うちは兄弟でやっててね、見ての通り、わりかし手頃な価格帯なのよ。でも全部メーカー認証済みで保証付きだから、大丈夫だからね」

とロンドン下町のアクセントで説明してくれる。ヴィンテージ・ウォッチでも気軽にあれこれ出してもらい、試させてもらいやすい雰囲気だ。

Omega Triple Date Moonface/これもかなりレアな1950年代のオメガのムーンフェイス。ケースはゴールドフィルドで手巻。

SHOP03「The Antique Jewellery Company(アンティーク・ジュエリー・カンパニー)」

男性用アクセサリーがみどころ

「アンティークほど楽しいものはありませんよ」と、丁寧に解説してくれたオリーさん。

 ショーケースの中で小さな世界がひときわキラリと輝いて見えた……のは、猟犬などをモチーフにしたブローチやピンだった。

 非常に硬い天然石のひとつであるクリスタルを片面が平らなレンズ状にし、平らなほうからモチーフを沈み彫りし、精緻に着色して仕上げる技法「リバース・インタリオ」。20世紀初頭に人気を集め、カフリンクスなど男性用アクセサリーに多く使われたという。小さな石の中の生きものが生き生きとしていて、いつまで見ていても飽きず、楽しい。アンティークの新しい魅力を発見した。

これもリバース・インタリオを使った20世紀初頭のカフリンクス。猟犬たちの姿が生き生きと描かれている。

SHOP04「P. Cyrlin & Co(P.サーリン& Co)」

オリジナル重視の専門店

Rolex Perpetual Chronometer/Ref.4645、1948年。14Kピンクゴールドで多面ファセットに仕上げられているケースは一辺30mmだが、球面ガラスとバブルバックでかなりチャンキー。ダイヤルも針も曲面になっている。

 父親と親子2世代でカルティエ、ロレックス、パテック・フィリップなど趣味性の高いヴィンテージ・ウォッチ専門店を切り盛りしているサーリンさん。父上の薫陶のたまものなのか、時計への熱烈な情熱を持ってしてくれる詳しい解説がわかりやすい。

 モットーは、オリジナルを大切にすること。ダイヤルのリペイントや他の時計からとってきた針をつけるようなことはせず、してある場合はきちんとお客に伝えるとしている。「日本などに持ち出す場合は免税手続きも喜んでしますよ!」とのことだ。

Rolex Oyster Perpetual/34mmの18Kケースに、オフホワイトダイヤルのバブルバック。日付が偶数だと黒文字でなく赤文字になる。ダイヤルの色みにムラが出てきているが、この経年変化はファンから好かれているという。

SHOP05「C&B Gems & Antique Jewellery(C&B ジェムズ&アンティーク・ジュエリー)」

アンティークジュエリーなら

「本物のスーパーカーは無理でもミニチュアなら維持できますよね」とボリスさん。英国宝石協会の役員でもあり、鑑定眼は確かだ。

「金も銀もウチのは全部ムクですよ!」

といい調子の店主ボリスさんのお店の間口はかなり狭い。実質ひとつだけのショーケースにファインジュエリーをギッシリ並べている。アンティークやヴィンテージのジュエリーは9Kや14Kなどが多いが、まがいものは絶対にないと胸を張るボリスさん。比較的こなれたお値段なのも魅力。

女性向けのジュエリーが多いが、ネクタイピンやチャームなどにはクルマのモチーフも。中央は、GT40と思われる9Kのスポーツカー。

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