2018.06.29

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

英国王室御用達にして、現存する欧州最古の革靴店「Tricker’s」

英国王室御用達の革靴店

 1829年。イギリスが産業革命と植民地からの収益で急速に経済成長し、ヴィクトリア女王もじきに即位という時代……Tricker's(トリッカーズ)の創始者で靴職人のジョセフ・バールトロップは、イングランド中南部の靴の街ノーザンプトンに工場を開いた。日本では北斎が富嶽三十六景を描き、江戸幕府が異国船打払令を出した頃である。

 以来185年、現在は五代目社長のニコラス・バールトロップ氏が率いている。ヨーロッパに現存するシューメーカーの中でいちばん古いのだそうだ。

 しかも工場は今も同じ場所にあり、トリッカーズの靴は当時とさほど変わらない製法で手作りされているという。職人たちがベンチに座り、膝に靴を乗せて形作っていくことから、トリッカーズの靴は「ベンチメイド」と言われる。この製作行程はおよそ250もあるという。

 フォーマルなものから繊細な室内履きまで製品の幅は広いが、トリッカーズのイメージが強いのはやはりカントリー・コレクションと呼ばれるややカジュアルなラインだ。総ブローグのウイングチップ、グッドイヤー・ウェルト製法だから実現できる厚めのソール、しっかりしたコバなどは、レンジローバーに乗って田舎の領地に出かける紳士を彷彿させる。

 トリッカーズはプリンス・オブ・ウェールズのロイヤルワラント(御用達の印)を与えられているが、たしかにアウトドア好きでオーガニック農園なども経営するチャールズ皇太子のイメージにピッタリといえる。

ロンドンのジャーミン・ストリートにある直営店も、すでに開店80年に近い。店内は総オーク張りで、一面の壁は引き出しで埋めつくされている。中にはサイズ違いの在庫がぎっしり。

大柄でちょっと声をかけるのをためらってしまいそうなジャーミン・ストリート店マネージャー、デイビッド・フライマンさん。でもやさしく丁寧に靴のことを教えてくれる。

ダイアナ妃がチャールズ皇太子にルームシューズを進めたことが、英国王室御用達のきっかけになったとか。

素材や色を選べる特注が人気

 ロンドンのジャーミンストリートにあるショップでは、採寸からのビスポークの注文を受け付けているほか、ここのオリジナルとして既存モデルで素材や色を選べるメイド・トゥ・オーダーを受けており、これがとても人気だという。

 基本的にすべてのパーツにおいて素材や色を選ぶことができる。店頭にはアッパー用の革、ライニング用の革、サイドゴアブーツのゴム部分の素材、各種ソールのサンプルなどがある。これが戸惑うほどの色や種類がある。

 トリッカーズの靴は、リペアを重ねて履けば履きこむほどよくなるといわれる。リペア自体はどこでもできるが、とくにフルリビルドするような場合はやはり製作されたときと同じラスト(木型)で行うのがいいとのこと。同社には「靴の面倒をよく見てあげれば、靴もあなたの面倒をよく見てくれますよ」という教えがあるとか。なんともうまい、うなずける格言だ。

サイドゴアブーツの「ヘンリー」。トリッカーズは、グッドイヤー・ウェルト製法をとるほかの多くのメーカーと違い、1.3cm厚もあるソールを実現している。モッズファンもトリッカーズのブーツを崇拝する理由はここにある。

ダービーブーツとも呼ばれるシンプルな「バーフォード」。コバが厚く張り出しているのがトリッカーズならでは。長く履いて自分の足になじませて楽しみたい。

想像力が試される、メイド・トゥ・オーダーの素材サンプルとカラーサンプル。ゴム生地やタブの色だけで10、スウェードに至っては60色ほどもあるというから、選ぶのも大変だ。

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