2018.06.08

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

日が暮れるとさらに魅力的な顔を見せるDIYガレージ。

日が暮れて外は肌寒くなってくるのとは反対に、オレンジ掛かった照明に浮き上がるM邸の佇まいは温かみすら感じる。「暗くなってからの我が家の眺めも好きです」とはMさん談。

大工というバックグラウンドを活かし、DIYで完成させたガレージハウスは、ビートルを育んだカリフォルニアの雰囲気を漂わせながらも、日本やヨーロッパの要素があちこちに散りばめられている。そこは夫婦がリラックスできる、暖かな空気に満ち溢れた場所だ。

マニアックな世界に閉じ籠らず、妻や仲間と気負わず過ごす空間。

M邸のガレージは独り籠って趣味に没頭する趣味の空間、というよりも夫婦がオープンにくつろげる遊びのスペースといった雰囲気。これこそがカリフォルニアの空気感といえる。

 朝目覚めた時に、愛すべきガレージとクルマが目の前にある。男なら誰しも憧れる夢をDIYで実現したMさんのガレージハウスを三重県の城下町に訪ねた。昨年の10月に完成したばかりのマイホームは、構想から3年を掛けたという。

 「平屋でガレージつき、という漠然とした構想から始まったのですが、最初に決めたのはリビングの大きなソファ。ここから徐々にカタチが決まっていきました」というMさん。彼の職業は建築会社に勤める大工であり、隣接する生家に住む父親は設計士という、ガレージハウスを造る上で実に羨ましいバックグラウンドの持ち主なのである。そんな造り手側の目線をもつMさんだからこその、こだわりが随所に見られる。

 ガレージに置かれた1958年式のVWタイプ1を見れば分かるとおり、カリフォルニアスタイルが大好きなMさん。だが、あまりに傾倒してデコラティブになりすぎたガレージサンプルを見てきているだけに、クドくならないさじ加減は絶妙だ。インテリアにおいてもそれは同様で、高価な家具をやみくもに集めるのではなく、一般的な国内ブランドのキッチンユニットなども取り入れている。こだわる部分と手を抜く部分を巧みに使い分ける、という要素を踏まえつつM邸の全体に流れるテーマ。

 それはカリフォルニアの空気を感じさせつつ、日本建築の良さやヨーロッパのインテリアの洗練を取り入れたバランス、に集約される。もちろん怪しげなオリエンタリズムを組み合わせる、という意味ではない。「たとえば、最近の建築は“庇”のないデザインがトレンドですが四季に富んで、降雨量の多い日本の風土には庇の存在が実に大きいんです」という。なるほど、昨今の箱型の住居とは異なり、M邸は住居部分とガレージ部分を結ぶように屋根が傾斜しており、いずれも庇のスペースが設けられている。

 さらにガレージ右手より玄関への動線は渡り廊下のような構造となっており、豪雨の日も玄関ドアを開けたらすぐびしょ濡れになるようなことはなく、一呼吸置くだけのゆとりがある。杉材を鎧張りとした壁面の足元はコンクリートにあらかじめ溝を設け、そこにカリフォルニアらしいプランツを植えている。これが彼の言うバランスなのだ。

広々としたガレージに収まるタイプ964のポルシェ911と、1958年式のVWビートル タイプ1。ポルシェはドライブ用とし、ビートルのカスタムに専念しようと計画中だそう。

ガレージ後部には玄関へとアクセスするドアに加え、中庭に出られるスライディングドアを設置。その奥は寝室が続いており、中庭を介して寝室からガレージが見渡せる。

遊び心溢れるギミックが隠れた、 シンプルで広々した居住空間。

マイホーム構想は手前に見えるソファから始まった。リビングの壁に作り付けられた飾り棚は、向かって右側が観音開きの隠し扉に。広々使えるアイランドキッチンも理想通り。

 さて、寝室から中庭を介してアクセスできるガレージに踏み込んでみる。先に述べたVWとポルシェ964を格納するこちらは、仲間の手を借りてコツコツと仕上げたDIY仕様。襖のようにスライドするガレージドアを開けると、杉材を鎧張りにした壁が素朴で温かみのある雰囲気を醸し出している。

 壁には所属するVWクラブのバナーを照らすようにデッドストックで手に入れたアンティークの照明器具が設えてあり、VWのディーラーで使われていたネオンサインが良い味を出している。電飾は一般に売られているシーリングライトで光量が調整できる仕組みになっており、センスの良いアイデアが散りばめられている。

 ガレージというと独り籠って過ごすマニアックで閉鎖的な空間になりがちだが、ここはミニマルで温もりのある雰囲気で、夫婦で共有できるくつろぎのスペースにもなる。こうしたリラックスした雰囲気作りは居住部にも活かされており、屋根裏の収納スペースへ昇る階段の一部にライトを埋め込んだり、リビングの飾り棚を隠し扉として保育士の奥様が練習に使うピアノ部屋としたり、と遊び心に富んだ仕掛けが随所に施されているのである。

 事実、この洒落た雰囲気は人を惹きつけるようで、レストランやショップと間違えて訪ねてくる人もいるそう。「日が暮れてからの我が家も好きなんです」とMさん。ならばと日暮れを待つことしばし。頃合を見計らって暗暮の中、M邸の照明が灯された。ウッドのエクステリアやガレージを柔らかく温かいオレンジ色の灯りが包み込む。冒頭の写真がその時の風景。ホッとするような、それでいて家で待つ家族の顔が浮かぶ、そんな複雑な気持ちになった。

高い天井からヨーロッパ製の照明を配した寝室は淡い色彩の壁に細長い採光窓を配し、間口の広い窓と相まってくつろげる空間に。中庭を挟んでガレージにアクセスできる構造だ。

奥様が日々練習するピアノは、シンプルなリビングの雰囲気に統一感を持たせるため、作り付け棚の階段下スペースに当たる部分を観音開きにして設置。隠し部屋感覚で楽しい。

DIYでコツコツと作り上げたガレージの内装は白と杉板の木目を活かした明るい色調。スイッチやコンセントなどもシンプルでカリフォルニアっぽいものを探して取り付けた。

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