2018.07.13

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"時代"をさかのぼり、"時代"と遊ぶ「GOOD WOOD REVIVAL MEE...

毎年秋、英グッドウッドで開催される「グッドウド・リバイバル・ミーティング」。ここでは、バリー・シーン・メモリアル・トロフィーを中心に、2輪編をリポートしてみよう。

現代とは思えないピット風景

金曜日の練習走行のあと、週末のレースに向けてクラッチ板の交換を受けるフェザーベッド・フレームのノートン・マンクス。ビンテージのツナギを着たメカニックが、錆びが所々に浮いたトタン張りのガレージでメンテする。現代とは思えない光景だ。

 オートバイも4輪と同様にグッドウッドの大きな魅力だ。サーキット上では幾多のヴィンテージマシンが白熱のバトルを繰り広げ、50年前と同じトタン材で作られたピットには、看板やサビの浮いたスペアパーツ、薬品などの小物もプラスチックのボトルではなくブリキの容器に入れられて並べられているなど、マシンとそれを取り巻く環境がトータルで演出されている。

 メカニックや、かつてのワールドチャンピオンとのコミュニケーションもグッドウッドの楽しみ方のひとつである。普通こういったモータースポーツイベントでは、セキュリティが張り付き、スターと一般人を隔てるフェンスがあるのだが、ここにはそんな類のものは見つからない。だから参加者は普段話すことの出来ないライダーと、ヴィンテージマシンに対する情熱をライダーの時間が許す限り語りあう事ができるのだ。ただし、経験談からお伝えしておくが、ピットに行く際は耳栓を忘れずに。

 そんな中、ル・マン式スタートで幕を開けたレースがあった。MVアグスタ、マチレス、ノートン、BMW、ヴェロセットなど50年代のレーシングマシンが多数参戦する「バリー・シーン・メモリアル・トロフィー」である。このレースは土曜日と日曜日の2ヒート制で行われ、オーナーと著名なレーシングライダーがチームを組んで走るレギュレーション。

 そのライダーがまた豪華で、ウェイン・ガードナー、ジェレミー。マク・ウィリアムズ。マイケル・ラッターといったそうそうたる面々だ。

そこに存在するのは、紛れもなくレース黄金期

ロンドン南部でヴィンテージバイクショップを営み"ザ・バロン"のニックネームで知られるディック・スミスは、トライアンフ・エースチームのメカニックとしてグッドウッドに参加。ミッション別体式の1954年 650ccトライアンフT110の馬力をもう少し搾り出せないかと試行錯誤していた。

「エースカフェ」と「タナップ・ボーイズ」

モッズやロッカーズはただのファッションではない。オートバイへの情熱ありきのハードボイルド走り屋集団が、50年のときを経てここに集う。

典型的なロッカーズスタイルを披露する59クラブのオールドロッカー。ミッション別体式のトライアンフ・ボンネビルのエンジンを、ワイドライン・フェザーベッド・フレームに換装したトライトンを駆る。

アマチュアレーサーとしてマン島TTに参戦したジョージ・フォーンビーが、1935年に製作した映画「ノーリミット」をオマージュした参加者。マシンは映画に登場するジョージ・シャトルワース・スピード・デーモンのレプリカだ。

グッドウッドで開催されるアウトロー同窓会

Triton 500 Racing Ver./ロンドンのエースカフェでは顔の「ミーン・ファッカーズ・MC」のジェイク・ターナー。本人も認めるほどちょっとやりすぎのピンズやリベットやチェーンのコスプレに対して、レース仕様500ccエンジンを搭載するマットブラックのトライトンはシックな装い。

Harley-Davidson WL/グッドウッド・リバイバルのプレス担当だったサラ・ブラッドレーも、モッズ&ロッカーズ・パレードに参加。1930年代アメリカのライディングウエアと、イギリスのロッカーズファッションを見事にブレンドさせ、750cc ハーレー・ダビッドソンWLを走らせた。

レース前のピットでは、様々な心地よいサウンドが鳴り響く

1,000ccもの排気量を持ち、生産されたときには世界最速を誇った「ヴィンセント・ブラック・シャドウ」。ライダーはチャーリー・ウィリアムズとチェスター・ラスク。写真はチェスターの父ロバートが暖機運転をしているところだ。

1949年式ノートン・インターナショナル・クラブマンに跨るパトリック・ウォーカーは、グッドウッドのこの日のためだけに、数ヶ月をかけて立派なモミアゲを生やしたのだった。

弁護士であるセバスチャン・ガッシュは、オーストラリアの伝説的ライダー、トロイ・コーサーと共に1937年 BMW R5 SSを走らせた。二人の息のあったチームワークは3位ゴールという結果をもたらした。

ジェイク・ターナーはグッドウッドのレギュラーで、最も写真映えする人物のひとりだ。日曜日の夕方、多くの人はすでに会場から去っており、彼も家まで愛車に乗って帰る準備をしていた。

スピードとR&Rに殉じた男たち「The 1950's Rockers」

ラフな生き方を好み、髪の毛とモーターサイクルを共にグリースまみれにしていた彼らは、人々からロッカーズと呼ばれていた。彼らな英国を代表するバッドボーイズ文化の担い手だった。

すべてのロッカーズが憧れた理想的なカフェレーサーは、マンクス・ノートンをモデルにしたトライトンだ。

 グリースで整えた髪に、彼らのドレスコードとしてのジーンズとレザージャケットを身に纏うロッカーズたちは、いずれも労働階級出身の若者だった。

 モーターサイクルとロックンロールを楽しみ、その日暮らしの無軌道な生き方を好んだ彼らは、典型的な不良少年のイメージそのものだった。しかしこの英国の若者たちは、米国のヘルズ・エンジェルズのようなモーターサイクル・ギャングとは少し趣が異なっている。ロッカーズたちにとって、最も重要なことはモーターサイクルを速く走らせることだったので、アルコールやドラッグをやたら摂取することはしなかった。

 一般に、彼らの愛車は速く走るために改造され、彼らなりの個性を主張していた。カフェレーサーと呼ばれるこれら改造車は、見た目はロードレーサーに似ていたが、レーストラックを走ることはなかった。彼らのステージは、カフェとカフェの間の競争である。最も有名な彼らの聖地は北ロンドンのエースカフェで、約1マイル先のラウンドアバウトまで走り、ジュークボックスで流れているレコードの曲が終わるまでに帰ってくるという、即席のレースが恒例だった。

 なお当時の英国のカフェは、カプチーノを提供するようなトレンディスポットではなかった。長距離トラックの運転手相手に、お茶や豆を載せたトーストを提供するような場末の飲食店であり、ロッカーズのような不良たちと同席することを他のお客たちが気にすることのない、唯一の場所だった。

 低賃金の労働者が多かったロッカーズの若者たちは、愛車の改造パーツ代をなけなしの金から払い、わずかに残金があればクロームのリベットやスタッズで、レザージャケットを飾り立てることに遣った。スピードと音楽だけが、彼らが心から信じられるものだった。

平凡であることを嫌った若者の集団「The 1960's Mods」

スリック・ファッションで身を固め、イタリアン・スクーターを足として愛用していた当時の若き英国の少年たちは、モダーンズという言葉を意味する"モッズ"と呼ばれていた。

ランブレッタ・スクーターにまたがるジョン・ペドリックとエイドリアン・ティンクネルは、1964年に起こった1,000人を超えるロッカーズとのブライトン海岸の血の抗争を知る、本物のモッズである。

 1960年代半ば、労働者階級の若者たちが産み出した文化であるモッズだが、そのスタイルにはロッカーズたちと興味深い対照があった。

 同じ労働者階級出身ながら、モッズはスノッブさを志向し、上流階級への憧れを隠しはしなかった。また彼らが乗るのはモーターサイクルではなくイタリアン・スクーターであり、ランブレッタGT200とベスパGS160が、最も好ましいモデルだった。そのシートはヒョウ柄のカバーで装飾され、森のようにミラーを乱立させたり、スポットライトをやたらとつけたりするデコレーションを好んだ。走行性能には何の貢献もない改造ではあるが、これが彼らにとっての“クール”だったのである。

 モッズたちは流行のフォロワーであることを忌み、常に前衛であることを望んだ。1960年代初期、英国のヒットチャートを賑わせたのはご存知“ザ・ビートルズ”だったが、モッズは異なるサウンドを求め、モダンなアメリカのジャズを聴いた。ジャズ・ミュージシャンのクールさとエレガントな服装はモッズにとって理想的だった。

 彼らはそのスタイルを模倣し、シャープなシェイプのシャツを着て、つま先の尖った靴を履いていた。やがてジャズが庶民的な人気を得るようになると、モッズはブルース、ソウル、そしてスカなどを聴くようになり、本流には与しないという姿勢を保った。

 なおモッズ文化の一部として、女の子たちのモッズであるモッドガールも存在した。彼女たちはボーイッシュなイメージで、ダークアイのメイク、ショートカットの髪型など、ユニセックス的なファッションを好むのが特徴である。

1957 Royal Enfield Bullet/さりげなく木に寄りかかる、ロイヤル・エンフィールド・ブリット350ccトライアルモデル。後ろに建つビルディングには、1960年代のサイケデリックなペイントがこの週末中に壁に描かれていた。ちょうどこの写真を撮影したタイミングで、当時の服装をした画家はお茶のために席を立ってしまった。

Report : Frank Kletschkus

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