2018.07.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

60年目、ベルリネットたちの里帰り「Alpine 60ans」

’60~’70年代のラリー・シーンで活躍した伝説のスポーツカー、アルピーヌが第一号車を世に送り出してから60年。その節目を祝いにベルリネットらが地元ディエップに駆けつけた。

ディエップを占拠したアルピーヌたち

Alpine A110/
イベントのフィナーレは、会場を出てディエップの街を練り歩いて、工場にまで達するパレードラン。オレンジのボディに黒いストライプが小粋なこちらラリー仕様のA110だ。プレクシガラスをかけられた奥の、イエローのヘッドランプにも注目だ。街の住民たちも沿道からパレードを見送った。

Alpine A110/
ツートンカラーのボディにディープリムのメッシュホイール、さらにはイエローのロールバーにも注目。アルピーヌの全盛期はモータースポーツの裾野が爆発的に広がった時期でもあり、スポンサー名やロゴを採り入れたカラーリングの全盛期でもあるのだ。ルノーの菱形ロゴも旧いままである点に注目。

 北海に面したディエップの気候は、お世辞にも陽気ではない。重く垂れ込めた雲、9月なのに冷たい小雨。しかし時折、雲間から射す陽光に照らされ、碧い海と石灰質の白い断崖が、遠くから強いコントラストを放つ様子は、神々しいまでに美しい。

 アルピーヌは60年前にこの街のルノー・ディーラーだった故ジャン・レデレーが世に送り出した。彼はアルプスのラリーで味わったドライビングの楽しさを、自ら創るクルマに込めることを誓い、「アルピーヌ」の名を採った。北フランス、ノルマンディ人のレデレーにとって、アルプスの山々は、憧憬の対象だったに違いない。

 そして60年後の2015年9月、地元フランスのアルピーヌのオーナーズ・クラブの主催によって、アルピーヌ・ブランドの60周年、つまり還暦を祝うミーティングが生産工場があった地元、ここディエップで開催された。呼びかけに応じたオーナーとクルマは、なんと約800台。ディエップの海岸沿いのプロムナードの芝の上は、A108からA110、A310、そしてV6やV6ターボ、A610、あるいはアルピーヌの系譜に連なるルノーやルノー・スポール各車によって、びっしりと埋まった。

 今回のミーティングでは「Merci, Monsieur Rédélé」と書かれた記念プレートを、参加各車らがウィンドウに掲げていた。RR(リアエンジン・リア駆動)と軽量さにこだわり続け、コントローラブルだが独特のスリリングなハンドリングを持っていた歴代ベルリネットは、レデレーがその昔、感じたドライビングの楽しみを、今も伝え続けている。60年目に捧げられたオマージュとして、これ以上の賛辞はない。

 市内のレデレー像、そしてアルピーヌ工場まで行われたパレードランの時刻には、ついに大粒の雨が降り出した。冷たい雨というより、アルピーヌというクルマの変わらぬ熱さと、どこかウェットな情念さえ感じさせる、涙雨のようだった。

北国の情念が意外と似合うA110

Alpine A110/
こちらは定番のフレンチ・ブルー・メタリック。ラリー仕様はA110では標準的な仕着せといってよく、4点式シートベルトはほとんどスタンダード化されているほど。

Alpine A110/
イエローの流麗なクーペという時点で、きわめて'70年代的。A110の端整なスタイリングは実際、色々なボディカラーに仕立てられても、それなりの雰囲気にまとまってしまうから不思議。

 アルピーヌは決して成功者が成功を見せびらかすためのクルマではない。こういっては何だが、集まったクルマの中には、そのモディファイのセンスはちょっとビミョー!? と思われる個体も少なくないし、いかにもクルマ一筋でそれだけが趣味で、ダサいブルゾンとジーンズ姿まで当時のまま……というオーナーも散見された。

 ドイツから来た、あるA110のフロントスクリーンには「JEUNE POUR TOUJOURS(ヤング・フォーエバー)」と大書きされていた。地元の漁協と商工会議所のスポンサードを得て、魚のグラフィックを背負ってル・マン24時間を走った有名なA310もいた。

 そう、アルピーヌは大いなるアマチュアイズムのスポーツカーでもあったのだ。スリッピーな路面でリアが滑り出してもコントロールしやすく、パーツは近所のルノー・ディーラーで修理できるから、まさにラリーはお手のもの。ワークスはずっとル・マンに挑戦している一方で、ある年スタートした世界選手権ラリー(WRC初年度は1971年)ではいきなりチャンピオンになってしまった。オーナーなら誰もが鼻高々で、カッコよく乗れる速いクルマ。多少、腹は出てもコクピットに滑り込めば今もオーナーたちは青春真っ只中。それがアルピーヌなのだ。

Alpine A110/
コーナーで接地を高めるための、後輪のネガキャンに注目。A110は当初957ccから始まって、重量は570kg程度しかなかった。1,100ccや1,300cc、1,600ccと徐々に排気量を上げたが、つねに軽さで戦闘力を保った。

Alpine A108 2+2/
1965年まで約100台という少数が生産された4人乗りクーペ、A108 2+2も数台、会場に現れた。ボディはA110と同じFRP製だが、シャップ・エ・ジェサランというカロッツェリアが製作を担当。

Alpine A106/
展示ではなく、一般車両の参加でもっとも旧かった個体がこちらのA106だ。まだルノー4CVの影響が強いが、ミッレ・ミリアで活躍したことで知られるモデルだ。エンジンは747cc。

Renault Estafette/こちらはアルピーヌのボディワークを専門とする板金ガレージの営業バンで、ルノー・エスタフェット。ルノーで初めてFFを採用したモデルだ。

70年代に輝いたベルリネット、A310

Alpine A310/
相当にスポーティな仕着せだというのに、ブーランジェリー(パン屋さん)の前でもごく日常的で自然な佇まいを見せる。それもアルピーヌの面白いところ。A310の初期4気筒モデルの、'60年代風とウレタンバンパー化の中間にある過渡期的な雰囲気は、今も多くのエンスージャストをひきつける。

Alpine A310/
こちらは4気筒モデルのラリー仕様。バイザーまで精密な造りの追加補助灯と、同じくレッドのマッドガードに注目。モールドもまだクロームなので、全体的にまだクラシックな雰囲気。

Alpine A310 V6 Gr.4/
左ページのグループ5仕様と比べてみてほしい、こちらはグループ4仕様。ワイドトレッド化によるフロントフェンダーとチンスポイラーの繋がりが、グループ5では改善されている。

大衆車も継いだ、アルピーヌのエスプリ

Renault Super 5 GT Turbo/
初代の縦置きエンジンに対し、横置きになったシュペール5に用意されたGTターボ。出力は当初115ps、後に120psに引き上げられた。写真はフェイズ1と呼ばれる初期グリル仕様だ。

 今回のイベントにはベルリネット以外にも、往年のR8ゴルディーニやルノー5、クリオやトゥインゴのR.S.らも多数参加していた。

 歴代、ゴルディーニ・エンジンを積んで活躍したアルピーヌだが、両者とも1970年代半ばにルノーに吸収され、今日のルノー・スポールの礎になったことは知られている。だから、みんな祖先はアルピーヌに繋がる兄弟という「同胞愛」的な感覚が、むしろフランスっぽい。クラブ活動やその輪が、車種や駆動輪で分かれて当たり前、という垣根を作りたがる感覚の方が、ここでは古臭いのだ。

Renault 11 Turbo Gr. A/
'80年代後半の空気がバリバリに漂う、ルノー11のグループA仕様。今見るとキッチュな、当時のワークス・カラーも新鮮だ。ラリーの名手ジャン・ラニョッティらが乗った。

Text: Kazuhiro Nanyo

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