アメリカ人が憧れる家が理想、JDMが眠るガレージハウス。


栃木県宇都宮市。市内に建てられた新居は、施主の鈴木美樹さんのコンセプトが明確で、コンパクトな設計でありながら家族の距離感がじつに心地いいガレージハウス。設計をしたのは、クルマが趣味でビンテージカーを所有する『飯田亮建築設計室』の飯田亮さん。鈴木さんが通うクルマ屋さんに置いてあった1枚のパンフレットを見つけて、友人とオープンハウスを見に行ったことがきっかけでガレージハウスを飯田さんに依頼することになったのは、2015年秋のことだった。
施主の鈴木さん。昔からクルマが好きでドリフトを楽しんでいた時代は、アパートで暮らし、青空駐車場でタイヤを履き替えたり、オイル交換したりと自分でクルマのメンテナスをしていた。結婚をしてからも、トランスミッションの乗せ換えまで駐車場でこなしていたが友人がガレージのある家を建てると聞いて、自分も建てるのであればガレージ付きと要望し、予算もある程度決めてオープンハウスに参加し設計を相談。飯田さんに勧められて住宅メーカーにもガレージハウスを相談したが、担当者とは話が通じず『飯田亮建築設計室』に依頼することになる。オープンハウスで感じた、スケールに関係なく上質な住まいを提案するコンセプトが自分たちにも合っていると感じたことが大きな要因だった。
クルマ好きなご主人、鈴木さんが設計士・飯田さんに依頼したのは、映画ワイルドスピードのようなメンテンスをするためのガレージ空間。そして鈴木ファミリーが希望したのはアメリカ人がアメリカに建てたような日本の文化を取り入れた和モダンな家であった。設計依頼を決めてからの土地を探すことになるが、約100坪の土地でありながらも三角の特殊な 形状な土地を奥様が見つけ飯田さんに相談。特殊な土地と思えるが、隣人を気にすることなく過ごすことができるほか、「コンパクトな設計にすることで鈴木さんの予算内で建てられる」などメリットが多かったと三角の土地に新居を構えることとした。
前述にもあるように鈴木邸のコンセプトは、素材のグレードは落とすことなく上質な生活提案がコンセプト。鈴木家も無垢の床材や杉材の外壁などを使うことで高級感を感じながらホワイト×木質のシンプルな暮らしをテーマにプランニング。カーテンは導入せずに、窓ガラスのほか、葦簀、障子を使うことでいろいろな表情をリビングに持たせ、目線を意識しながらの細かな設計により開放感が感じられる。じつは床座を意識して重心を下げた天井高となっており、通常よりも30cm低く、ライトの設置も低く設計されたが、まったく狭く感じないのは設計士の意識したところ。視線を遮るものをなくすことで圧迫感がないように設計されている。



階段の壁面はライティングの妙を見せて昼間と夜の景色が変える設計をしている。またリビングとキッチンの床面に変化を持たせることで切り替えをしているほか、無垢の床面の水の問題もクリアしているなど、家具やカーテンを購入しないシンプルな暮らしができることを重要視している。隣接の住居がないため、窓を全開に開けて過ごしても視線を気にせず過ごせるのは大きなメリットとなった。1階の縁側や、2階の大きなバルコニーなども部屋の延長として感じるのも鈴木家の特徴である。
ガレージは、スペアパーツの保管ができるスペースやタイヤの保管など考慮するなどご主人の希望を反映させた。「今までクルマの作業は日が暮れると中断や気候に左右されていたが、ガレージができたことで時間に関係なく作業に没頭できるようになりました」とはご主人。そしてガレージ横にはキッチンがあり、奥様との距離感はより近いものに設計したの は奥様のご要望。排気ガスを嫌うことが多いなか、ご主人と奥様、そしてリビングで遊ぶ子どもたちの距離感が保たれているのが鈴木邸の特徴である。
価格を抑えたポイントは、コンパクトな設計でありながらも素材のランクダウンはいっさいしないバランス。本来であれば、延床面積で30坪くらいが平均のなか24坪とし、あらかじめ家具を造作することで余計な出費を抑えることに成功した好例といえる。ホワイトを貴重としたリビングは、シンプルではあるが窓を開放させることで縁側までが部屋の一部のような設計。これも考えぬかれた飯田さんの設計が利いている。和がベースとなっているが、英語で表現されたものは、鈴木さんのこだわりといっても過言ではない。北米仕様のシルビアが入るガレージハウスはコンパクトではあるが、JDMハウスとしてこだわりを持った家であった。






愛車:1991年式ニッサン・シルビア
構造:木造在来工法
外壁:杉材