2018.07.23

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ヴィンテージ自転車で街を駆ける「Anjou Velo Vintage」

「旧き佳き時代」は、フランスでも今や貴重なもの。ロワール川の畔で、往時のスタイルに身を包んだ人々が旧い自転車に乗って数十kmを走る、イベントが大盛況という。「アンジュー・ヴェロ・ヴィンテージ」の模様をお届けする。

田舎道、シャトー、ワイン…自転車で巡る「詩的に正調」なフランス

舞台はロワール地方の田舎道。適度にひなびた村々や小道をのんびりと散策するのに、自転車はベストの手段なのだ。

 2012年、6月の第4週目の週末、第2回開催を迎えたアンジュー・ヴェロ・ヴィンテージ。第1回目の盛り上がりを聞きつけて、フランスと欧州その他の国、そして日本から多くのヴィンテージ・ファンが集まった。起点となるソミュールの街は、陸軍と乗馬学校の拠点として、また白亜のシャトーとロワール・ワインの一大産地として知られる地方都市だ。

 イタリアで開かれる「エロイカ」が悪路を走破して得られる究極の達成感のイベントとすれば、こちらは男女の分け隔てなく、自分のペースに応じてゆっくり時間を過ごすイベント。実際、趣味を同じくする友人同士だけではなく、家族や夫婦でのエントリーが多い。

 とはいえ、それは安易なイベントという意味ではない。参加者にはライディングのレベルと体力、実践具合に応じて38km、58km、101kmと3種類のコースが用意されている。ちなみにオプションで「ソワレ・ヴィンテージ」と題された前夜祭まである。思い思いの週末を過ごせるイベントなのだ。

ロワール川流域で有数のワイン産地であるソミュール。ぶどう畑の真ん中で、ボトルを開けて持参のチーズやソーセージに舌鼓を打つのも贅沢。

タンタンにルノー4CVまで街中の景色ごとタイムスリップ

スタイルを持つ、ということ。

サスペンダーとカスケット、メガネとグローブに注目。身につけたものは同系色で、凍結した自転車はハッキリと反対色で。

プジョーの自転車と千鳥格子のワンピースはオレンジで統一、キッチュなヒールがお洒落。

ストライプスーツもウェストコートと帽子、旧いシングルスピードでこんなに華やぐ。

本物の輝きと年季に彩られたオーラ

村々の間に広がる葡萄畑はミネラル豊かな川沿いの高台にあって、この地方の典型的な光景。

 意外なようだが、フランス人は概して新しいモノ好き。とりわけ利便性に関わる類の進歩は、「必要」さえ満たせば合理的に受け入れてしまうので、ガスよりは電気、電気よりはTGV、そして自転車よりは自動車といった具合だ。

 ただ彼らの定義する「必要」というのが曲者で、ときに目的よりも、面倒な過程の方がしばしば求められる。そんなフラッシュバックこそが、じつのところ、人生を楽しむ大目的の遂行に他ならない訳だが。

 このイベントに集うマニアは大別して2種類。レトロな自転車のマニアと、ヴィンテージ・スタイルのマニアだ。1920年代のド・ディオンのような博物館級や、レプリカとはいえ「グランド・ビ」と呼ばれる原初の自転車、そして’50〜’60年代の黄金期のツール・ド・フランスを偲ばせるロードレーサーなど、さすが自転車大国だけにお宝と業物は尽きない。

昨年の600台弱に対し今年は1,300台弱が出走。有料でヴィンテージ自転車のレンタルもある。

忠実に再現!? された懐かしのフランス

チームで統一されたウェアとフレームにこだわるマニアも。ロワール川を見下ろしつつ。

 一方で、ヴィンテージ・ファッションの「コスプレ」を楽しむマニアたちは、レトロな柄のワンピースや服がさりげなくシュル・ムジュル(オーダーメイド)だったり。前夜祭ディナーのダンスタイムでは、映画「アーティスト」のテーマ曲にのって、チャールストンを踊りまくっていた。

 また普段からのマニアでなくても、タンスやガレージの奥から「ヴィンテージな」服や自転車を引っ張り出して、あるいは隣人から借りて参加しているという人も少なくない。身近な範囲を探せば、すぐにヴィンテージなモノが見つかるところが、自転車やモードの大国たるゆえんでもある。レトロ・タッチというこの週末唯一のドレス・コードを、守るためのハードルは決して高くない。

 もうひとつのヴィンテージ要素として、ワイン産地だけに、イベントにはご丁寧にも公式ワインが設定されている。道中の休憩所自体がワイン生産者のカーブで、グラスで参加者に振る舞われるし、中にはチーズとボトルを持参してワイン畑の中でピクニック休憩を決め込むエントラントもいる。

参加登録と引き換えに各出走者に配られるアルミの水ボトル。どんな自転車にも似合う。

タイムスリップする路上の風景

エンジンとガソリンタンクを追加した奇妙かつレアなモトベカンは、’70年代に使われていたトレーニング用の先導車だ。

会場で見かけたヴィンテージ猛者たち

愛車とのコーディネートの妙を競うコンクール・デレガンスはこのイベントのハイライトのひとつ。オリジナリティのみならず、センスやスポーツ性も加味した審査が行われるのだ。

手編みニットのマイヨーに、アレルヤのフレーム。そしてチューブタイヤの予備は2本。

’30〜’40代の参加車両も少なくない。クレマンのトリコロールのウェアもいい雰囲気。

必要が生むスタイルとディティールは美しい

タンデム車に一人乗りでスーツケースまで牽引。ある意味、究極のグランドツアラーだ。

 ロワール川の流れと河岸段丘ならではのパラのミックな眺望、緩やかな丘陵、そして小さな村々と、自転車はフランスの忘れられた魅力を発見する最高の手段でもある。そんな記憶に残る週末自体が、ヴィンテージな時間でもある。いい時間を過ごす必要は今や、多くの人々に意識されているのだ。

ロワールの欠かせない名物といえばシャトー。3つのコースとも、ゴールはソミュール城。

神父、警官、兵士、郵便配達夫など、職業別コスプレは定番。やはりいた、パン屋さん。

人それぞれのヴィンテージ・スタイル

子供から大人までレトロ・シックに装いさえすれば、あらゆる世代で楽しめるのがAVVというイベントの特徴。

今や廃れたが、フランスでは昔、街々を巡ってスピーカー音声によって広告を行う街宣車が盛んだった。

こんなにも背の高い2階建てフレームのトールバイクだからこそ、からし色のジャケットと靴下がひときわ際立つ。

ヴィンテージ・ファッション勝手にチェック!

今年多かったのは、1910年代風のスタイル。ニット・ジャージにゴーグル、そして自転車はスワローハンドルに大ぶりのライト。ホイールも当然、スチールやアルミではない。

ヴィンテージなコーデはハッキリした色を組み合わせるとかハデ色を沢山採り入れるだけじゃない。黒と赤のツートンに絞って、コサージュや頭のバンダナでまとめた好例。

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