2018.07.30

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

フランス一、エレガントな週末「Chantilly ARTS & ELE...

クルマ×ファッションショー、アート、ギャラリーのイベント「シャンティイ アート&エレガンス」。フランス発のコンクール・デレガンスとして定着したこのイベントをダイジェストで振り返る。

ヒストリック・カーをツマミに、さて一献。

シャトーの脇の庭には、各クラブが集まり、芝の上でピクニックの優雅さを競うミーティングが。オースチン・ヒーレー3000Mk-Ⅱ。

アストン・マーチンのオーナーとおぼしき紳士二人のピクニック。バスケットからワインを取り出しつつ、葉巻も楽しんでいた。

クルマと贅沢に過ごす至高のピクニック

 日本では近年、サーキットでのヒストリック・イベントが大いに盛り上がりを見せているが、速く走らせるだけが旧いクルマの楽しみ方のすべてでないのは周知の通り。

 芝の上に停めてピクニックを楽しむ、それだけでも素晴らしい時間を過ごせる訳だが、このシンプルな行為を、ありとあらゆるジャンルのアート・オブ・ライフによって磨いて洗練し、社交的なミーティングとして高めたコンクール・デレガンスが、今もフランスで行なわれている。それがこの「Chantilly ARTS & ELEGANCE(シャンティイ アート&エレガンス)」だ。

 元々「コンクール・デレガンス」とは語源ごとフランス起源で、貴族が馬車のしつらえの豪華さ、優雅さを競い合っていた。それが’10〜’30年代のアール・デコ期には自動車という新しいツールの優雅さを評価し合うコンクールとして最盛期を迎えた。

 戦後、コンクール・デレガンスの中心地はアメリカ、ペブルビーチへと移っていった訳だが、2014年からフランスにコンクール・デレガンス復活をさせたのがル・マン・クラシック開催でもお馴染み、ピーター・オートとリシャール・ミルだ。

 会期はたった一日、9月初旬の日曜日のみ。毎年必ず巡ってくるとはいえ、この儚さこそが、シャンティイのコンクール・デレガンスを特別なものにしている。

ド・フランスでランチア・ストラトスをリードしながらリタイア。

コンクール受賞者は、観客の前で噴水広場を数周して、表彰セレモニーでお立ち台に上がらなければならない。オーナーには軽く緊張が走る。

1966年にジュネーブ・モーターショーに展示されたミウラP400、2台目の量産前プロト。後の量産型より短く、より低いことがわかる。

シャトーのあちこちで壮麗なバトルが!

1955年にメルセデスはレース活動から撤退するが、翌年にスターリング・モスがプライベーターとしてツール・ド・フランスに300SLで参加、2位に食い込む活躍を見せた。

 9月初旬の日曜日という欧州大陸の端境期にあたる季節柄やタイミングもさることながら、舞台となるドメーヌ・ドゥ・シャンティイはフランス王家の傍系であるコンデ公の元居城という申し分なく由緒正しい場所。フランスの庭園様式を代表する17世紀の建築家ル・ノートルの設計した幾何学式庭園の中に、博物館級のヒストリック・カーや戦前のカロッツェリアによるワンオフのコーチワークが、数十台も整然と並ぶ様は、さすがに壮観だ。

 城の敷地内に停められるのはコンクール車両に加え、参加クラブのオーナー車両のみだが、数百台ものヒストリック・カーが芝の上に会し、エレガントに着飾った人々が各々、散歩やピクニック、そして大階段のある噴水広場を舞台に行われるショー・プログラムを観て楽しんでいる。クルマ以外にも、運河には蒸気機関の船の体験試乗があるし、奥の庭ではモンゴルフィエ気球に乗れたりもする。

 シャンティイでは目で楽しむものだけではない。コンクール会場の周囲には自動車メーカーやファッション、シャンバンのブランド展示ブースが配され、触ったり体験できるものも多い。

 そこからさらに、敷地内の芝地では、ヒストリック・カーのクラブが集まり、仲間内でピクニックの輪を開いている。コンクール車両とは別に、クラブごとにピクニックの優雅さをも競い合う対象となっているのだ。

 シャンティイのイベントとしての成功は、開催回ごとに特定のいち自動車メーカーをテーマに捉えたり、自動車メーカー自体が後援スポンサーなっている他のコンクール・デレガンスと異なり、フランス流のアート・オブ・ライフを求心力として過去・未来の・現在の最高のものが集まる場となったことに帰せられる。

 取材前年は、エアバスのビジネスジェット部門までブースを構えたほどだ。マーケティング色の強いブランディングは「エクスクルーシブ」、つまり、排外的であることをやたら強調しがちだが、貴族文化の枠といえるものは、つねづね開放的だった。レースと同様、競い合うことは相手を称えることでもあるのだから。

こちらはランボルギーニの向かいに陣取っていたフェラーリ・クラブで、ごく初期の250GTの優雅なロードカーが集まり、その様々なバリエーションがため息を誘っていた。

印象派の絵のような光の中繰り広げられるピクニック

クラブ・スペースの饒舌さと賑わい

スポーツカー・メーカーであるアストンマーチンが生み出した4ドア・サルーンとして’70年代に話題になったラゴンダ。それにしてもシャトーがこの上なく似合う一台だ。

ル・ノートル設計の庭園といえば、人工の大運河が付きもの。この日、運河の上で行われた蒸気機関動力のボートは実際に来訪者を乗せることで、多くの人たちを楽しませた。

一日だけだからこそ美しい優雅な日曜

ピクニックに興じるロールス・ロイス・クラブのある家族。9月初頭のバカンス・シーズン明けとあって、夏の終わりを惜しむようにピクニックを楽しむ人が多かった。

ベルトーネによる2+2の3ドアハッチバックで、ミウラと同じV12・3.9ℓをフロントに積むランボルギーニ・エスパーダ。クォーターウインドウの開き方に注目だ。

シャトーの芝の上で過ごす優雅なピクニック・タイム

芝の上に流れる歴史と至福の時間

ツーリング・レースでBMWの強さ・過激さを印象づけたのは1972年式3.0CSL。この過激な外観でグループ2マシンなのだから、後のエスカレートぶりがわかるというもの。

 シャンティイには確かにドレスコードが存在する。「カントリーでのシックな日曜」というコンセプトに合わせ、スポーティ過ぎない、しかしリラックスした装いが求められる。例として男性はブレザーやジャケット&スラックスといったスマートカジュアル、女性は帽子の着用が義務ではないが望ましい、といった辺りだ。

 2016年のコンクールで際立った部門テーマは、現FIA会長であるジャン・トッドのキャリア50周年。彼がコ・ドライバーを務めWRC初年度を制したアルピーヌA110からル・マン24時間で総合優勝したプジョー905、F1でシューマッハとともにフェラーリを再びタイトルに導いたF2000が興を添えた。またフェラーリの有力プライベーター・チームとして活躍したシャルル・ポッジのレース車両や、ツール・ド・フランスを盛り上げたBMW 3.0CSLなど、やはり地元フランスに馴染みの深いクルマが多い。

 蕩尽の限りを尽くしたような戦前のカロッツェリア・ボディをまとった高級車と、各時代のレーシングカーが隣あって並ぶ様は、圧巻だ。それぞれの時代を代表する最高のテクノロジーや叡知を注ぎ込んだマシンが一同に会する機会だからこそ、冠スポンサーは超高級時計として知られるリシャール・ミルが務めている。

 フランスまでたった一日のためだけに。それは無駄に思えるかもしれないが、他の何にも代え難い経験と時間として、一度足を運ぶ価値があるイベントなのだ。

噴水広場の手前で、表彰セレモニでの出番を持つ1948年式ブリストル401ツーリング(手前)。自走で辿り着けないと失格なのだ。

リシャール・ミルのサロン前。顧客VIPやファミリーと呼ばれる関係者が集うところで、フェラーリ250GTカルフォルニアが迎えてくれた。

カメラ&テキスト:Kazuhiro Nanyo

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