2018.07.12

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"観る"ことを巡る不思議な冒険「ANTIQ-PHOTO.COM」

 店名から想像するに、旧いカメラのショップであることはまちがいない。でも既知のカメラショップをイメージしていると、内容的に気持ちよく裏切られることになる。

 というのも、ここ「ANTIQ-PHOTO.COM(アンティーク・フォト・ポワン・コム)」では、旧いカメラも取り扱ってはいるが、ライカ判以降のフィルムカメラは少数派に過ぎない。

 店内に一歩踏み込めば、フィルムによるカメラが、写真の歴史の中では後半部分の、あくまでいちパートに過ぎない時代に属することが、一瞬にして理解されるだろう。

 「写真術」と日本語の語感でいうと趣味かテクニックの一種のようだが、「フォトグラフィー」というフランス語の範囲では、写真技術は科学の一分野として発達してきた経緯がある。よって写真に関する旧い道具を扱う店として、アンティーク・フォト・ポワン・コムには、ライカやローライもあるが、むしろそれ以前のガラス板の写真乾板や湿板、果ては銀板写真(つまりはダゲレオタイプ)の時代にまで遡って、より広義の銀塩写真に関わるすべてが網羅されているのだ。

視覚の森に迷い込む心地よさ

店内には使い方どころか、何モノかすら不明なアイテムも少なくない。ゆえに店主のセバスチャン・ルマニャン氏の解説に感嘆することしきり。氏の手の中にあり、ガラス製のステレオ写真乾板に注目。その描写は超シャープだ。

 ただ、もしかしたらこの言い方も正しくない。

 カメラとは元々「小部屋」という意味で、人工的に光を遮った小さい箱のこと。感光の仕組みを必ずしも備えてはいないが、イメージを見せるための小箱、つまりカレイドスコープ(万華鏡)やズートロープ(原初のアニメーション)、あるいはフィルム以前のステレオスコープも、多数在庫されている。

 左右を僅かにずらした2枚1組の写真を除く込むと、イメージが浮き上がって見える仕組みが、ガラス乾板時代の昔から人々を楽しませていたのだ。

見たことがなくても懐かしい写真道具たち

写真乾板や湿板の時代にも、左右を少しだけ距離をズラした、2枚一組のステレオスコープ画像は盛んだった。1920年以前のステレオ写真も、カラーを含めて大量にストックしている。

1895年のマゾ製「ル・シクリスト」。感度の低い感光材しかない時代に革新的な、コンパクトで手持ちすら可能だった蛇腹式カメラ。レンズにシャッターとも付いていた。9×18cm判。

覗く先に違う時代が広がっている感覚

ステレオスコープを覗き込むと建物が浮き出てくる。ついに歓声が上がる瞬間。後のフィルム時代のステレオ写真よりも、ガラス板がソリッドで描写がシャープな分、効果もはっきりしている。

 これらは19世紀後半の「こどもの科学」的なおもちゃという側面もあったかもしれないが、この店のラインナップは19世紀の科学関連の測定機器も対象としている。釣り鐘状のガラスケースを備え、内部を真空にすることによって観察を可能にした「ポンプ・ア・スーヴィッド(真空ポンプ)」といった奇妙な道具たちだ。

 この見事なコレクションの主は、セバスチャン・ルマニャン氏。どうして彼は、こうした忘れ去られた旧い銀塩写真の道具というよりも、その世界そのものに注目したのだろう?

「元々、フランスでは老舗とされる通信社のアーカイブ部門に勤めていたんです。そこがフィルム以前の旧い画像の、凄いストックを持っていて、仕事を通じてイメージの世界に魅せられて、蚤の市で少しずつその時代の写真道具を買い集めていたら、いつの間にかこちらの世界に飲み込まれたんです(笑)」

科学の不思議さに魅入られる

こちらゾートロープといわれる。回転させた画像をスリットからのぞいてシークエンスが切り替わることで、動画に見せる仕組み。中心の回転部分の程度や、円周状に入れるシークエンスの絵が必要になるが、ルマニャン氏は抜け目なく揃えている。

写真のみならず旧いビジュアル機器や科学実験の道具に、幅広くディープにフォーカスした店内。博物館級のヴィンテージすら並んでいる。

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