2018.06.14

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"撮る楽しみ"に特化した珠玉の実践機が並ぶ店「ANTIQUE CAMERAS」

 8区といえばパリの中心でも特別にリッチなエリア。フランスの大統領府エリゼ官と隣り合って、英・米・日の大使館が並び、さらにプレステージ性の高いブランドのショップが延々とひしめくフォブール・サントノレ通りは、パリどころか世界の中心とでもいいたげな、いわゆる「コテコテにゴージャスなパリ」だ。

 ところが、通りひとつ変わればガラリと雰囲気が変わるものパリの特徴で、フォブール・サントノレと直角に交わるミロメニル通りは昔ながらの商店街の面影を残す通り。この絶好の立地に、時には目を疑うほどの良質のヴィンテージ・カメラが並ぶショップが「アンティーク・カメラ」だ。

 決して広くはない12畳ほどの店舗に、所狭しという量ではないながら、じつにバランスのとれたセレクトで35mm判やブローニー判を中心に、4×5をjはじめとする大判まで、ありとあらゆるフィルムカメラが揃っている。定番かつ王道の歴史的定番モデルはもちろん、フランスのライカ・コピーであるフォカやミノックスなど、少しクセありのモデルも少なくない。

NIKONOS V/初代ニコノスはフランスのカリプソ社をニコンが買い取って成立した経緯があるので、別物となった4世代目以降もフランスでニコノスの評価は高い。実際に使う前提で、アンティーク・カメラでは最終世代のニコノスVがお勧めという。視度補正とファンダースクリーンを選ぶための装置など、ニコンの品揃えは充実している。

 ところでフランスでは写真の原理はニセフォール・ニエブスが発見したのと同様、リュミエール兄弟が映画を発明したことも周知の事実。というわけで、ムービーカメラの一角も充実している。ベル&ハウエルのようなアメリカの名品は元より、フランスのエクレールやスウェーデンのMCSなどの極上の希少品が並んでいるのだ。

 さらに恐ろしいことに、写真用カメラでもムービーカメラでも、店主のアメザル氏のポリシー(趣味?)によって、できるだけ当時のアクセサリーの類が揃えられており、まさかと思うようなカルトなモノも在庫されていたりする。例えばコンタックスのファンには人気のステレオレンズ、ステレオターが、スプリットプリズムやファインダーとキチンとセットで箱ごと出てきたりする。

ZEISS IKON SW/フランス人は単なる旧いモノ好きというより、必要な点だけキープコンセプトであれば、むしろ新しいモノを進んで採り入れる。コシナ製のツァイス・イコンSWも近頃人気の機種。ブラックボディにサイドグリップ、フォトトレンダーのヘリアー15mm/F4.5、15mmファインダーと水準器がすべて箱付きで、1400ユーロ。

希少なアクセのフル装備状態に興奮!

ZEISS IKON Contax Ⅲa & STEREOTAR C/名作ステレオ・システムの極上品。レンズ後端は左右スプリッター付きで、前端は被写体の距離に応じて替えるコンバージョンシステム。遠い被写体にはステレオプリズムと垂直配置の距離計ファインダーを、近接撮影には20/30/50cm用のレンズと近接用の距離計を装着。遠近2種のオプションが欠品なく揃う。ボディ450ユーロ、ステレオター1500ユーロ。

写真黎明期のカルトなカメラ

蛇腹の大判機はカメラや写真機より、単に部屋や小箱のニュアンスで「シャンブル(英語のチャンバー)」と呼ばれることも多い。レンズ先端に注目。これがシャッターだ。

 「店として始めたのは12年前くらい。1999年からかな。最初はフィルム以前のカメラ、つまり感光判の機器も扱っていましたね。でも、やはりもっと気軽に撮れるといったら変ですが、いまでもちゃんと使えるカメラの方が求められていることにきづいたんですよ」と、アメザル氏はいう。

 要は使って撮れることが前提なので動作機能は万全を期しているし、複数パーツで構成されるアクセサリーに関しては、欠品パーツや欠けがあるものはなるべく仕入れず、可能な限りオリジナルに近い状態で入っている。とはいえ機能パーツに絞っているわけでもないのが、こういう本物の好き者がやっているお店の凄いところだ。非機能パーツ、つまり元箱やトリセツなど、コレクター心を満足させるアイテムも豊富。1991年に登場した1,000ピース限定のミノックスのプラチナ仕様が、まっさらの状態で揃っていた。

 しかし圧巻は、動態保存の難しい8mmや16mmのムービーカメラが、映写機も含め完動品として並べられている点だろう。フランスでは、映画は別名「(音楽、彫刻、劇、絵画、舞踏、文学と並んで)7つめのアート」と呼ばれ、極めて生活や実践に近い位置で根付いていたことが、窺い知れる。映画監督が撮りたい絵を目測するのに使う、視野ファインダーのようなアイテムも多数、在庫されている。

露光済みのガラス製写真乾板。リュミエール兄弟社によるカラー画像用のオートクロームだ。このパッケージは包装紙ではなく、納品送付に伴う連絡表といった体裁。現像を済ませたガストン・プレッシー某による、6×13判の正像だ。

手荷物と出かけたくなる、ムービーカメラ

ムービーに特別な愛着があるお国柄

’50年代半ばのスイス製16mmムービーカメラとして名高い、ボレックスH16レフレックス。ピストルグリップ付き。アルミボディに本革を張ったボディの質感も素晴らしい。

 アメザル氏いわく、品揃えのバランスはとくに意識しているというより、自然と「よく映るカメラ」を揃えていった結果なのだという。「ライカやニコンが店としてもお客さんの要望でも増えていくのはそういうこと。よく映るし、修理不能にまで壊れた個体に出会ったこともないしね」。ちなみにフランスでは、レンジファインダーの原理は、大砲術の実践と開発によって、着弾点を計測するために発達したものだったとか。

 レンジファインダーでは後期型のバルナック・ライカや歴代Mシリーズを中心に、一部のコンタックスやフォクトレンダー。一眼レフはやっぱりニコン、F2以降からFM2、ニコマート。中判ではハッセルブラッド、ローライフレックス、あるいはマミヤの645。

 ところ変わればヴィンテージの質も多少は変わるものだが、このお店の守備範囲広さと深さは、小気味いい。日本の旧いカメラ好き、しかも撮る派には、かなりツボにハマる内容といえる。

パリだけに仏製コピーライカ「FOCA」もたくさん!

有名なライカコピーのひとつ、フォカも地元だけに充実の品揃え。左はPF2Bのモデル3で、オプラー3.5cm/F3.5を装備、何と元箱付300ユーロ。右はレバー式巻き上げを採用したPF3Lで、レンズは沈胴式5cm/F1.9付き。

「中判カメラもヴンテージが揃う」

1931年前後、ベビーローライの初号機としては非常に程度のよい一台。加えてオリジナルの革ケースとしてレンズカバーも付いた状態だ。レンズはテッサー60mm/F3.5を装着。950ユーロ。

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