2018.07.24

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

異色、しかし性格で豊富な知識のスタッフが揃うアンティーク時計店「ROMAIN R...

01「本物のミリタリー時計の魅力を伝える」

 時計店がひしめくパリで、「ROMAIN REA(ロマン・レア)」は異色のアンティーク時計店だ。時計にもエレガンスやある種のフォーマルさを求める傾向が強く、素材の高貴さにこだわる、つまりゴールドなど貴金属ケースが重宝しがちなパリの中で、ここのコレクションはSS比率が異様に高い。要はミリタリー時計やスポーツ時計に関して、パリで特別に強い店といえば、ココだ。

 オーナーのロマン・レア氏はフランスの時計業界では唯一といっていい、鑑定士連合の鑑定士資格を有しており、アールキュリアルの時計部門アドバイザーをも勤めている。いわばミリタリー時計やクロノグラフを中心に、「ギアとしての価値」が問われる時計のエキスパートである。

 5歳のときから両親にプレゼントされたおもちゃの腕時計に魅せられたレア氏は、やがてパリ中の蚤の市で時計を買っては集める少年になる。まだ時計のブームが始まる何年も前の話だ。18歳頃には、有名なサープラスショップで、ミリタリー時計専門コーナーを持つほどだった。そして22歳から自分のコレクションをクリニャンクールの蚤の市で販売し始め、時計マニアの間でますます知られていく。

パリいち、男の子っぽい時計をセレクト

 こうして彼は1990年代後半より、左岸で自らのブティックを開いた。以来、ミリタリー時計やスポーツ時計の希少性の高いレアピースといえば、右に出るもののいない専門家であり続けている。

 彼を専門家たらしめる要素は、じつは時計だけではない。時計販売を始めるのと同時に、彼は航空学を修めており、空軍でナビゲーターを務めた時期すらあった。

 「軍隊に仕入れのコネを作りに行ったわけじゃない」

と苦笑する彼だが、ミリタリー時計の世界を深く掘り下げるのに、その経験が役に立っていることは疑いない。

フランスでミリタリー時計の随一の専門家として知られるロマン・レア氏。航空学を修めた後に空軍で航空士だった経験ももつ、異色の時計エキスパートだ。そんな氏の主催するショップでは、革と木を基調とした落ち着いた内装の店内となっている。

武器としての凄み漂うミリタリー時計

1954 Breguet Type 20/
フランス空軍に納品されたブレゲのタイプ20クロノグラフ。文字盤にロゴこそないが、裏蓋に’FGの刻印が、実際に空軍の制式として使われていた痕跡だ。’50年代は性能要望書の中に、クロノグラフのフライバック機能を仏軍が求めていたことが判明している。

ヴィンテージ時計の王道、ロレックス

1958 ROLEX Pre-Daytona ref.7238/
こちらは現役当時、ペルー空軍に納められたというミリタリー時計で、ベゼルにエンジンターンこそ刻まれていないものの、タキメーター入りの黒文字盤デザインや、プッシュボタンの形状など、初期のデイトナに限りなく近い内容がうかがえる。手巻。

02「年代物のオメガが静かに人気」

 この店ではオーナーのロマン・レア氏だけでなく、店長以下全員の知識が正確で豊富だ。サブマリーナのリューズの大小、リューズガードの有無、6時位置のエクスクラメーション・インデックス・メイド・イン・スイスのレター位置……などなど。

 あるいは素性の正しいミリタリー時計なら、その来歴についても詳しく教えてくれる。ムーブメントを見たい場合は、嵌め込みの裏蓋であれば早速、器用に外してくれるし、「ほら、天輪の径がすごく大きいでしょう?」などと言いながら、一緒になってムーブメントを見つめている。つまりは時計好きなのだ。

1940 OMEGA Chronographe 33.3/
オメガのクロノグラフといえばスピードマスターが有名だが、それ以前の佳作にも近年は注目が集まっている。これは1940年代の精緻な名作キャリバーであるcal.33.3を搭載したクロノグラフで、作動はコラムホイール。この時代特有のオリーブ型プッシュボタンと相まって、えもいわれぬ感触を楽しめる。

クロノグラフが冒険者の代名詞だった時代

 ラインナップ中で、やはり多いのはロレックス。時期にもよるが、取り扱われる本数ベースでいけば、1/3から半分はロレックスだそうだ。その圧倒的な強さは、先ほどのサブマリーナで述べたようなディティールの微妙な変化が興味を引くこと、映画スターたちが使ったというストーリー性、そして頑強無比で正確に時を刻み続ける、その性能にある。

 ロレックスがもはやひとつのジャンルとして確立されている一方で高い人気を誇る単独モデルは、オメガのスピードマスターや、ブライトニングのナビタイマー。とくにオメガはスピードマスター以前のクロノグラフ・キャリバー、cal.33/3やcal.28/9、cal.320などにも、徐々に静かな注目が集まっているそうだ。これは新作時計の世界がハイビート競争に入ったのとは逆に、ロービートが見直されている裏返しかもしれない。

 実際、そうしたムーブメントが積まれた’60年代から’30年代半ばへと遡る時代は、手巻クロノグラフ・ムーブメントの全盛期でもある。また各メーカーの傑作キャリバーを、つねに高値安定の希少モデルよりはアクセスしやすい価格で手に入れられる。ことが多い。しかもヴィンテージな外観の旧いクロノグラフは、意外と合わせられる服を選ばない利点もある。

1940 ANGELUS/
アンジェリュスはパイロット用のクロノグラフを数多く供給したメーカー。オリーブ型の細いプッシュボタン、離れ目の積算計など、この時代の特徴がよく出ている。日焼けした文字盤もいい味だ。ちなみにロマン・レアの修理メンテで、文字盤だけは手をつけていないそうだ。

時計のフィールドは街以外にも

 機械が旧い点が心配の種と思われるだろうが、ロマン・レアには3人の時計師が常駐しており、彼らのチェックと修理レストアを経てから時計は店頭に並んでいる。激しい状況で使われた時計を扱っているからこそ、メンテ修理にも相応しい体制を敷いているのだ。

 ちなみにミリタリーものは腕時計に留まらず、ランゲやユリス・ナルダンの、マリン。クロノメーターまで置かれている。取材中に時計師の一人は、見事に前者のデタント脱進機を動かして見せてくれた。本物のミリタリー時計を扱う店は、ノウハウも本物だった。

1950 UNIVERSAL GENEVE Compas ‘Etanche’/
ユニバーサルは多機能クロノグラフで名を馳せた老舗。このモデルはパチンとクリップをして留まる裏蓋を採用し「エタンシェ」と呼ばれた。丸く大きいプッシュボタンにも目を奪われるが、この時代はそもそもケース径が小さいことを思い出そう。

Text:Kazuhiro Nanyo

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