2018.08.10

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

レア車専科、パリの秘密ガレージ「Auto drome」

 奇妙な話だが、フランスのお店はすべてが不特定多数に向けて門戸を開け放っている店ではない。特別に貴重なヴィンテージを扱うお店ならなおさらだ。決して一見さんお断りとか招待状が必要なワケではないが、客にもお店にも「お互いの時間が貴重」であるがゆえ、入店には予約という多少の準備が望ましいケースがある。

 これは客を選ぶというより、パリは世界中の富が集まる街ゆえ、見ず知らずの人を入れるには相応のリスクを伴う事実がある。「遠くから折角来たのに」でなく、「遠くから来るのにロクに準備しない人」は、入れる価値がそもそもないと判断されるのだ。

 ただし、その扉を一度くぐると途方もないディープな世界が広がっている。ここに紹介する「Auto drome(オートドローム)」の、パリの秘密倉庫もそのひとつだ。

1966 De Tomaso Mangusta/
デ・トマソ・マングスタは数あるジウジアーロのスーパーカー・デザイン作品の中でも、完成度の高さで知られる一台。左右分割のリアボンネットフードとトランクスペース、美しくエッジの立ったプロポーションなど、特異なディティールが際立つ。約400台が生産されたうちの一台で、価格は12万ユーロとなる(取材当時)。

 オートドロームは単なるヒストリックカーではなく「ユニーク・ピース」、つまり一点モノのクルマや極めてレアなモデルに特化した、欧州コレクターの間では知る人ぞ知る店だ。

 あまりに特別な来歴を持つクルマのオーナーは売買にあたっても表に出たがらないもので、フランスのそうしたオーナーが真っ先に頼る先が、オートドロームなのだ。逆にいえば、そうしたオーナーやコミュニティから、セレクションの上でもサービスの質の点でも、信頼を勝ち得ているお店というわけだ。

1964 CD Panhard LM64/
1964年のル・マンを走ったCDパナールそのもの。2台あるうちのシャシーナンバー64/1。究極の空力ボディでCd値によるドラッグ係数はたった0.12、空冷2気筒848ccのエンジンで250km/hにまで達した。ル・マン後はミシュランがテスト用に引き取り、ワンオーナーを経てオートドロームへやって来た。

 同店は20年前からランボルギーニを中心に扱い、1999年よりパガーニのフランス代理店でもある。本拠地のカンヌではショールームを構え、南仏という土地柄を反映して高年式のスーパーカーをメインとする一方で、海外の顧客も寄りやすいパリでは、コレクター向けの希少性の高いヒストリックカーばかりを在庫している。

 ランボルギーニ・プレグンタや、1964年のル・マン出場車のCDパナール。デトマソのプレグンタやロッド・スチュワートが新車で買ったカウンタック…。こうしたクルマが並ぶ秘密のガレージへのアクセスは無論、予約が必要だ。

 「うちに来てくれる顧客は"このクルマ"という名指しだよ。ずっとこのまま手元にあってもいいかと思えるような(笑)、自分たちが好きで扱っているクルマしか置いてないから、売り急いでもないしね」

と、ネルド・レヴィ氏はいう。

「ランボではハラマは今、狙い目だね」

1973 Lamborghini Jarama/
ランボルギーニ・ハラマは350GT、400GTの後続として’70年代に半ばにかけて販売された2+2クーペ。総生産台数は300台強といわれ、今や十二分に希少車。エンジンは4LのV12・24Vを搭載。ショートホイールベースによる操作性よさ、ガンディーニよるデザイン、4人乗りの使い勝手よさでコアなファンが多い一台。

 オートドロームを営むのはネルド、クロード、ミシェルというレヴィ家の3人兄弟。じつは前者2人は建築家で、ミシェルは電気工学エンジニアという経歴を持つ。家族経営とはいえ、クルマ好きの自営業3人の趣味が高じて始まった店で、扱うクルマの趣味性の高さが担保されているのは、この辺りの事情もあるだろう。

 「+2クーペで実用的、しかも走りも楽しいのにまだ5万ユーロぐらい。ハラマはランボルギーニの中では今、狙い目だね」

と、V12ランボルギーニはSVJを含めすべて乗り継いだネルド氏はいう。

 「パリにもヒストリック部門のショールームを開きたいと思っているんだ。セキュリティの問題? わかっている人には凄い価値のあるクルマでも、一般の人にはそうでもないから大丈夫だよ(笑)」

 こういうことをサラリといえるバランス感覚こそが、ヴィンテージ賢人たるゆえんでもある。

ハラマのホイールベースは2,380mm。今日のハッチバック車よりも短いくらいだが、そのスペースにトランクや+2の後席を備えたスーパーカーなんて、まさしくヴィンテージ。

手元に残ってもいいクルマしか扱わない。

1964 Facel Vega Facel Ⅱ/
戦前、フランスでは、高級車メーカーが栄えたが、’60年代まで生き残った最後のフレンチ高級車がファセル・ヴェガ。ファセルⅡはクライスラーV8・6.3Lユニットを積む優雅なクーペで、当時最速といわれた225km/hを誇った。この個体はボン・ア・ムーサンという約70基しか使われなかった特殊な4速トランスミッションを搭載。

1961 Lancia Flaminia GT Touring/
ランチアの歴史を通じて、もっとも美しいクーペのひとつと評される一台がコレ、カロッツェリア・トゥーリング社の手がけたフラミニアGT。前後左右のどのアングルから眺めても、スラリと伸びた優雅なプロポーションは、同じくフラミニアを架装したサガートやピニンファリーナとは、また異なる趣。2.5LのV6ユニットを採用。

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