2018.09.06

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

実践派ヴィンテージ・サイクルの聖地。パリの老舗「bicloune」

ここ数年、パリでもレトロな自転車はブーム。ブームとは別に、日々使い込まれて自然と時間を重ねていく現在進行形のヴインテージをも作り出せる店は多くないが、確実に存在する。ここに紹介する「bicloune」はそのうちのひとつだ。

目的ではなく、結果として続いている本物のヴィンテージ

「bicloune(ビクルーヌ)」はマルコ・デ・ストッパー氏が1982年に創業。右上の自転車は19世紀末にベデルセンという発明家が橋梁をヒントに製作したフレーム形式で、なんと新車で受注生産している。

 自転車はパリでも近年もっとも見直されているアイテム。そもそもパリ市自体が10数km四方しかなく、車での移動で渋滞の恒常化したこの狭いエリアの中で、少なからぬ維持費、高騰した燃料代、停めにくい上に高い駐車料金を払うのが、合理的でないとパリ人は肌身で感じているわけだ。

 元々が自転車大国ゆえに、フランスの旧い自転車の膨大なストックは徐々に掘り返されている。多くは倉庫や地下室、田舎の納屋で眠っていた個体で、長年塩漬けになっていた類の要レストア&修理のヴィンテージ資産だ。

 一方で、修理を繰り返して長い年月を重ねてきた自転車にも、稀とはいえ、お目にかかることがある。バスティーユ地区にブティックとアトリエ、ふたつの拠点を構えているビクルーヌが扱う自転車は、そうした趣のある個体が多い。創業は1982年なので2012年の今や丸30年、パリの街中に店を構えてからは25年以上が経過している。

 新車販売も行っているが、コレクション級の自転車も数多く扱っているし、スポーツ自転車から実用車までその幅は広い。年代やスタイルに関わらず、長い年月にわたって扱い、向き合い続けてきた結果、そうなったという店構えとラインナップなのだ。

OSCAR EGG/
戦前にツール・ド・フランスを制覇したスイス人レーサーで、フレームビルダーとしても活躍したオスカー・エグ。死後も彼の考案したフレームは造られ。これは’80年代前後の一台。ザックスやユレ、マファックといった当時のコンポーネントを使いつつペダルなどはシマノに改められ、実用本位で使われていた状態のよい一台。

GUERCY by ALAN/
’70年代に一世を風靡したアラン製のアルミニウム・フレーム。フロントフォークにロゴ入りで、これはゲルシーのために作られた一台。ラグの上の青い彫りが独創的。コンポーネントはカンパニョーロ・ヌーヴォ・レコードで、スプロケットの外側ににタイヤ交換時、後輪が落ちるのを防ぐチェーンキャッチャーも付く。

30年間の間に蓄積された、ただならぬストックとノウハウ

アトリエはつねに修理やレストアを待つ自転車で満杯の状態。取材日には入口近くのいちばん目立つ場所に、ダルデンヌ製のタンデムツアラーが鎮座していた。

 ボーマルシェ通りのブティックは車両の販売がメインである一方で、デッドストックや解体パーツ、アクセサリーなどの販売、さらに修理整備やレストアを行うアトリエは、フロマン通りにある。いずれも、バスティーユ広場から歩いてアクセスできる場所だ。

 ビクルーヌの面白い点は、ヴィンテージ自転車を数多く扱いつつも、ブティックとアトリエ双方とも「街の自転車屋さん」としても機能しているところだ。つまり客はマニアに限られない。アトリエの責任者アルノーのデスク前にはひっきりなしに修理の依頼客が列をなしていて、レアなスチール・ホイールのサイズを聞き込んでいる客もいれば、家族連れが子供用のチェアを探したりもしている。

 そしてアトリエの奥では常時、3人以上のメカニックが修理やレストア作業に勤しむ。一方でブティックの店長であるクリスチャンは、自らルネ・エルスを所有するほどのエンスージャストで、今ドキのMTBから’70年代のハンドメイド・フレームまで、幅広く来客に助言を与えている。

 あらゆる時代の自転車が雑然と並ぶビクルーヌの店内は、ある意味、無時間な空間でさえある。年代に関係なく、自転車がキチンと機能して動くために、数奇者のスタッフが立ち動いているという雰囲気なのだ。

フランスの大衆車が今も自然と、そこにある

A.BOISIS/
リア側に付けられたダイナモ、ストッパー形状の凝ったキャリアなど、オリジナルの状態をキレイに保っているA.ボワジスの’60年代の街乗り自転車。フレーム接合ラグもかなり分厚く、スポーツ車とはひと味異なる頑丈な造りがみてとれる。ブレーキワイヤーの取り回しにも注目。

PEUGEOT/
こちらもオリジナルのパーツと状態を美しく保った’70年代末のプジョーのランドナー・モデル。サンプレックスの変速システム、ユニークなカタチをしたチェーンガード、エアポンプ、ラグのガルバナイズ加工なども、オリジナルのまま残されている極上の一台だ。

香り立つような、旧き佳きパリの自転車シーンが蘇る

Charles Beauty Prototype/
エディット・ピアフのアコーディオン奏者、マルク・ボネル氏がシャルルボーヴィというコンストラクターにワンオフで作らせた自転車。製作年代は1950年前後。極端なショートホイールベース、補強が施されたシートステム、ザックスの内装3段変速機など、随所に非凡な仕上がり。

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