2018.09.04

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ピエール・フルニエ氏の銘店。「ANATOMICA」

01「靴からキチンと包み込めば、自然と風采は上がるもの」

オールデンのアナトミカ別注モデルは、アッパー側のインナーを省略し、より柔らかく履きやすく仕立てているのが特長。定番のVチップやインディ・ブーツは無論、ワイズもCから揃う。

 「セレクトショップといういい方は好きじゃない」

と、アナトミカ代表のピエール・フルニエ氏はいう。一見シンプルでありながら素材や生地、造りにひと癖もふた癖もこだわったアイテムを発信する「ANATOMICA(アナトミカ)」は、地元パリはもちろん世界中に熱狂的ファンを持つ。しかも煩さ方のファッション関係者がフルニエ氏をカリスマとして仰ぎ、アナトミカ大好きと公言して憚らない。当の本人は自らの店を、スタイルやコンセプトや哲学より何より「ひとつの視点を備えたブティック」と定義する。

 フルニエ氏は1973年にまず「Globe(グローブ)」というブティックを開いた。店の側が提案するアイテムしか並べない、こだわった店は今でこそ当たり前だが当時はかなり珍しく、1979年にはさらに「Hemispheres(エミスフェール)」をオープンする。日本でも六本木や代官山にあった、あの店だ。

 洋の東西ファッション・シーンでいち時代を築いたが、1993年にビジネス・パートナーが死去し、フルニエ氏はエミスフェールを清算した。しかしその1年後、服への情熱は止みがたく、新しい店をオープンさせた。それがアナトミカというわけだ。グローブ(球体や地球のこと)やエミスフェール(半球のこと)といったスケールの大きなネーミングの後に、アナトミカ(解剖学的)という身体構造の内々を意識した名前に氏が落ち着いた事実は興味深い。

 実際、アナトミカを特徴づけるのは、ビルケンシュトック・オールデンといった靴の別注コレクションもさることながら、その販売方法とフィッティングにある。

 「フィッティングというのは『こうでなきゃいけない』という信仰じみたものが誰にでもあって、実は合っていないモノやサイズを身につけることを、驚くほど人は好みます(苦笑)。例えばオールデンの靴も、1960年代頃まではキチンとした店ならこのブラナック・デバイスを使って足を計測して、顧客の足にフィットさせたものです。ブラナック・デバイスが今や飾りになっている店もありますが、ウチではオールデンのモディファイド・ラストが生まれた1940年代と同様のフィッティングを実践しています。なぜなら、それが足の形に合ったもっとも確実なやり方だから」。

 これは決して"快適な"サイズを選ぶという話ではない。「快適性が目的なら、靴を履く必要はない」とフルニエ氏は言いきる。ヒールからボールジョイントにかけて軸を乱さないオールデンのモディファイド・ラストを、正しく履いて正しく立ち歩けるようにする、それだけの話だという。

 「何を着るか考える時、上から造り混んではだめ。着る人自身を包み込んでいけば、自然と風采よく仕上がるものなのです」。

こだわりは強く、でも空気のように軽く。

通常の靴の形だと足が圧迫され、ヒールからボールジョイントにかけて、歩行時の体重移動軸に沿わないことを、スケッチで示してみせるフルニエ氏。足に無理を強いる靴は絶対悪なのだ。

アナトミカのコレクションとアイテムは、マーケティングとして一時的に焚きつけることは一切せず、定番のアイテムがあって毎年、少しずつ生地や色を変えていく、そんなアプローチだ。

02「漂わせずして現れる、それがエスプリ」

フルニエ氏に自身のスタイルは? と聞いてみた。普段はジョン・スメドレーのタートルネックにトリムフィットのスラックスという氏だが、「私のスタイルなんてどうでもいい。すべてはエスプリの問題」と、文字通り煙に巻かれてしまった。タバコをくゆらせ、エスプリを語るこのフランス人の年季の入ったカッコよさといったら、絶対真似できない。

 体に合うものを求めるならオーダーメイドの靴はどうなのか? とフルニエ氏に尋ねたところ、氏はこう答えた。
 
「オーダーの有名店を自分でも試したが、あの世界は数足、つまりほぼ一生作り続けないと足に合うものはできません。また造り手が優れた職人でも、サイジングに関する知識があるとも限りません」

 靴以外にも、チューブラー・クオリティという前後の身頃を縫い合わせるステッチレスのTシャツや、ワンピース・ツイルと呼ばれる防水生地のコート、キャバルリー・ツイルのアウターなど、アナトミカのオリジナル・アイテムは、ミリタリー、テイラー、ワークといった男性服のあらゆるジャンルを横断していて、各々の機能性が自在にリミックスされた結果、独自のテイストを宿している。「何かしら意味のある、物語のある服が好き」とフルニエ氏は語る。

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