2018.08.27

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

アルピーヌ創業家の 秘密のガレージ。「Garage Redele」

01「パリを見下ろす、まるでアルピーヌの空中庭園」

 それはパリの街並みを見下ろす、とある建物の7階(日本でいう8階)にある。フランス車の好きな人なら、10年近く前に没したジャン・レデレーによってアルピーヌが1955年に創業され、’70年代末にルノー傘下に入ったことはご存知だろう。

 ここに紹介するコレクションは、創業一族の手元に残されたプロトタイプやレーシングプロト、そして市販モデルのごく初期的な10数台を中心とする、プライベートなコレクションだ。まさしく「アルピーヌの巣」と呼ぶにふさわしい場所ながら一般には公開されておらず、イベントやアルピーヌ・クラブの会合など、折に触れて門戸が開かれる。

 レデレー家は戦前から、ジャン・レデレーの父がルノーのワークス・レーサーのメカニックだった縁で、ノルマンディ地方のディエップにディーラーを営んでいた。母方のの家系も同じくルノー・ディーラーで、パリで数件のガレージを持っていた。こうした恵まれた環境の中で1947年、フランス最年少のルノー・ディーラーとして若いレーサーとして、ジャン・レデレーはそのキャリアをスタートさせたのだ。

 つまり「アルピーヌ」としての活動がルノーに渡った後も、家業としての自動車販売業やガレージ、駐車場経営、そしてパーツ製造業といった事業を、今もレデレー一家は行っている。

ALPINE A210/
M65(1965年ル・マン向け)からA210は9台あまりが製作されたとされる。アルピーヌはワークスカーを毎年、改良して別ボディや異なるエンジンに載せかえていたため、元はM63やM64だった個体も存在する。排気量は年を追って拡大されたが、これはゴルディーニの1,470ccを積み、ル・マンの直線で275km/hに達したという。

02「RRの理想形をフランス式に追求」

ALPINE A310 1600/
6灯のマスクが今も新鮮。クロームのバンパーやモールド、そしてルノーR16とブロック共通の1,605cc、125psのパワーユニットを与えられた、ごく初期のA310。A110の後継モデルだが、スパルタンなスポーツカーからスポーティなラグジュアリーGTへとシフトしていた。

 ジャン・レデレーはアルピーヌを興す以前、ルノー4CVで数々の国内ラリーに出走し、多くの勝利を重ねていた。そして自身のクルマを作るため、彼はイタリアにジョヴァンニ・ミケロッティを訪ね、4CVの主要コンポーネントを引き継ぎつつ、アレマーノというカロッツェリアにアルミニウムのクーペ・ボディを製作させる。

 だがその仕上がりは、軽さと美しさに欠けていた。1952年前後のことだ。そこでレデレーは当時、最新鋭の素材だったFRPを加工できるパリ近郊のカロッツェリアであった、シャップそしてジェスランの門を叩く。こうして出来上がったのが、A106だ。

こちらはウレタンバンパーへと切り替わったフェイズ2のA310。まだオリジナルのデザインに忠実な6灯マスクと、けれん味のないボディラインが保たれている。

5アルピーヌは、5(サンク)のスポーティバージョンという位置づけで、後のグループBカー、5ターボⅠやⅡまで続く最初の布石だったといえる。

03「生誕の地だからこそ見られる、数々の過渡期的モデル」

ALPINE A108 CABRIOLET/
アルピーヌ最初の市販モデル、A106に近いフロントマスクを備えながら、リアセクションはむしろA108の特徴を持つ個体。A108は2座クーペ、+2クーぺ、カブリオレと、豊富なボディバリエーションが存在するきわめて過渡期的なモデルで、これはA106とA108のまさしく中間に位置する習作的な一台といえる。

 以来、ここパリのガレージでは、ごく初期の市販モデルやプロトタイプ、レース車両の数々が仕上げられた。だが時はあたかもモータリゼーション初期。工房然としていたアルピーヌは、市販車の生産と販売、そしてフォーミュラカーとル・マン24時間耐久への挑戦という野心的なプロジェクトを抱え、工業として産業としてレデレーは事業拡大を図った。これらの巨大投資を回収するため、アルピーヌ車の生産ライセンスをブラジル、スペインやメキシコ、ブルガリアに販売していたほどだ。

 すでに重工業メーカーとして確立されていたマトラがフランス政府から支援を得ていた一方、アルピーヌが自身の市販モデルを国営企業ルノーのディーラー網として販売する合意を得たのは1968年。そしてディエップ工場の生産力を増強すべく工場が現在の姿になったのは、翌1969年のことだ。

 いわゆる「大規模メーカー」としての活動時期は長くなかったが、レースやラリー活動を通じて、本物のコンストラクターとしてアルピーヌの輝きが褪せないのは、この辺りに理由があるだろう。このコレクションには、その空気がそのまま残されている。

A108のカブリオレのリアビュー。横格子のグリルや控えめなテールフィンなど、まだリアセクションの造形は後の世代ほど洗練されていないことが分かる。

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