2018.09.27

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"見る"楽しみを巡る様々な機械。「Au vieux format」

 いわゆる「クリニャンクールの蚤の市」というのは、露天市のことではなく、パリ市内を少し出たサン・トゥアンにあるマルシェ・ドーフィーヌ、マルシェ・セルベット、マルシェ・ポール・ベールといった、複数ある常設のアンティーク・モールを指している。その中でカメラやムービーカメラを始めとする、旧い光学機械に特化したアンティーク店が、ここに紹介する「Au vieux format(オ・ヴュー・フォルマ)」だ。

 店主のアルノー・フルモン氏は元々は家具や小物をも総合的に扱うアンティーク商だったが、アマチュアの写真家だった父の影響で10数年前から旧いカメラ専門に絞って取り扱い、2008年からここマルシェ・ドーフィーヌに店を構えた。並んでいる品々の基準はただひとつ、写真や映像にまつわる機器で、電気式でなく機械式であることだ。

 そのためいちばん新しい世代のものは日本のニコンF2辺り、旧いものはそれこそ1830〜40年代の暗箱カメラまで遡る。写真術が発明されたフランスはフィルム発明以前の光学機器の宝庫だし、フルモン氏のようなスペシャリストは、時代や年代ごとの技術動向にも詳しいのだ。

イメージ再現する昔ながらの愉しみ

フルモン氏いわく、1950年代までステレオカメラの画像は距離を掴むのに有効だったことから、軍事用に発達したという。’20〜’30年代のステレオカメラや手動動力のムービーカメラが並ぶ。

 店内はおろか、通路にまでハミ出た光学機器の数々を見ていると、多くはロールフィルム時代の初期どころか、それ以前の乾板や湿板、エッチングなど、ダゲレオタイプ以来のカメラであることに気づく。ライカのMシリーズやローライの二眼レフやコンパクト、日本製一眼レフといった今でも撮影に使える定番人気のカメラもあるが、決して現代的でない使い勝手のカメラも豊富に並ぶのだ。

 「今でも、乳剤を自分で塗布して写しているマニアの方はいますよ(笑)。でも旧い機械式のカメラの使い方も変わってきていて、すべてのプロセスを昔通りにやるばかりじゃなくなってきた。例えば、絞りもない旧いレンズをデジカメに合わせるのはもちろんですが、ステレオ写真でポジフィルムのマウントは今や難しいから、カラーネガ現像からスキャンしてデジタルに変換して楽しむ方もいますし。使いこなしですね」

旧いステレオ写真の迫るような鋭さに驚く

1920年製のガリュス・ジュメル・ステレオ。これも前ページのゴーモンと同じくフランス製の6×13判を用いるステレオカメラだ。

 時代がかった使い勝手に恐れをなすのではなく、そういうものだと理解した上で自分なりの使い方に適合させる、それがフィルム以前の旧いカメラが少しずつだが見直されている理由という。

 「ウチで扱っているカメラは基本的に動作する個体ばかりです。機械式しか扱わないのもまさにそこで、多少動きが渋かったりしても少し手入れすれば、また元のように動いて機能してくれますから。多少、使い勝手にコツや時間は要るかもですが、それを楽しむのがこういうカメラに触れる楽しみのうちですし」

 カメラ本体から当時のオプションまで、使うことを前提に仕入れている点も、気が利いている。

ごく原始的な照準器とはいえ、ビューファインダー上に像が結ばれる様子には、やはり興奮させられる何かがある。

セムやフォカの品揃えがピカイチ

フランス製の6×6判二眼レフとして知られるセムフレックスの‘60年代のモデル。ほとんどはベルティオという、これまたフランス製の75mmでF3.5かF4.5レンズを装備した。

フランスのライカ・コピーで有名なフォカは、スタンダードの他に巻き上げレバー式のユニヴェルセルR、レンズ交換可能なフォカフレックス2も取り揃えていた。

オ・ヴュー・フォルマの取り扱いの中で現在もっとも旧い1830〜40年代のポリオラマ暗箱を、店主自ら操って、焦点を合わせているところ。

触れれば感じられるメカニカルな味わい

右から、20世紀初頭としてはコンパクトな木製フォールディングカメラと、家庭用の乾板写真の投影機。画像の再現は昔の家庭では一大イベントだったのだ。

スイス製で16mmムービーカメラの最高峰とされた、1970年代のパイヤール・ボレックスH16 REX-5。ケースやマガジンまで揃った完全動作品。

Text:Kazuhiro Nanyo

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