2018.07.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

和洋折衷。ヴィンテージ自転車の粋な棲み家「BICI CLASSICA」

01「大阪が誇るヴィンテージ・ロードの巣窟」

 噂を聞きつけて訪れたのは、大阪繁華街の一角にひっそりと立つ古民家。漆黒の外壁に木枠の小窓が、旧き佳き昭和の日本を思い出させてくれる。その外観を目にすれば小料理屋、和菓子屋、はたまた老舗酒屋にも見えるのだが、しかしその正体は、イタリアのヴィンテージ・ロードを展示する、自転車ギャラリーである。

 「BICI CLASSICA(ビチ・クラシカ)」――。イタリア語で"旧い自転車"を意味するそのギャラリーには、日本では簡単にお目にかかれない希少な自転車たちが、いくつも展示されているのだという。

 期待に胸を膨らませて「ごめんください」とひと言。そして設えの良い引き戸を左に押し込み、玄関をくぐれば、そこには想像をはるかに超える、不思議な空間が広がっていた。

 天板を取り払い、梁がむき出しになった伸びやかな空間。そこに飾られる美しいヴィンテージ・ロード、そしてオブジェや家具たち。すべてのモノが絶妙にシンクロし、完成された和洋折衷の空間を作り上げていた。んー、これはタダごとではない。

Cellini/
1982年に設立したブランドでコロンバスパイプ、コロンバスラグを使用する。アメリカのイタリアン(Made in Italy)フェアに展示された自転車で、作りとディテールが美しい。当時、特別な自転車のみに使用されたクロームヴェラートという仕上げが施されている。

 「ようこそ、いらっしゃいました!!」

 後ろを振り向けば、外国人!!  あぁ、噂に聞いていた同ギャラリーの店主、ルイジ・ヴェラーティ氏である。

 「ここには自転車が一番美しかった、1970年代、1980年代のクロモリ・ヴィンテージ・ロードバイクを中心に展示しています。まぁ正直にいえば全ては私のコレクションで、趣味の延長でギャラリーを開いたという感じですかね。実はこの家、築80年にもなるのですが、ギャラリーにするために全て自分で内装工事をしたんです。ミクスチャーな雰囲気が自分でも気に入っていますよ」

 さらに詳しく話を聞けば、ヴェラーティ氏の本業は建築家だという。なるほど、どおりで。常人でこの世界観を作り出すのは、なかなか難しい。ともすれば、この不思議な空間は、彼の自転車への果てしない愛、そして建築家としてのたしかな知識があってこそ完成した空間というわけである。パズルのピースをひとつずつ埋めていくように、徐々にビチ・クラシカがわかってきた……。

 そして最大に気になるのは、ルイジ・ヴェラーティという男である。プロフィールを掘り下げれば、1961年イタリア・ミラノに誕生。1975~1980年までは、アマチュア・ロードレーサーとしても活躍。その後、ミラノブレーラ国立芸術学院を卒業して1986年に来日――。ということは、すでに24年もここ日本で暮らし、建築家として活躍しているわけだ。

 「もし、ヴィンテージ・ロードの世界を知りたければ気軽にここを訪れてほしいですね。その価値を理解してくれる人がいるならば、もちろん中にはお譲りできる自転車もありますから。とにかくヴィンテージ・ロードの美しさを知ってもらえれば、それだけで本当に嬉しいです」

繊細なフレームワークは往時のイタリア工房の証

MARASTONI MARCO/
ロードバイク界から常にリスペクトを受けるイタリアの工房マラストーニは、1950~1980年代にかけて沢山のアイデアを導入したが、中でも斬新だったのは一般的にはプレスだったラグをミクロファイバーで作り始めたこと。コッピやモゼールなど多くの有名プロ選手もマラストーニでレースを走った。このモデルはマラストーニの息子の名を冠したマルコというトップモデル。

RAULER/
1980年代にジーロ・ディ・イタリアのメカニックをしていたラウレル。その後マラストーニの工房を購入して自分のブランドを起こした。このフレームはディテールを繊細に造り込んでおり、上記のマラストーニ的な雰囲気が漂う。またロサンゼルス・オリンピックにおいてイタリアチームは、このラウレルを使い100キロレースで優勝した。

古民家の雰囲気を壊すことなく、センスの良い家具を並べ和洋折衷な雰囲気を作り出すビチ・クラシカのギャラリー内。中央に置かれているのは、こちらも珍しいピナレロのKIDSロードバイクだ。

机の上に散りばめられたフレームパーツたち。よく見れば"VELATI(ヴェラーティ)"の文字が。クラシカルなデザインにこだわった、ヴェラーティ・オリジナルフレームを現在製作中。

ROSSIN/
元コルナゴのビルダーで、エディ・メルクスのフレームも作成していたロッシン。1970年代後半に独立して、自らの名を冠したブランドを設立した。こちらは1980年代終わり頃のロード。ロッシンが製作したフレームの中でも最もレベルの高い、コロンバスSLX星型パイプを採用するのが特徴だ。

ALAN/
1970年代に世界で初めてフルアルミフレームのロードバイクを作ったメーカーがALANだ。ヴィンテージ・ロードの世界でも、とても人気のあるブランドで、特に1970年代のフレームはコレクタブル・アイテムとして世界中のファンの間で珍重されている。ちなみにこちらは販売車輌。

ALAN/
こちらもALANの1970年代ヴィンテージ・ロードバイク。特筆すべきはブルーアルマイト加工が施された美しいアルミフレーム。クロモリフレームが主流の1970年代にあって、ALANのフルアルミフレームは、かなり斬新な試みだった。往時を感じることのできる由緒ある1台。

A.BIANCHI/
イタリアの老舗ビアンキと間違えられることの多い、A.ビアンキはもちろん別のブランドで、ロードバイク専門ビルダー。丁寧な作りはもちろん、イタリアン・テイストとヴィンテージな雰囲気を大いに感じられるフレームデザイン&ロゴデザインが好き者にはたまらないだろう。

02「情熱的な、ルイジ・ヴェラーティ」

アマチュア・ロードレーサーとしてイタリアで活躍していた頃のヴェラーティ氏。彼のおじいさんも自転車レーサーだったらしく、家族の影響で自然とロードレースを始めるようになったとか。

 ビチ・クラシカに置かれている希少なヴィンテージ・ロードバイクたちは、店主であるルイジ・ヴェラーティ氏がこれまでに培ってきたコネクションを使い、長い時をかけて集めてきたものである。ゆえに、彼のロードバイクに対する並々ならぬ情熱のすべては、いまこうして記している原稿では到底伝えることができないだろう。そう、この記事は彼の思いの一部を断片的に切り取っている記録に過ぎないのかもしれない。

 だからこそ、もしこの記事を読んで少しでもビチ・クラシカに興味を持ってくれたならば、ぜひとも同ギャラリーを訪れてほしい。なぜならヴィンテージ・ロードバイクを前に、ヴェラーティ氏と語り合ったならば、彼の情熱はきっとこの記事以上に伝わるはずだからである。

 そう、必ずやあなたの記憶に新たなコンテンツが刻まれると思うのだ。それほどにルイジ・ヴェラーティという男は魅力的でパッションに溢れている。

築80年の古民家前に佇むのは、ヴェラーティ氏、一番のお気に入りマラストーニ。ビビッドなグリーンのフレームが、漆黒の外壁そして旧き佳き引き戸をバックにとても映える。

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