2018.10.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

MAP CAMERAで選ぶ「ヴィンテージ Nikon」

ライカ、ハッセル、ローライなど舶来高級ヴィンテージカメラが揃い踏みのマップカメラ。しかし今回は、国産ヴィンテージカメラ、中でもニコンのレンジファインダー機、ニコンSシリーズに注目してみたい。

ニコンの歴史

 株式会社ニコンの前身である日本光学工業株式会社が、一般向けの35mm版カメラをはじめてリリースしたのが、戦後1948年。ニコンⅠと呼ばれるレンジファインダー機は、一眼レフカメラ、ニコンFが登場する1959年まで、後のM、S、S2、SP、S3、S4へと進化を遂げていく。

 マップカメラのショーウインドウにはそんな歴代のニコンが並んでいるが、中でもニコンSPは、ライカM3に匹敵する日本の銘機として、国内のみならず海外でも評価が高い。古いニッコールレンズにもファンが多く、発売当時は著名な報道写真家達が最前線でプロの道具として使用していた。

 そんなニコンの原点ともいえる、レンジファインダーカメラ、ニコンSシリーズ。その良さに是非触れていただきたい。

ニューヨークタイムズが絶賛

上:Nikon S NIKKOR-S.C(S) 50mm F1.4/
ニコンI、M、SとSシリーズで3番目に進化を遂げたモデル。画面サイズは24×34mm。ファインダーは50mm用で、巻き上げ形式はノブ。マウントはコンタックスと同じ、シャッターはライカ流の横走り布幕フォーカルプレーン(参考価格:4万9,800円)。ニッコールの50mm F1.4はニコンSの定番で、15年もの長期にわたって日本を代表したレンズだ(参考価格:1万9,800円)。

下:Nikon S2 W-NIKKOR(S) 25mm F4+Finder/
Sと似ているが、改良版ではなく新規設計モデル。ファインダー倍率は1.0の等倍。画面サイズは24×36mm。フォーカシングギア収納部が、丸みを帯びたデザインに変更されている(参考価格:4万4,800円〜)。25mmのWニッコールレンズは、1953年発売で、総生産数は2,500本。レンズに距離環がなく、ボディのギアのみでピント合わせをする唯一のレンズ(23万9,800円)。

 ※価格は取材当時のものです。

 戦艦大和に搭載された15m測距儀など、かつては精密光学兵器を製作し海軍に提供する国策会社であった日本光学工業は、第二次大戦後35㎜フォーマット・カメラを自社開発することを決定。自社のレンズや距離計、ファインダーを設計し、コンタックスのバヨネット式マウント・システムを採用するなど、独自の規格で開発を進めていく。

 フォーマットはライカやコンタックスと異なる独自のニコン・フォーマット(24×32mm)を採用。シャッターはコンタックスの垂直式金属幕の代わりに、ライカと同様の水平式の布幕を選択し、1948年にニコン1を発売することとなる。1949年には24×34mmフォーマットのニコンMへと進化。ニッコールレンズの高い性能も話題となり世界で順調に売り上げを伸ばしていった。

 当時、欧米の写真家たちは、自身のライカやコンタックスにニッコールレンズをこぞって装着し、ボディもその耐久性や耐温度性、操作系の円滑さで人気に。朝鮮戦争のほか、他のカメラが苦手とする寒冷地で大きな成果を上げていく。

 1950年にはストロボ撮影のためのシンクロ接点を装着した改良版のニコンSが登場。同年にはニコンのレンズとカメラが『NYタイムズ』に取り上げられ、『LIFE』にニッコールで撮影された写真が表紙を飾るなど、ニコンは世界的に有名になっていった。

 後継機のS2は1954年に発売。これは初代ニコンの改良版ではなく新規モデルとして開発された。ファインダーの質を上げ、フィルム画像寸法を世界標準の24×36mmに変更。シャッターの改良のほか、ボディには軽量かつ頑丈なダイキャスト製とするなど、すべてが刷新された。

上がS、下がS2。S2では巻き上げレバーと巻き戻しクランクが採用され、使い勝手が向上。1954年に衝撃デビューを果たしたライカM3から8カ月後にリリースされたS2は、Sシリーズ中では最も売れた機種となる。スナップ撮影のしやすさは、現代のカメラ以上との声が高い。

東京オリンピックモデル Nikon S3 オリンピック NIKKOR 50mm F1.4/
ニコンS3はSP発売の後、1958年にS2の後継モデルとしてリリースされた。1959年にはすでにS4がリリースされていたが、こちらは1965年9月から約2,000台が再生産された稀少モデル。レンズは新設計の50mmF1.4を装備している。1964年のオリンピック開催の際に報道関係者向けに少量生産された特別仕様モデルに因んだものらしい(価格:31万8,000円。取材当時)。

「ニコンの最上」カメラ、ニコンSP

上:Nikon SP 復刻モデル(レンズ付き)/
伝説の銘機、ニコンSPの復刻モデル。付属レンズのW-NIKKOR 35mm F1.8も合わせて復刻。カメラ本体、レンズには0001から2500までの製品番号が刻印され、69万円で発売された。S3 2000年記念モデルで得たノウハウを活かして、発売当時さながらの手作業による行程を再現した(価格:37万8,000円)。

下:Nikon SP W-NIKKOR(S) 35mm R1.8/
1957年にアメリカと日本で世界同時発表されたモデル。ふたつのファインダーを持つユニバーサルファインダーを採用。シャッタースピードは最高速が1/1000となり、セルフタイマーを取り付けるなど、当時の技術をすべてつぎ込んだ、ニコンの最上カメラ(参考価格:49万8,000円、レンズ価格:9万8,000円)。

 ※価格は取材当時のものです。

 S2で、アメリカ、ヨーロッパから高い評価を得たニコンが1957年にリリースしたモデルがニコンSPである。名前は「スペシャルプロフェッショナル」を意味し、1958年のブリュッセル万国博覧会ではニッコールレンズとともに、グランプリを授賞した銘機である。

 SPはS2とファインダーが大きく異なり、50、85、105、135mmの枠が出る、採光窓式ブライトフレームファインダーを採用。これは完全に等倍で、視差も自動補正される仕組みを持ち、広角専用のファインダーもすぐ隣に併設。28mmの視野と、その中には35mmのブライトフレームを組み込んだ。シャッターも幕速が速められ、シャッターブレーキの移動も静かになったほか、ニコン初のセルフタイマーを装着するなど、当時の技術的に可能なことにはすべて挑戦したカメラとなった。

 1958年にはS2の生産終了とともにS3を発売。その仕様はS2のリニューアル版といったところで、SPに追加された広角ファインダーがなく、視差補正もないというシンプル設計。ただ、SPでは実現できなかった大量生産を可能にし、人気のモデルとなった。

 1959年には最終S型カメラであるS4を発売、その翌年には画面をハーフサイズとし、モータードライブで秒6コマの高速撮影を可能としたS3Mを発売。 1959年には一眼レフのニコンFを発売し、主力は一眼レフとなっていく。しかし、ニコンS3は2000年に、SPは2005年に伝説の銘機として復刻され、今でもマップカメラ店頭では人気の品となっている。

レンズ交換の楽しみ

カールツァイスのコンタックス用レンズが使えるのもニコンSの楽しみ。写真左からSonnar 50mm F1.5(Contax C)が4万9,800円。Biogon 35mm F2.8(Contax C)が4万8,000円。ボディに付いている参考品は、Topogon 25mm F4(16万8,000円)。
 *厳密には距離計の連動ピッチが違うが広角系はそのまま楽しめる。

 ※価格は取材当時のものです。

望遠も銘玉が多い

装着レンズはNIKKOR-T(S) 105mm F4+FOOD、コンパクトで携行性に優れ、山歩きに最適なため「山岳ニッコール」と呼ばれた。1960年発売で数が少なく珍しい(価格:12万6,800円)。奥はNIKKOR-P(S) 85mm F2。このレンズは『LIFE』の写真家ダンカンの目にも止まった。

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