2018.09.27

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

男子の収集癖全開の夢の城。「mobili e modelli」

01「湘南に隠されたスキモノの秘密基地」

 男子は誰しも収集癖を持つ、と書いてしまうと語弊があるかもしれないので、人それぞれだとは思うと訂正するが、少なくとも小生は人一倍収集癖を持っていた。ベーゴマに始まり、面子、切手、本、レコード、バイク。親には無駄遣いするなとこっぴどく注意され続けはしたが、探していたものを見つけ手に入れたとき、それが収集箱や棚に並べられコレクションに加わった姿を眺めたときに得られる満足感は格別なものだった。

 今回お邪魔した「mobili e modelli(モビリエモデッリ)」は、その究極ともよべる姿を具現化したものだ。オーナーの小林聰さんが収集するのは、欧州製のモデルカーとHOゲージ。モデルカーでは70年代後半から90年代にかけての欧州車のものが多く、スーパーカーなどの姿は少なく日常生活に密着する市民のアシグルマ的なものがほとんどだ。これらを集めるようになった経緯は、小林さんのこれまでのルーツに隠されていた。

フランスの航空機メーカーBreguet(ブレゲー)のドュポン(二階建て)とよばれる大型の機体。マンボウのような外観ながらフランスの植民地であったアフリカ各地とのシャトル便などで使われ、キャビン仕様と貨物仕様が活躍した。

02「欧州を旅することで得た独自の感覚」

「瀕死の白鳥」という異名を持つ"232.U.1"は、おそらくフランス最後の蒸気機関車だろう。Jouef社では復刻版も販売していたが、この中期型ヴィンテージモデルは、塗装に艶があり、よりトイライクな印象を持つ。

 自動車デザインの仕事をしていた小林さんは、90年代から00年代にかけて、仕事や遊びを兼ねて足しげく欧州に通っていた。

 「イタリアを中心に何度も行きました。3か月ほど路線バスを使って旅をするようなこともありました。バスは小さな町や村もくまなく寄り、運転手さんが自宅前で止め堀の木の枝から果物をくれるようなこともあり、様々な表情や生活を知ることができました。電車やレンタカーよりも時間をかけて町を巡るのです。

 どこも日本では考えられないような古い町並みが残されていて、そこに車やモペットが溶け込んでいる風景を見ることができました。山岳都市を上り下りし、足を棒にして街中を歩いたんですよ!

 モデルカーは以前から集めていたのですが、イタリアの空気感を肌で感じることで選ぶ車種なども決まっていきました。もちろん今でも欧州に行くと帰りの荷物が重くなってしまいます」

 小林さんはイタリア、父親はドイツ、そして弟はスコットラインドやフィンランド通だと言う。すべては"血脈"である。

デザイナーという職業柄、ディテールに拘る小林さん。手先も器用で自ら手がけたモデリングも数多い。既存の模型にひと手間加えることで、より立体的なの世界観が生み出されるという。

旅先で何の気なしに購入したというポスターも、ギャラリーに飾れば雰囲気が良くなる。以前はコンクリート剥き出しだったそうだが、木材で内装をリフォームし、ぬくもりを出した。

あたかもそこに人が暮らしているかのような模型の世界

03「手に取れることで湧く親近感、ルールに縛られずに自由に楽しむ」

現役で使用されている最古のモノレール、ドイツ・ヴッパータール市の空中鉄道を再現したブリキのキット。レールも車両もブリキ板をプレスしたもので作られている。非常に細かい。

フランスの鉄道模型ブランドJouef(ジョエフ)の自動車貨物車両。もちろんヴィンテージ物。ルノーキャトルや、シトロエンDS、パナールなどを載せればより一層雰囲気が出る。

 モビリエモデッリの特徴は、陳列棚が剥き出しとなっており、並べられたものが自由に手に取れることだ。心温まる空間となっている。それに紛れて、別の存在感を放っているのがギャラリー内を廻る線路に並ぶ年代物のHOゲージだ。

 「父が鉄道模型を集めていたのでHOゲージはその影響もあります。ドイツの鉄道模型はキング・オブ・ホビーと呼ばれるほど盛んで、イタリアではマイナーな世界なのですが、そこが面白い。イタリア鉄道などは戦前のモデルが現役で活躍していることもあり、その歴史と新旧の多彩さには驚かされますよ。

 自動車も汽車も実物で集めることは難しいことです。しかしミニチュアであれば風景ごと独り占めできます。何より僕はコレクションというよりも、とっ散らかすことを楽しんでますよ」

 宝の山に囲まれて、小林さんは今日も幸せそうな笑みを浮かべる。

Preiser(プライザー)社の、リーヴァっぽいモーターボートや自転車、その自転車用ルーフキャリアなど。ミニチュア模型でのストーリーを演出するのに一役買う。

フランスの鉄道と聞くと、まずはTGVを思い浮かべることが多いと思うが、フランス国鉄で使用される一般的な車両も個性的なものが多く、国の歴史が色濃く反映されている。

卓越していた電気機関車の技術力

イタリア国鉄の電気機関車たち。
幼少の頃、電気機関車という機械そのものに憧れを持った人も多いことだろう。生い立ちや現在の状態などを紐解くうちに、大人になった今でも改めてその魅力の虜になってしまいそうだ。

フランス国鉄の電気機関車たち。
様々な年代の車両を一同に介し運行できるのは、模型ならではのことである。それぞれの時代背景で、違った研究を重ねてきた技術者達の努力をディテールから感じ取ることができる。

ヨーロッパの個性あふれる電気機関車たち

フランス 電気機関車の変遷

BB-12000型/
アイロンの愛称で知られるフランス国鉄の交流電気機関車BB-12000。1954年に登場し148両が製造された。4つのモーターを備え、最高速は120km/hに達する。客車も貨物車も牽引する活躍をした。

BB-9003、BB-9004/
B-B軸配置高性能電気機関車の試作機として開発されたBB-9003/BB-9004。BB-9004は誕生した直後の1955年3月29日に行われた試運転において、331km/hという世界最高速度記録を叩き出す実力が備わっていた。

BB-9300型/
BB-9200型の派生モデルとなるBB-9300型は、1967年から1969年の間に40両が製造されている。フランス南東部・南西部の路線などで活躍。写真モデルカラーの時代には、数両がジュネーヴ-セルベール間で国際列車TEEのカタラン・タルゴを牽引していた。

イタリア 電気機関車の変遷

E.626/
1927年に登場したE.626はイタリアで初めて直流3,000Vの電気方式に対応した機関車だ。最高速は95km/hにもなり、90年代まで現役で使用された。ギヤ比を変更し最高速度が50km/hとされた貨物用のE.625も存在する。

E.444 001~004(プロトタイプ)/
1965年から1975年まで合計117機作られたE.444の中で、最初に作られた001番から004番は試作車両だった('67年のデビュー運行車両となっている)。量産型は空気抵抗を考慮し、先頭部がやや傾斜したデザインなのに対し、これらは直線的な垂直パネルで構成されている。

E.656/
カーブを滑らかに通過するため、E.646型と同じように3つの2軸台車が2つの車体に配分されたE.656の登場は1975年。牽引力を向上させるためギヤ比が変更され、貨物用として活躍したものもある。力強いため坂の多い場所で多く使われた。現在も現役で活躍している。

楽しめるクルマが詰まっています

ガッティーナの中にはトイギャラリーのモビリエモデッリの他に、様々な車両が収まるガレージ、美味しいラヴァッツァコーヒーを飲みながら車関係を中心とした本を楽しめるブックカフェが入っており、くつろぐことができる場所とされている。

 これまで見てきたモビリエモデッリは、80年代車両をメインに取り扱っているカーショップ、ガッティーナの一角とされている。ガッティーナの代表を務める酒井悦郎氏はこう言う。

 「昭和と平成の境目で、車はガラリと変わっています。それは性能的な部分もそうですが、操る楽しさという面でも大きな違いがあるのです。ヴィンテージというにはおこがましい気がしますが、新しい車では得られない感覚があります。車は楽しいほうがいいと思うのですよ」

 並べられた車を見回すと、そばに置いてあるだけで気分がよくなり、しかも走らせることの楽しさが凝縮された良き時代のモデルばかり、酒井氏の目は確かなもの。ここはゆっくりと時間をかけて楽しみたい空間となっている。

昭和生まれの国産車もたくさん入庫されている。奥にはコンパクトホットハッチの雄、フィアット・チンクェチェントが2台も隠れている。

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