2018.08.31

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

夢の過給技術が映し出した近未来「BMW Turbo」

モーターショーに展示されるコンセプトモデルは未来を映す鏡のような役割を果たすが、一方、過去のそれは歴史の生き証人となる。現代の自動車シーンは効率の良いターボエンジンが全盛となっているが、その開祖はBMWターボという名の1台なのである。

 近年の自動車は環境性能の追求が進んだ結果、ガソリン・エンジンに関しては排気量のダウンザイジングがトレンドになっており、パワー減を補うため再びターボチャージングの技術が脚光を浴びている。

 排気ガスの流速を利用してタービンを回し吸入気を加圧するターボチャージングは、20世紀の初頭にスイスで発明され、機関車や航空機の分野で特に重宝され、熟成された経緯を持っている。自動車の分野では1960年代にアメリカのGMが初めての市販車に組み込んでいるが、実質的な成功作といえるモデルは、1973年の「BMW 2002ターボ」が初めてとされている。

 BMWは2002ターボをデビューさせる1年前、ドイツのミュンヘンで開催されていたオリンピック会場において、実験的なターボ・エンジンを搭載したコンセプトカーを発表している。それがミドシップ・レイアウトによって極限まで低められたボディに前衛的なガルウイング・ドアを備えたBMWターボ・コンセプトだった。

 のちに「BMW M1」として製品化されることになるBMWターボの近未来的なスタイリングは、フランス人デザイナーのポール・ブラックが手掛けている。フランスの自動車メーカーで経験を積んだブラックは、’50年代の中頃にメルセデスで辣腕を振るい、その後母国に戻って有名な高速鉄道であるTGVのデザインにおいても重要な役割を果たしている。

 小さな排気量から大きなパワーを搾り出せる夢のようなターボ・エンジンと、スーパーカー然としたBMWターボのスタイリングは、大いに注目を集めたのである。

自動車の技術は呼吸をするように振れ戻る

 E25というコードネームを与えられ、2台のみが製作されたBMWターボのフロアパンは、当時一斉を風靡していた2ドア・サルーンの2002のものを流用しており、エンジン搭載位置をドライバーの背後に変更している。横置きされる2リッターのターボ・エンジンも2002用の4気筒、M10をベースとしてターボチャージャーが組み合わされており、276psという当時としては夢のようなハイアウトプットを誇っていた。

 BMWとターボという組み合わせで忘れてはならないのは、高性能スポーティ・セダンである2002ターボはもちろんだが、M10ターボの発展型として開発されたM12、M13ターボ・エンジンがブラバム・チームに供給され、F1グランプリを制したことだろう。

 現在では考えられないことだが、F1用のエンジン・ブロックは生産車用がそのまま流用されていた。M12、M13エンジンは、1.5リッターという小排気量ながら、5バール程度の過給圧を得て1,000psを越える最高出力を絞り出していたのである。

 ‘80年代から’90年代一杯まで、一貫して自然吸気エンジンのリニアなレスポンスに拘り、スポーティなブランドイメージを確固たるものにしたBMWだが、自動車の技術は呼吸をするように振れ戻るものである。自らが先陣を切ったターボチャージドの世界にBMWが戻ってきた今、歴史の生き証人である"BMWターボ・コンセプト"のオレンジ色に塗られたボディは、よりいっそうの深い輝きを湛えているように見えるのである。

メーター下に組み込まれた"原初の"ブースト計。吸入気に圧力を掛けることで、効率よく大パワーを絞り出すことができた。

エンジンをドライバーの背後にミドシップすることで、低いフロントノーズを実現している。ヘッドランプは当時スーパーカーの世界で流行していたリトラクタブル・タイプとなる。

横置きされたM10ターボ・エンジンは、2リッターの排気量で276psを発揮していた。

Photo:BMW AG
Text:Takuo YOSHIDA

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