2018.08.01

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

カリフォルニアの住宅街に佇む、広大なモトクロスのミュージアム「The Early...

01「高級住宅街に佇むモータースポーツの館」

 週末ともなればモトクロスバイクを荷台に積んで、フリーウェイをデザート方向に進むフルサイズのピックアップに出くわす。

 プロからアマチュアそして子供まで、アメリカではとにかく人気のモータースポーツであるモトクロス。決して安い趣味ではないが、日本などにくらべて走れる場所が近くに多数存在する事も、人気理由の一つだ。テニスやゴルフなどのスポーツ同様、長年アメリカ人の趣味として親しまれてきたモトクロスは、マシンやライダーの奥深い歴史がある。

 ディズニーランドにもほど近いカリフォルニア州オレンジカウンティーにある街VILLA PARK。丘の上に立てられた大きな家が建ち並ぶ高級住宅街だ。ネットで検索すると、何故かこんな所にモトクロスのミュージアムがあった。

02「モトクロスだけを集めた希少な空間」

 ざっと見ただけでも相当な数のコレクションだとわかる。これだけ凄ければ日々訪れる人が多いのでは? そう思いきや、何と一般にはイベントの時しか公開していない。あくまでも自宅敷地内に制作された個人のミュージアムなのである。

 敷地の面積は4エーカー(約4,900坪)、ゴルフカートで移動しているほど広大な庭に2006年、2階建てのミュージアムを建設した。オーナーのトムは元々プロライダーで60、70年代にはケニーロバーツともスピードを競った。現在でも自転車やサーフィン、もちろんモトクロスも乗るアクティブ派のジェントルマンだ。

 1986年頃、砂漠のレース場で見かけたヴィンテージのGreevesがトムに衝撃を与えた一台。いろいろ探した末65年製Greeves250を発見し当時8歳になる息子ブラッドに「お父さん! このバイクを買って自分たちでレストアしようよ!」と促され、購入を決める。これがヴィンテージモトクロスとの初めての出会いだった。その後も数台購入しレストアを楽しみ、バイクライフを息子とともに謳歌していたが、不運にも息子がミニバイクで事故に合ってしまい、脳に障害をおってしまう。

 そんな苦難も乗り越え生活して来たトム。長年バイク関連の仕事に携わって来たが2000年に会社を売却、彼の情熱はヴィンテージモトクロスバイクのコレクションに動き始める。これだけの数のモトクロスコレクションを集めるのは至難の業だが、アメリカのみならず世界中にネットワークを張り、日々新しい情報がトムに入る様になっている。特に収集で一番苦労するのはバイクの状態だ。ダートを激しく走るため痛んでいることが多く、5人のレストアをしてくれる知人に頼んで、グッドコンディションにしてからコレクションすることにしている。

一台一台が時代の代弁者

TRIUMPH Redline frame 750cc/
1972年にトムがトラックレースに出場し、TTナショナルで初めて優勝した時のマシンをそのまま再現して製作されたトライアンフ。BMXのフレームでもおなじみのREDLINEが制作したシャーシを持っている。当時同じTTレースに出ていた友人がレストアし、今年のはじめにプレゼントとしてくれたもの。

1961 LITO 500/
昨年手に入れた50年~60年代頃(50年代はMonarkという名前)にスェーデンで制作されていたバイクLITO。FIM ワールド500ccモトクロス・ワールドチャンピオンシップでも優勝しているモデル。61年~65年で35台しか制作されていない貴重な車両で、現在では数千万円以上の価格がつけられている。

1966 MATCHLESS 500 G85CS/
HusqvarnaやBultacoなどのメーカーに対抗して制作されたコンペティションモデル。フロントハブは軽量化され、グラスファイバーやアルミのコンポーネンツが使われており、G80モデルと比較すると約19キロ軽い。この年を最後にMATCHLESSはNorton-Villiersになり、最後のスクランブラーとなった。

03「バイク自体が万国旗。増え続けるコレクション」

 2階建で開放感のある吹き抜けのミュージアムにはオフィス、作業場、ベッドルームまで設置されており、所狭しとバイクが並ぶ。1台1台に細かい説明書きがあり、壁には無数のモトクロスに関する古い写真が飾られ、かすかに流れるカントリーミュージックが印象的だった。アメリカの片田舎にあるミュージアムよりも本格的で、そこが自宅の一角だなんて事は一切忘れてしまう。

 とにかくどのバイクもレアものばかりで、ざっと紹介するだけでも19台のHusqvarna、11台のヤマハ、6台のBSA、7台のBultaco。ハーレーが制作した最初のMX、Honda、Suzuki、Kawasaki、Ducati、CZ、AJS、Maico、Norton、Monark、Montesaなどなど世界中のモトクロスバイク130台以上がピカピカの状態で保存されている。

 トムのコレクションの約8割がレストアされたバイクだが、エンブレムのステッカーやタイヤ等、当時のスペックをとことん忠実に再現している。中にはAMAなどのあらゆるレースで優勝したマシーンも含まれており普通では中々お目にかかれないバイクが目の当たりにできる。

 バイクだけにはとどまらず、ヘルメットやポスター、ジャージ、カタログ、雑誌etc…モトクロスに関するヴィンテージグッズも共に展示されており、バイクに興味が無くても60〜70年代のグッズを見ているだけでも楽しくなってしまう空間だ。

 一般公開されていないが、年に数回イベントを行うので(サイトで告知)、ゲストとして選ばれたラッキなーモトクロスファンはこれらのコレクションを見る事が可能だ。

 コレクションは現在進行形で増え続けていて、今のミュージアムの2倍も大きな建物を向かいの敷地に建設中。モトクロスレースのアナウンサーをしたり、雑誌で自らのヴィンテージバイクを紹介するなど、毎日大忙しのトムには現役レーサー時代の時と同様"リタイア"という文字は存在しない。

BULTACO

CZ

WEBCO

SUZUKI

PUCH

OSSA

Cooper

膨大なコレクションで歴史を振り返る

南カリフォルニアでバイクカルチャーの中心だった「Orange County Cycles」のヴィンテージ感あふれるジャージ。トムがレースで腕に大けが怪我をし、2年間のブランクを経て復活した際贈られたもの。他にもトムに贈呈されたジャージが多数展示されている。

ミュージアム内には小さなショップ並みの作業ができるTOM’Sガレージが併設されている。バイクはもちろんの事、趣味のマウンテンバイクのメンテナンスもここで行う。

現在でもモトクロスレースが盛んに行われている場所PERRIS。昔レース場にあったと思われる看板には 入場料大人$1.25、子供$.50と記載されている。取材当時は$10。

バイク達が第2のライフをスタートさせる場所

1976 PUCH 250cc/
オーストリアのメーカーPUCH。モペットやスクーターで有名な会社だが70年代初頭、ヨーロッパでモトクロスレースに参入。75FIMのチャンピオンシップで勝利し、76年に97台のみ250ccツインキャブマシーンを製造した。翌年はスズキやCZ、KTMなどの強豪勢と共に戦って良い成績を残した。

1975 HARLEY-DAVIDSON MX-250 PROTOTYPE/
1960年、ハーレーはイタリアのAermacchiを買収、その頃から2ストロークエンジンのモトクロスマシンをアメリカ市場に投入する事を考え始めていた。74年、イベントプローモションの為に250台制作される予定だったが65台のみの生産となった。その中の希少な一台。

アメリカンなMade in japan

1971 Suzuki TM400/
250ccと500ccのワールドチャンピオンシップで優勝したスズキ。期待されて発売されたTMだったが、ハンドリングやエンジントラブルなどを含め、一般のライダーが運転できる様なバイクではなく、様々な改造が施されるのが一般的だった。

1975 YAMAHA MX400B/
1973年二人のヤマハライダーがUSオープンクラスで優勝しヤマハの人気は上昇していた。リミテッドプロダクションのモノショックYZBを一般用に開発され、登場したMXはアメリカのオフロードマーケットのその期待に答えていく。

1968 YAMAHA 250cc DT1/
日本メーカーの欧米進撃が始まったのは60年代の終わり。オーストラリアやアメリカでテストを繰り返し67年の東京モーターショーでデビューしたDT1。価格も$580とハスク250より$400も安い設定で、若い世代をターゲットに、みるみるうちに販売を伸ばして行った。市販前の発表用だった個体で仕様も変わっている希少車だ。

1973 Honda CR125M ELSINORE/
その頃のヨーロッパ製モトクロスバイクに比べ、このエルシノアは人間工学的で、耐久性にすぐれ、ユーザーの事をよく考えて作られたバイクだった。 プラスチックやアルミニウムを使用したり、マグネシウムのエンジンケースはニュースタンダードとなり瞬く間にポピュラーなバイクになった。

Photo&Text:Yas TSUCHIYA
媒体:VINTAGE LIFE

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