2018.09.06

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

世界にココだけのNミュージアム。「Merciless Mings」

01「Nと共に生きて来た男」

 古き良き時代のアメリカ=大排気量の大きなアメ車を連想する人がほとんどではないだろうか。しかし、日本を代表するメーカーHONDAが、あのコンパクトなN600を輸出していた事実もある。

 そんな"N"に魅了された男Tim Mings。彼はロサンゼルスの郊外でN専門のショップを、十数年ほど前から営んでいる。73年の初代シビックがアメリカで販売される前までは、Nなどの4輪もバイク系ディーラーで販売されており、逆にシビックを扱うディーラーではNを取り扱わなかったそうだ。

 そんなティムの実家は、HONDAのバイクディーラー。そのこともあり、彼はNにのめり込んでいった。初めて購入したNは彼が高校生だった'79年の事。それ以来何十台ものNを乗り継ぎ、レースでクラッシュしては自分で直してきた。世界中の誰よりもNを愛するアメリカ人なのである。

 そして時は流れ、当然のことながら整備・修理できる場所が減り、行き場を失ったNオーナーの為、ティムは立ち上がった。レストアや修理を受け持つ、Nオンリーショップ「Merciless Mings」をオープンさせたのである。

02「世界中のNを救う救世主」

 あらゆる所からNに乗って現れる、若者から中年のNフリーク達。彼らがふらりと立ち寄る店がある。

 ティムの明るい人柄と気さくなトークは、お客や仲間を飽きさせない。取材時もひっきりなしにNのオーナーが出入りし、雑談が繰り広げられていた。

 HONDAに対する思いは今も昔も変わらない、何時の時代でもすばらしい車やバイクを作り続けている、だから根強いファンがアメリカには多い。

 「南カリフォルニアだけでも、今も200台以上のNが走っているし、アメリカ全土を考えると……う~ん? まだかなりの数走っているよ!」

とティム。最近の車に飽きた若者や、かつて新車で買った頃を思い出し、また乗ってみたいという人。ガレージにずっと眠っていて手がつけられなかった車両を復活させたい、というようなオーナーからのレストア依頼も多い。

 ガレージ内には所狭しと並べられたパーツの山。事故車、廃車から取ったボディーパーツはもちろんの事、当時のウイングマーク柄の箱に入っているお宝純正パーツなど、約20年かけてNのパーツを大量に集めた。

 特にエンジン関連やラバー、テールライト等は入所困難らしい。ノーマルパーツ以外にも時計などのオプションパーツも充実。ティムのガレージで最も驚いたのが、車体にナンバー1が刻まれている激レアボディーを保有していたことだ。世界にココだけのNミュージアムと言っても過言ではない。

エンジン、駆動系のパーツは単体では販売しない。理由は組み方を間違える人も多い為。オーダーがあれば、ティムが丁寧にすべてを仕上げて行く。数十年間Nに携わって来たスペシャリストの意地だ。

アメリカ各州からエンジンリビルトのオーダーが入る同店。フルレストアになると、出来上がるまでに1年の期間を要する。リペア等の予約は常にウェイティングの状態だ。

HONDA N600/
1969年(1970モデル)にホンダが初めてアメリカに輸出した車がN600。シビックがリリースされるまでの数年間USマーケットで脚光を浴びた。
このNのオーナー、ゲリー氏はもう一台のNをティムの店で現在レストア中。根っからのNマニアなのである。

ジャパニーズプロダクト in USA

1963 CYB77/
本田技術研究所が出していた「Yパーツ」と呼ばれるレース用パーツをCB77に装備したのがCYB77だ。バッテリー点火からマグネット点火となるので、いわゆるスカチューンのような見た目になっている。

TOHATSU CA1B/
'62-'64頃にアメリカにも輸入、販売されたものの1万台未満の流通量だった。ホンダの50ccバイクよりも断然に速かったが、ブレーキが弱いのが難点だった。その後、ホンダのバイクがアメリカで認められ、始め若干2年で撤退。

通学仕様の600クーペ

03「BMWよりもAZを選んだ」

HONDA AZ600/
クーペはNとは呼ばずに「AZ600」とシャーシ型式で呼ばれた。エンジンはN600Eだ。フロントバンパーはグリルの周りを覆う形状をしており、日本のZ360に比べフロント、リア共にかなり厚さが違う。大きなサイドマーカーも前後に装着されている。

 黄色いクーペが店の前に止まった。中から出て来たのは車のカラーと同色のコンバースを履いた、ちょっとオールディーズスタイルの青年。以前はBMWに乗っていたというが、ホンダ600の魅力に惚れて、今年乗り換えたばかり。

 「現行の車は乗っていても面白さを感じない。コイツに乗っていると、車を運転しているって感じが凄く伝わってくるから好きなんだ」

大学ではアートを先攻している芸術家の卵の彼。

「同じ年代の生徒は最新の車に乗りたがるけど、人とは違った車に乗りたかったし、街を走れば若い子から高齢者まで、色んな人から声をかけられる」

ティムとは親同士が仲良しで、Nに詳しいおじさんは彼にとってのスーパーマンなのだ。

ネブラスカ州のディーラーで長年眠っていた車両をebayで発見。今年の7月に届いたばかりで、納車されてから2回目の運転でゴキゲン。

シンプル イズ ベストの言葉が合うコクピット。もちろん現在の車のような機能ツールは何一つ無い。ステアリング、ウインカーレバー等がやたらと細い。

Photo & Text : Yas TSUCHIYA

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