2018.10.23

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

プライベートアイズで見つける世界の旬時計。

日本有数のヴィンテージウォッチ専門店、プライベートアイズ。世界を飛び回るオーナーの遠藤さんに、今こそ手に入れたい世界の逸品をセレクトしていただいた。

唯一無二のヴィンテージ・ロレックス

50s ROLEX OYSTER Moonface Triple Calender/
18Kイエローゴールドモデル。遊び心のあるスターインデックスが特徴的だが、通常のインデックスを備えるモデルのほうが一般的で数が多い。キャリバーNAをベースとした655で、生産期間は僅か3年ほどの、ロレックス最高傑作。参考商品。

「ここ最近、世界的にヴィンテージ・ウォッチの相場がかなり高騰しているという印象がありますね。人気は全く落ちないどころか、むしろ上がっています。アメリカやジュネーブの世界各地で行われているオークションなどを見ていても、数年前とは比べ物にならないくらい価格が上がっている腕時計がたくさんあります」

と語るのは、買付で頻繁に欧米に足を運び、彼の地の熱狂ぶりを肌で知っているプライベートアイズの遠藤さん。

「腕時計としての歴史は一世紀半近くありますが、その中で本当に完成された時代は僅か30年ほどしかないんです。それはほかの美術品と比べると非常に少ない期間ですよね。名もなきメーカーがいい腕時計を作り、世間に認められて偉大なブランドに成長していった。それが1930〜60年代という僅かな期間にその情熱と歴史が詰まっているわけですから、人気が高まり続けていくのも当然かもしれません」

 ヴィンテージ・ウォッチの人気が高まっているのは、しっかりとした理由があり、商品に魅力があるからこそ。ここにご紹介する50年代のロレックスのオイスター・パーペチュアル(防水・自動巻き)は、特にその究極の例といえる。

完成しつくされたデザインとメカニズム

50s ROLEX OYSTER CHRONOGRAPH Triple Calender "KILLY"/
1956年、オリンピックのアルペンスキー種目三冠達成を果たしたフランス人のケリー氏の名を愛称として持つ逸品。彼はその後ロレックスの広告に出演するなど、深い縁を持ち続けている。ムーブメントはバルジュー72系。参考商品。

「ロレックスで、ムーンフェイズとトリプルカレンダーを共に備えたモデルは、50年代にしか存在しません。素材はステンレスとピングゴールドとイエローゴールドの3種類がありますが、ロレックスが作ったものは合計100〜200本と言われています。このインデックスに星がついているモデルは、特に貴重です。

 またもう一つは、トリプルカレンダーのクロノグラフで、通称"キリー"と呼ばれるモデルです。60年代に活躍したアルペンスキー選手のジャン=クロード・キリーが着けていたモデルとして有名ですが、完成しつくされた非常にバランスの取れたデザインが魅力。この2つは、値段を付けられないほど貴重なものですから、おいそれと手に入れられるものではありませんが、世界に名だたる逸品として、知っていて損はないと思います」

通好みの、やや小さめなロレックス

左:50s ROLEX OYSTER Old Date Just Black/
Ref.6605。希少なブラックダイヤルで、楔形のインデックスや針の形状も50年代らしい雰囲気。このモデルに付属する50年代のオリジナル・ゴールドブレスレットは、本体同様、もしくはそれ以上の市場価値があると思われる。自動巻でケース径は36mm。180万円。

中央:50' ROLEX OYSTER YG "Honeycomb"/
セミバブルバックの14Kイエローゴールドモデル。ダイヤルはイエガーデザインで、人気が高いハニカム仕上げ。ハニカムとは英語で「蜂の巣」を意味し、これは50年代しか見られない製法。全体に雰囲気よく経年変化した個体。自動巻でケース径は34mm。42万円。

右:50s ROLEX OYSTER PERPETUAL "BOMBAY"/
ラグがツイストした独特な形状のボンベイケースを採用。この時代、各メーカーはラグのデザインに凝っており、バシェロン・コンスタンタンも似たような形状のラグの腕時計を販売していたが、ロレックスでは他に類を見ない希少なデザイン。自動巻。55万円。

 ※価格は取材当時のものです。

 現行のロレックスからヴィンテージの世界に足を踏み込もうとする人にお勧めしたいのが、50〜60年代のロレックスだという。

「40年代のバブルバック・ロレックスは、今のロレックスのイメージとはかけ離れすぎていますが、50〜60年代のロレックスは、今のロレックスと共通のイメージがあります。それでいながら、雰囲気のある文字盤のデザインや、アップライトのインデックスやロゴなど、この時代ならではの高級感があるのです」

 実際、欧米を中心にこの時代のロレックスの大きめのサイズは既に相場が上がっているという。

「36mmはここ2、3年でかなり人気が出ていますから、狙い目は34mmです。この時代は文字盤のコーティングを変えたり、ハニカム仕上げを行ったり、艶のある光沢処理を施してみたりと、様々な加工が試みられたので、個性的なデザインが多いのも特徴です。他の人とは違うロレックスを探したいという方にもお勧めできます」

パテックならではの美しさと複雑な機構

左:51' PATEK PHILIPPE R.2466 C.27 SC/
名機27SCを搭載したパテック。18Kイエローゴールドのラウンドモデル。バランスよく配置されたアップライト・アラビア・インデックスに、美しいブルースティールのセンターセコンドがデザイン・アクセントとなっている。手巻でケース径は32mm。165万円。

右:29' PATEK PHILIPPE Art-Deco Rectangular/
18Kイエローゴールドのアールデコ・レックタンギュラーモデル。ルクルトベースのキャリバー9''を搭載した角形時計は資料的にも貴重な。ケースはスナップバックで、インデックスはアップライトとプリントによる。手巻でケース径は38×22mm。170万円。

 ※価格は取材当時のものです。

 一方、パテック・フィリップで遠藤さんがお勧めしたいのがアラビア数字のモデル。

「20〜30年代、アールデコの時代には、12、3、6、9にアラビア数字が使われた文字盤のモデルが多かったのです。この文字盤は時間も見やすく、ひとつの完成形といえますが、40年代後半くらいからどんどんシンプルなテイストが好まれるようになりました。そしてアラビア・インデックスからバー・インデックスに主流が移ってしまったのです。

 左の51年のモデルは、アラビア数字を使った最後の時代のモデルです。アラビア・インデックスのモデルは、カジュアルでデザインにアソビが感じられるのが魅力です」

Oversize Chronograph

左下:40s TISSOT Screw Back Chrono/
40年代の防水ケース・クロノらしい大型クロノプッシャーや竜頭が特徴。インデックスは秒表示もあり、精巧なイメージを作り出している。キャリバーは、クロノグラフを得意とするLemania社の15を搭載。手巻でケース径は38mm。参考商品。

左中央:40s WITTNAUER 38mm Screw Back Chrono/
ウィットナーの珍しいオーバーサイズ・スクリューバック・クロノグラフ。厚みが15mm近くあり、重厚感あふれる逸品。キャリバーはVljoux-71。丸みを帯びた書体のアラビア数字のインデックスが好ましい。手巻でケース径は38mm。23万円。

左上:40s BREITLING 38mm Screw back/
スクリューバック・デザインのツーレジスター・クロノグラフ。文字盤は非常に珍しい、ローマン・ナンバー、ピンク・アップライトで、優雅な雰囲気を持つ。キャリバーはVenus-175、手巻でケース径は38mm。38万円。材質はステンレス。

右:50s UNIVERSAL "UNICOMPAX" 38mm WaterProof/
2カウンター・クロノグラフの「ユニコンパックス」。珍しいオリジナル・ブラックミラーダイヤルのウォータープルーフモデル。アップライト・インデックスは12のみがアラビア数字。スナップバック、手巻でケース径は38mm。49万8,000円。

 ※価格は取材当時のものです。

無骨な'40sの防水クロノグラフたち

左:40s ETERNA WaterProof Choronograph/
右:40s NO BRAND WaterProof Choronograph/
左は1856年に設立されたエボーシュ(ムーブメント製造会社)の「ギラー&ジルド」に端を発するエテルナの防水クロノ。共に希少なモデルで、30mm以下のサイズながらも凝ったダイヤルを持つ、非常に珍しい逸品。
キャリバーはバルジャックス69。共に参考商品。こちらの二つは珍しい30mm以下の防水クロノグラフ。ということで、38mmのTISSOと比較すると、ふたまわりほど小さい。

 値段は上がってないものの、ひそかに静かな人気を獲得している分野として、40年代前半のデザインテイストを持ったクロノグラフが挙げられる。

「ロンジン、オメガ、ユニバーサルなどのメジャーなブランドだけでなく、後にブレゲに買収されてその名が消滅してしまったレマニアや、ノーブランドのものまで、その種類は雑多です」

 それらの魅力は、武骨なケースと個性的なデザインの文字盤など、見るべき点は非常に多いという点。ハズシとして楽しむだけでなく、他の人とは異なる自分だけの一本としてこだわりを持って選ぶこともできるのだ。

「世間の評価を無視する必要はありませんが、何よりも大切なのは、自分がどれだけ思い入れを持っているか、そしてどれだけ好きかだと思います。ヴィンテージウォッチを選ぶのは、自分の趣向を決める行為でもあると思いますから、ぜひ迷うのも楽しみつつ、一期一会の出会いを大切にしていただきたいですね」

カメラ:Tsutomu SUZUKI
テキスト:Yoichi SAKAGAMI
媒体:VINTAGE LIFE 8

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