2018.09.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

50〜70年代の名車を抜群の状態にレストアしてくれる銘店。「Ferraresi」

01「オリジナルを尊重したインテリア・レストレーション」

 "レストア"とはRestorationの略で、修復や復元を意味する……ということは、今更説明するまでもないだろう。腕時計、カメラ、バイクなど機械モノに用いられるが、中でも群を抜いて複雑かつ多岐にわたるのが、クルマのレストアであることは間違いない。

 エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキ、ボディ……それらをひとつひとつの部品に至るまで分解し、洗浄、研磨、組み直しなどを行う。本当に丹念に作業したら、どれだけの時間と労力が必要となることか。100km/h以上の速度で人を乗せて走るのだから、安全性の確保が重要となる。

 またクルマには様々な材料が使われている。金属、ゴム、プラスチック、革を含む布……それらを全て一業者が手掛けることなど、ほぼ不可能だ。

 レストアが一般的……とは言わないまでも、かなり市民権を得ているイタリアにおいては、ヒストリックカーの内装を専門に修復する工房が存在している。ここにご紹介する「Ferraresi(フェラレージ)」もそのひとつ。その歴史は今から半世紀以上前の1958年に遡る。

02「1950〜70年代の名車を中心に手掛ける」

1953 Porsche 356 pre-A Cabriolet/
極初期型の通称プリAがソフトトップの張り替えで入庫中。テールランプが丸型2灯となり、フロントのスモールランプがヘッドランプの真下に置かれるのが1953年式の特徴となる。余談ながら、この年初めて三和自動車が日本に356を4台輸入している。

 時は1954年。ジュゼッペ・フェラレージ氏はボローニャ近くのフェラーラにあるカロッツェリアに勤め出し、オスカーやマセラッティ用のシートを製作した。そして4年後に独立し「フェラレージ」の歴史が始まった。現在はモレッリ氏の息子であるエンリコ氏が後を継いでおり、彼は17歳から37年間シートづくりに携わっている。

 取材当時は7人のスタッフが働いており、取材に訪れた日は数台の名車が佇んでいたが、中にはエンジンが載っていないドンガラのクルマの姿も。エンジンを直すにはボディは必要ないが、インテリアを作り変えるにはボディとの現物合わせが必要であるため、ボディはここに預けられたというわけだ。フェラレージでは主に1950〜70年代の車両の内装を手掛けているが、その理由は「父と一緒に手掛けた年代だから、一番クルマのことがよくわかるから」だそうだ。

 「私にとって最も大切なこととは、オリジナルをリスペクトすることです。だからそのクルマのことをよく知らなければ、作業に取り掛かることはできません。入庫してきたクルマに革シートが装着されていても、新車当時のシートの表皮がなんであったかはわかりません。例えば1954年製のドア内貼りは合皮で、57年製からは革になったとか、そういった知識までを持っていなければならないのです」

クルマのことを知らなければ作業はできない

1980年代のミニ・モーク。オーナーは購入直後にソフトトップを新調し、フェラレージにて作業中。元のソフトトップはボロボロだったため、現車合わせで作り直し、さらにファスナーを付けてドアが開くように改良。完成後はサルディーニャ島でビーチカーとして活躍する予定。

 だが時代が異なるため、必ずしも当時と全く同じに仕上げられるとは限らない。

 「フォルム、スポンジの感触、ステッチの入り方など、徹底的に当時に忠実に仕上げるようにはしますが、当時のマテリアルが今は手に入らないこともあります。また、当時の作りがあまりにも華奢すぎるため、より長く使えるよう工夫を施すこともあります」

 徹底して手作業で仕上げるため、1か月で2台ほどしか手掛けられないというが、それでも40年近いキャリアの中で触れたクルマは数知れず。中でも特に印象に残ったクルマのシートとは何だろうか?

 「フェラーリ365GTB/4デイトナですね。フォルムが美しくステッチも綺麗。非常に凝ったつくりです。50〜60年代のフェラーリのシートは本当に素晴らしい。その分レストア作業は大変ですが、満足感もひとしおなんですよ」

フルレストアを施す場合、ボディのレストアが終わると、ボディだけのドンガラの状態でフェラレージに持ち込まれる。エンジンやミッションは別の場所で、同じタイミングで作業が行われるというわけだ。もちろん何もついていない方が作業はスムーズに進められる。

7人のスタッフで、1か月に2〜3台を手掛ける

現在フェラレージでは7人のスタッフが働いているが、1台分の内装を仕上げるのに2〜3か月かかり、1か月にこなせるのは2〜3台がやっとだという。左がエンリコ氏で右は弟のミケーレ氏。

一度手掛けたモデルは型を残し、次に同じ車種が入庫した時に生かす。とはいえ、ヒストリックカーは細かく仕様が異なることも多いから必ずしもそのまま流用できるとは限らない。

ポルシェ356に当時オプションで用意されていた、リアシートにピッタリと収まる旅行用鞄をフェラレージが復刻させた。シートの形状に合わせ、上部の左右で微妙に高さが異なっている。表皮も当時と同じものを探してきたという。

細部に至るまで徹底的に作りこまれているわけじゃないが、むしろその野暮ったさがカッコよく見えるのがクルマ用のベルト。

本来はオーナーへのギフト用

356のボンネット止め。かつてはこのようにレザーが使われていたため、当時と同じ幅、厚さでレストアされる。

ロベルト氏。

テキスト:Yoichi SAKAGAMI
媒体:VINTAGE LIFE 11

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