2018.11.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

プライベートアイズで選ぶ「2カウンタークロノ」

3時と6時の位置にインダイアルを備えた、クラシックな佇まいの2カウンタークロノグラフ。一時代を築いたクロノグラフの計測スタイルをひも解く。

古典クロノグラフの美しき肖像

 腕時計の機能の中でもクロノグラフほど、個性的で多彩な表示様式があるものはない。その中でも横2つ並びのインダイアルを備える2カウンタークロノグラフは、ヴィンテージクロノの王道スタイルだ。クロノグラフの技術的な進歩の過程におきた表示パターンのひとつに過ぎないのだが、のちに多くのクロノグラフムーブメントに影響を及ぼした基本レイアウトである。2カウンタークロノグラフが市場を賑わせていた1930~40年代を中心に、その魅力をひも解いていこう。

左:LEMANIA/
1940年代製のレマニア。精悍なブラック文字盤のセンターに、スネイルタキメーターを備えた2カウンタークロノグラフ。フラットベゼルステップデザインの王道スタイル。ムーブメントはレマニア13CHが搭載されており、2時位置のシングルプッシュで操作する。手巻き。ステイブライトケース。参考商品。

右:TISSOT/
1940年代製のティソ。まるでブランドロゴだけが差し替えたような同じ文字盤デザインで、ムーブメントも同じレマニア13CHであるが、こちらは2プッシュボタンのクロノグラフ。こうした微差を見つけて楽しむのが、ヴィンテージウォッチの醍醐味である。手巻き。ステイブライトケース。参考商品。

「デザインは機能に従う」というが、クロノグラフも例外ではない。2カウンタークロノグラフでは、懐中時計のムーブメントを腕時計のケースに納めると、リューズが3時位置、秒針のインダイアルが9時位置、分積算計が3時位置に納まる。だから横2つのインダイアルを備えたレイアウトとは自然な流れであり、同時にクロノグラフの基本レイアウトにもなったのだ。

 ムーブメントの代表例としては、バルジュー社のキャリバー22や23、ヴィーナス社のキャリバー175などが挙げられる。それらは作動方式を主にピラーホイール式とする高級機であった。中でも1914年に開発されたバルジュー社のキャリバー22は、2年後の1916年にキャリバー23へと発展し、その非常に扱いやすい「13ライン」というサイズ感もうけて、この時代以降の標準サイズとなる。

 そのバルジュー23をベースとしたパテック フィリップのキャリバー13や、ロンジンの13ZN、レマニアの13CH、ミネルバの13-20CHなどは、今なお名機と呼ばれるムーブメントだ。それはクロノグラフキャリバー専業メーカーであるバルジュー社がそれだけ時代に受け入れられたことを物語っている。その後、70年代には作動方式をカム式で簡略化した機構の2カウンタークロノグラフが席巻するが、それも味わいメカであったことを付け加えておこう。

 ムーブメントの製造専門会社が作る半完成品のムーブメントをエボーシュというが、同じクロノグラフのベースエボーシュを用いながら、市場では10万円台の無銘機もあれば、オークションに出品されて高値で取引されるパテック フィリップのような例もある。もちろん仕上げやブランドバリューの違いがあるが、その差異も楽しみながら2カウンタークロノグラフを選ぶのもヴィンテージウォッチの面白さである。

左:A.R. & J.E.MEYLAN/
1940年代前期のメイラン。生産管理や航海で使われる10進法表示のデシマルスケールを備えたクロノグラフ。一見アンバランスに見える大きなラウンド型クロノプッシャーやリューズも独特なスタイリングで、ステップベゼルとの相性もいいデザイン。レマニア13CH搭載。手巻き。ステイブライトケース。
39万8,000円(取材当時)

右:ABERCROMBIE & FITCH Co/
1940年代製のアバクロンビー&フィッチ。スネイルタキメーターとテレメーターの計測スケールの組み合わせは、砲撃の距離を測るのに便利だった機能。ブレゲ数字に、ブレゲ針が採用され、ドレッシーな印象に。ムーブメントはランデロン13を搭載。手巻き。ステイブライトケース。
48万円(取材当時)

ヴィンテージクロノグラフの至宝

PATEK PHILIPPE/
1940年製パテック フィリップのキャリバー13’’’。時計の頂点に君臨するパテック フィリップも、唯一クロノグラフにおいては専業メーカーからエボーシュを供給されていた。その白羽の矢が当たったのがバルジュー23である。汎用機ではあるが、パテック フィリップにおいてパーツを追加して改良を重ね、各パーツに面取りを施すなど、美しく仕上げられたムーブメントはすっかり生まれ変わった全く別物といってもいいだろう。

左:Valjoux/
1940年代製の無銘クロノグラフ。スネイルタキメーターにテレメーターを組み合わせた2カウンタークロノグラフ。38mmオーバーサイズのステップデザイン、しかもウォータープルーフケースというレアな逸品。ムーブメントは数多くの名門にエボーシュを供給してきたバルジュー22を搭載。手巻き。ステイブライトケース。参考商品。

右:Valjoux/
1940年代製のクラシカルな雰囲気を持つ無銘クロノグラフ。2つの大きなインダイヤルとテレメータースケールの重なり方が絶妙なバランスだ。ムーブメントはバルジュー22の後継で、傑作の誉れ高いバルジュー23を搭載。有名無名に関わらず、多くのメーカーに採用された名機である。手巻き。ステイブライトケース。
45万円(取材当時)

カメラ:Yasuhiro YOKOSAWA
テキスト:Katsumi TAKAHASHI
媒体:VINTAGE LIFE 12

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