2018.09.26

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

赤いチンクエチェントに乗る元レーサー氏の、新旧名車勢揃いのショールーム。

 ジョー・マカーリのロンドン南西にあるショールームは、ラグジュアリーカー・ディーラーの豪奢な仕立てに飽きあきしている人でさえ、思わずほうっと気分が高揚してしまう魔力を持っている。

 1,800平方メートルというショールームの道路に面したファサードはすべてガラス張り、白でまとめられたコンテンポラリーな空間にコンクール・デレガンス級の新旧名車が勢揃いしている。

 これだけのショールームにこの在庫、ル・マンや数々のGTレースを走った元レーサーというオーナーのジョー・マカーリ氏とはどんな人物だろうと緊張しながら待っていると、ニコニコしながらあらわれたのは履きこんだジーパンにブルゾンの男性だった。腕時計が目に入らなければ、そのあたりの配管工事会社社長とかかな、とでも思ってしまいそうな……ナルホド。

若い時、レースのために中古車販売を始めた

高い吹き抜け、白が基調のコンテンポラリーなショールームに余裕をもってディスプレイされている名車たち。目立つのはやはりロッソ・コルサ。全体の3分の1ほどを占めていた。

ランブレッタにまたがったオーナーのジョー・マカーリ氏。イタリア人の両親のもとに英国で育ち、レース活動をするために中古車販売を始めた。いまもクラシックレースなどに出ている。

左:Ferrari 365 GTS/4Daytona Spyder/
ショールームの少し奥まったオフィス手前に並んでいる端正な2台はマカーリ氏の個人所有のフェラーリ2台。ピニンファリーナの手になる、スポーツカーのデザイン潮流を根底から変えた1971年のデイトナ・スパイダーはダークグリーン。売り物ではないが、値段をつければ4億5,000万円は下らないという。

右:Ferrari 250 GT SWBCalifornia Spyder/
『荒野の七人』『大脱走』の俳優ジェームズ・コバーンが所有していたこともあるこの1961年製は、ヨーロッパ向けに出荷された16台しかないカリフォルニア・スパイダーの1つ。2008年には有名ラジオDJが13億円で落札したことでもニュースになった。その後2012年のサロン・プリヴェも受賞している。

レストア後の最初の火入れは今も自分で

取材に訪れた日も、ショールームには5台のクラシック・チンクエチェントが未来の主を待っていた。価格帯は幅があるが、ノーマルの高年式で200万円程度からアバルト595で800万円ほど。多くが走行距離が短く、最近フルレストアされた極上車になっている。

 南イングランドでカフェを営むイタリア人の両親のもとに育ち、若い頃からモーターレースに没頭、2万円で仕入れたフォード・フィエスタを3万円で売っては、自分のミツビシに手を入れる日々だったという。

 ビジネスをここまでの規模に育てた今でも、レストアの終わった車両を自分でシャシダイナモメータに載せてみるという。顔を寄せて秘密を打ちあけるように「エンジンに火が入る瞬間はいつもたまらないからね!」とマカーリ氏。

 億のつく高級車の間のあちこちにチンクエチェントやランブレッタが混ざっているのも、マカーリ氏が個人的に好きだからだそうだ。ロンドン市内の足には実際に赤いチンクエチェントを愛用している(夏以外)という。

ショールームのエントランス近くに並んでいたのは、イタリアの新旧・大小コントラスト鮮やかな2台。ランボルギーニ・アヴェンタドールは某ゴルフ世界チャンピオンが所有していたもので、オリジナルのサテンホワイト塗装。すでに売約済みだが、お値段は4億5,000万円だったとか。

一皮むけばフェラーリ246とエンジンほか共通コンポーネントが多いフィアット・ディーノ・スパイダー1970年。サロン・プリヴェ出展車。

イノチェンティ社の名スクーター、ランブレッタの在庫も多い。イタリアンカラーも楽しい手前のものは1961年製のLi125でなんと走行3.2km!

この1973年のランチア・ストラトスは、本格的な生産に入る前にテスト生産された第1号と言われている。語り継がれる名車の歴史の一部を所有できるのだ。

リベット1本まで工場出荷時と同様に

ショールームのセンターピースとなっていたのが、ミッドナイトブルーも美しい250 GTルッソ。フェラーリの歴史の中で大きな位置を占める250の最後にして最も美しくラグジュアリーなクーペだ。

 大きなショールームの脇道を入った奥には、リフトが8基あるこれまた大きな、そしてショールーム同様モダンな整備工場があり、新車整備はもちろん、ヴィンテージ車のレストアもここで行われている。顧客から依頼されてのレストアも受けているという。

 ジョー・マカーリがとくに得意としているフェラーリのレストアは、リベットやネジの1本まで工場出荷時と同じであることを確認し、違えば同じものに交換する徹底ぶりだ。さらにフェラーリ本社自身が認定する「フェラーリ・クラシケ」をこの場所で取得できる。「最後はマラネロから人を呼ぶから時間もコストもかかります。けれど立派な写真付きの書類も作られるので、クルマの資産価値には間違いなくプラスになりますね」とマカーリ氏。

 先日は英BBCの超富豪のドキュメンタリー番組でも取材されていたジョー・マカーリのショールームだが、主な顧客はロンドン在住のヨーロッパ人とのこと。アメリカ人は意外に少なく、あとは東アジアや中東からの人が多いそうだ。

 「投資目的だけの人は少ないかな。エンスーで乗って楽しんで、資産価値も上がったら御の字、くらいのお客さまが多いですよ」

フェラーリ社のお墨付きである「フェラーリ・クラシケ(英発音はクラシーシュ)」は、リベット1つまで工場出荷時と同じであるという認証。詳細な資料も作ってもらえる。

テキスト:Yoko AOKI
媒体:VINTAGE LIFE 13

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