2018.10.05

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

乗るほどに体に馴染み、手放せなくなる本革サドル。「BROOKSの工房を訪ねて」

革のアッパーと骨格の金属パーツをつなぐリベット打ち作業。職人が指先で感触を確かめながら丁寧に打ち込んでいくことで、革と真鍮がとけ合うようななめらかな仕上がりに。

サドルのウィング部分に施されるモデル名の刻印型。サドルの成型は常温で行われるが、成型・乾燥後に打ち込まれるこの刻印だけはこの型のほうを加熱して行うという。

 「ベルギーのタンナーに大半を依頼していますが、牛は必ず屋外育ちのイギリスかアイルランドのものです。大陸では冬にコートを着せたりするから革が薄くなってダメなんですよ」。

 分厚くまだ牛の形が残る革を、担当の人が台に乗せ、撫で回しながら電球の光をあててじっくり吟味する。革のシボ感やかすかな傷を読んでいるようだ。おもむろに金型を乗せてプレス機でガシャーンと抜く。この革は水を含ませた後で2回のプレスと自然乾燥を繰り返し、あのブルックスのサドルの形に成型されていくのだ。

 生産ラインは3つに分けられる。革のアッパーの生産ライン、サドルの骨格である金属レールのライン、2つを合体させる組み立てラインだ。細かなリベットやナットなどこそパーツで仕入れているが、基本的にすべてがバーミンガム郊外のこのそれほど大きくもない工場で手作りされている。

 とぐろを巻く鉄棒をレールの形にぐいぐいと曲げていく大きな機械や、ガシャーンガシャーンと轟音を立てて鉄板を抜いていく機械はもう60年以上同じものが使われているという。見事なビール腹の、ケン・ローチの人情映画に出てきそうな男性が、溶接機でパーツを組み上げていく。傍らにはジョン・レノンの顔写真の黄ばんだ切り抜きが貼ってあった。

40分の浸水からプレス→乾燥→2回めプレス→2回めの乾燥行程に入っているB17モデル。このあとに刻印と後部のネームプレートが打たれ、金属のレールと組み合わされる。

モダンに進化する永遠の定番

 モデル名の刻印と後ろのロゴ入り金属プレートがほどこされたアッパーと、金属レールが合体される行程は、工場のハイライトだ。革に隆々とした鼻筋が通り、ファンが憧れてやまないあの美しいサドルが現れる。上級モデルには真鍮のリベットが職人の手で打ち込まれ、脚さばきをよくするサイドの面取りがこれも職人のフリーハンドで行われる。「官能的」と言ってもいい、人間らしい温かみと美しさのある仕上がり具合だ。

 スティーブン・グリーン氏にブルックスサドルの正統お手入れ方法を教わった。

 乗り方にもよるが、革が次第に伸びるので、サドル裏にある調整ボルトを半年に1度、1/4回転ほどずつを目安に締めること。そのときにできれば純正オイルの「プルーファイド」を表面に薄くのばし、数時間待って乾いた布で磨く。ミンクオイルは革がやわらかくなりすぎるので避けてほしいという。乗り込むほどに体に馴染み手放せなくなる革サドルの頂点、試してみてほしい。

Swift/
堂々の大御所定番モデルが多いブルックスの中では比較的若く、プロフィールも細身で軽やかなスタイルのスポーツモデル。モダンなフレームにもよく似合う。チタニウムレールのモデルは重量も390gと抑えている。

Colt/
1979年に登場した、ぽってりとした丸みと厚みを感じさせるユニークなフォルム。'70〜'80年代を席巻したサドルの雰囲気も強いので、その頃のスチールフレームバイクにとてもよく似合う。ターコイズやピンクなども魅力的。

媒体:VINTAGE LIFE 15

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