2018.11.29

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

プライベートアイズで探す「オールドインター」

"オールドインター"という愛称で、高い評価を得ているヴィンテージIWC。ヴィンテージらしからぬ実用性を備えた、愛好家たちも唸るその魅力に迫る。

質実剛健な実用ヴィンテージウォッチ

ペラトンシステム/
Cal.8531のペラトン自動巻きムーブメント。三半規管のようなプレートがローター。パーツの先端のローラーと偏心カムが左右に触れるのに連動して、ゼンマイを収めた香箱車を回す仕組み。耐衝撃、巻き上げ効率、耐久性が高いのが特徴。また、裏蓋とムーブメントの間に軟鉄のカバーが入るのがインヂュニアの特徴。

 1930年代から70年代までに製造された古いIWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)を、コアなファンたちは親しみを込めて"インター"とか"オールドインター"と呼ぶ。その頃はまだブランドロゴが筆記体で、"International Watch Co"と書かれることが多かったからだ。同時に合理的な設計と耐久性の追求で、実用性の高い時計作りを確立した時期でもあった。これは扱いに注意が必要なヴィンテージウォッチにおいて、オールドインターが堅牢かつタフさで大きなアドバンテージを持っていたことを示している。

 そのアドバンテージを支えたのが、時計史にも名を残す自動巻き機構の存在だ。1950年、開発部長であったアルバート・ペラトンによって開発された"ペラトン自動巻き"である。自動巻きとは、ムーブメントに付属した回転する錘(ローター)の重さにより、腕時計の着用時の自然な動作だけで、時計の動力源となるゼンマイを巻き上げる仕組み。

 この"ペラトン自動巻き"を備えたムーブメントは、両方向に回転するローターを用いた簡潔なパーツを使いながら、巻き上げ効率が良く、その簡潔な設計ゆえに堅牢さが特徴であった。1970年代までのオールドインターのすべての自動巻きはこの方式を採用していたという事実からも、ブランドの技術力の根幹を成す機構だったことがうかがえるだろう。

オールドインターの魅力を 凝縮したインヂュニアシリーズ

奥:INGENIEUR/
ブランドロゴの下に、スイスの老舗時計店「BEYER」の名が入ったWネーム仕様。シンプルな3針モデルながら、力強いドルフィン針を採用し、存在感を放つ。デイト表示付き。SSケース。1960年代製。自動巻き(Cal.8531)。
88万円(税抜、取材当時)

中央:INGENIEUR/
オールドインターの主力であるインヂュニアには軟鉄性インナーケースを備えた耐磁構造を持つ。シンプルだが、メリハリの利いた文字盤デザインが印象的だ。デイト表示付き。SSケース。1965年製。自動巻き(Cal.8531)。
74万円(税抜、取材当時)

手前:INGENIEUR/
軍用時計の出自を醸し出すブラックダイアルで精悍な印象を出しながら、ドレッシーな7連ブレスレットでシックに決まった。趣味性の高いコレクターズアイテムだ。デイト表示付き。SSケース。1963年製。自動巻き(Cal.8531)。
150万円(税抜、取材当時)

 またIWCはスイス時計界のなかでも、独自の技術分野を持つことでも知られる。前述のペラトン自動巻きはもちろん、防水技術などがあるが、オールドインターでは"超耐磁性機能"が有名だ。国際標準化機構のISO規格や日本工業規格(JIS)でも、時計の耐磁性は4800A/m(アンペアメーター)がひとつの基準とされているが、IWCでは耐磁性を持つ軟鉄素材の二重インナーケースによって8万A/mの耐磁機能というオーバースペックともいえる水準を実現している。

 そもそもIWCは1930年代から航空時計を開発していて、精度における最大の敵はコックピット内に発生する磁気であることを突き止めた。その結果、耐磁機能を実現し、航空時計以外に採用されたモデルが「インヂュニア」だった。そのインヂュニアには、もちろんペラトン自動巻き機構も採用されており、ブランドを代表する2つの独自機構が採用されていて、オールドインターでも指名買いの多い名機となっている。

左:Cal.852 スクエア/
センターセコンドを採用した量産型自動巻きに巻き上げヒゲを採用した第2世代モデル。アールデコ調のデザインに、ブラック文字盤が映える。SSケース。1952年製。自動巻き(Cal.852)。
53万円(税抜、取材当時)

右:Cal.8541 ラウンド/
IWCらしいシンプルで美しいボンベイダイヤルや、スナップ式防水ケースに、日送り機能の付いた空きのこないデザインが魅力。SSケース。1967年製。自動巻き(Cal.8541)。
28万円(税抜、取材当時)

左:Cal.83 カラトラバデザイン/
40年代ならではの表情を持つコレクタブルな逸品で、しかも未使用品。大振りなカラトラバデザインとブルースチール針のスタイリングがマッチしている。SSケース。1944年製。手巻き(Cal.83)。
49万8,000円(税抜、取材当時)

右:Cal.89 ラウンド/
ドルフィン針に、バーとアラビア数字の交互に組み合わせたインデックスのダイアルデザインは、今でもモダンに映る。パテックにも通じる上品さだ。18KYGケース。1960年製。手巻き(Cal.89)。
29万8,000円(税抜、取材当時)

カラトラバデザインをまとうオールドインター

奥:Cal.83 HERMET/
"ハーメット(スナップバックル防水モデル)"にキャリバー83の搭載。市場にあまり出回ることのないイエローゴールドケースは希少性が高い。光沢のある文字盤も美しい。1941年製。手巻き(Cal.83)。
49万8,000円(税抜、取材当時)

中央:Cal.8531 ラウンド/
レアなゴールドモデルの中でも、さらにレアなローズゴールドの3針モデル。楔形インデックスとドルフィン針が上品なシャープさを演出する。18KRGケース。1963年製。自動巻き(Cal.8531)。
64万円(税抜、取材当時)

手前:Cal.83 ラウンド/
手巻きキャリバーの名機Cal.83 を搭載したツートーンカラーダイアルのスモールセコンドモデル。ブラウン調に経年変化したツートーンは状態もよく、美品。SSケース。1947年製。手巻き(Cal.83)。
38万円(税抜、取材当時)

オールドインター初期の名機たち

左:Cal.83 クッション/
時計メーカーたらしめた手巻きキャリバーの名機Cal.83 を搭載。レアなクッションケースにセクターブレゲダイアルなど、時代のテイストが凝縮されている。14KYGケース。1930年代製。手巻き(Cal.83)。
38万円(税抜、取材当時)

右:Cal.87 レクタンギュラー/
ケースにレクタンギュラームーブメントがぎっしり詰まったキャリバー87を搭載。アールデコ調のカーベックスデザインが時代の雰囲気を伝えてくれる希少な逸品だ。SSケース。1936年代製。手巻き(Cal.87)。
59万8,000円(税抜、取材当時)

 長きにわたってヴィンテージウォッチを扱っているプライベートアイズでは、海外に時計を買い付けに行くたびにオールドインター人気が高まっているのを感じているという。今回紹介した個体数も多いインヂュニアのほか、近代的なレクタンギュラームーブメントの祖ともいわれるキャリバー87を搭載したモデル、ダイバーズウォッチのアクアタイマー、レアなローズゴールドケースモデルといったコレクターズアイテムも充実するのがオールドインターの魅力でもある。

 実用性と趣味性を兼ね備えたヴィンテージウォッチこそ、オールドインターの真髄といえるだろう。

カメラ:Yasuhiro Yokosawa
テキスト:Katsumi Takahashi
媒体:VINTAGE LIFE 16

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