2018.10.05

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

シングル・ドゥカティの世界。「DUNCAN CYCLE」

 ドゥカティ。改めて記すまでもないが、イタリアを代表するモーターサイクルブランドであり、その流麗なスタイリングやグランプリでの活躍に思いを馳せるファンは多い。そして、ドゥカティと言えば「Lツイン」を連想するのが一般的だろう。90度のV型2気筒エンジンを、前方のシリンダーがほぼ水平になる角度にマウント、サイドから見ると「L」に見えるところから、Lツインと名付けられたエンジンは、ドゥカティの代名詞と言っていい。

 だが、ドゥカティの魅力はLツインだけではない。さらに排気量の小さい単気筒エンジンを搭載したドゥカティもまた、数多くのライダーに愛されているのだ。

 そんなシングル・ドゥカティを専門に扱っているバイクショップがある。それが「ダンカンサイクル」なのだ。オールド・ドゥカティの修理やエンジンリビルド、ワンオフパーツの制作を生業にしているショップだが、実際は「シングル・ドゥカティ専門店」。かなーりピンポイントなスペシャルショップであるコトは間違いない。

コンパクトで軽いボディ

1972 DUCATI 250 DESMO/
通称「シルバーショットガン」を、鮮やかなイエローにリペイント。デスモタイプのエンジンは、250と350、そして450ccが存在するが、250ccのデスモはかなりレーシー。バルブタイミングやカムのプロファイルもかなり過激だが、軽快に回ってトラブルも少なく、整備性もよい。

 「ダンカンサイクル」の増田裕二氏は、なんと初めて手に入れたモーターサイクルがシングル・ドゥカティだったという、筋金入りの信奉者である。高校生の時に、友人のヤマハSRを見てバイクに興味がわき、雑誌やバイク屋さんに足を運んで情報収集。そして、シングル・ドゥカティの存在を知ってしまい、気がつけばオーナーになっていたという。

 「色んなバイクに、それぞれの魅力があると思いますが、やはり一番楽しいのはシングルのドゥカティ。断言していいですね」

 シングルサウンドや感性に訴えるような魅力は個人の裁量にまかせるとしても、専門店を開いてしまうほどの惚れ込みポイントはどこら辺にあるのだろうか?

 「色々ありますが、車体がコンパクトなところがいいですね。他の単気筒モデルと比べても、ひとまわり小さいです」

 実際に、現車を目前にすると、かなり小柄でコンパクトにまとまっている。徐々に大型化していった現在のバイクを見慣れた目には、ワンクラス以上排気量が小さいモデルと同等のサイズ感である。

1971 DUCATI 450 DESMO/
「シルバーショットガン」の450ccモデル。バルブをロッカーアームで強制的に開閉するデスモ方式は、ドゥカティ独特のスタイル。450ccエンジンは、レーシーな250ccよりもトルクフルで乗りやすい。低速域でも扱いやすく、高速もラクチン。

他のバイクには求め得ない魅力満載

450デスモのカフェレーサー

1974 DUCATI 450 DESMO “CUSTOM”/
ヨンハンのデスモをカスタマイズ。カスタムのポイントとなるタンク交換もバッチリで、ヘアライン仕上げのアルミタンクが実に魅力的である。トルクフルで乗りやすい450ccエンジンを搭載する、シングルドゥカのヴィンテージカフェレーサーだ。

 コンパクト・ボディは、車両重量の軽さにも貢献している。60年代に世界最速のシングルと称されたマッハ1などは、乾燥重量わずかに116kg。現行のモデルと比較すれば、125ccのオフロード車やトラッカークラスなのである。

 「これだけコンパクトで軽いボディに、250や450ccのエンジンを積んだロードスポーツはなかなかありません。シングル・ドゥカティは、日本の峠や交通事情ともマッチしていますね」

 回りたがりのシングルエンジンと、取り回しのよい小柄なボディ。さほど大きな数値の馬力はでないかも知れないけれど、軽量ボディが軽快な走りを実現してくれる。それが、シングル・ドゥカティの世界なのである。

 有り余るパワーが欲しければ、もっと排気量の大きなエンジンを選べばいい。電子制御が必要なら、新型バイクに勝る物はない。だが、ライダー自身がバイクをコントロールする楽しみをもとめ、軽快なライディングを欲するなら、シングルのドゥカティはその期待に応えてくれるのである。

 「もちろん、所有欲を満たしてくれるというのも大きいです。トマゼリのハンドルバーやコンチのマフラーが、純正で装着されているのも嬉しいですよね」

 ドゥカティの魅力を語ればおそらく止まらなくなるであろう増田さんだが、ネガティブな印象を抱く瞬間はないのだろうか?

 「スタイリングも魅力のひとつですが、実はカッコ悪く見える角度もあるんです。非の打ち所がない完成された造形美……というワケではないのですね。ある時は美しく思えても、そう感じない時もある。見る側の気持ちや感情で見え方が変わる。不思議なバイクなんですよね」

 ドゥカティと正面から向きあう職人であり、生粋のファンとして毎日をすごしている増田さんにして、いまだに「不思議なバイク」と言わしめる。シングル・ドゥカティが実に奥の深い存在であるコトは、間違いなさそうである。

(実は)店主も欲しい極上車

1966 DUCATI 250 MARK III/
“ナローケース”のシングルモデルとして登場した「マーク3」。その流麗なデザインと優れた走行性能で、世界中にファンを持つ人気モデルだ。増田さんも、我がモノとして手元に置きたいという上モノ!

最善の整備は「徹底したリビルド」

1964 DUCATI 250 “RACER”/
ナローケース+5スピードミッションの250ccモデルがベースだが、今となってはどれが元のモデルだったのか判別不能となってしまった。乾式クラッチやSSIのレーシングキャブを搭載、60年代のレーシングパーツを満載し、ツインプラグ加工が施された大作。

 増田さんがダンカン・サイクルをスタートさせたのは3年前。それ以前は、大手のバイクショップで修行をしていたという。

 「30歳を機にサラリーマンをやめて、いつかはドゥカティのお店を開きたいと夢を見ながら、メカニックの修行に励みましたね」

 それまでは、プロとしてバイクをいじった経験はなかった増田さんだが、その数年間でありとあらゆるメーカーのバイクを直しまくったという。そして、ダンカンサイクルのオープンが実現したのである。

 「全部バラして組み直す。コレが僕のやり方です。整備に近道はないと思っています」

 クランクまで全部分解してリビルドする。必要とあらばパーツを交換して可能な限りの初期化を施す。手間と時間はかかっても、調子のよいドゥカティを手に入れるには、この方法が最善だと増田さんは信じている。ダンカンサイクルが手がけたオールド・ドゥカティは、ドゥカティならではの魅惑の世界へと、貴方を誘ってくれるだろう。

1959 DUCATI 200 SS/
世界中のサーキットで成功をおさめたドゥカティがレイトフィフティーズに生産したヴィンテージモデル。「200 SS」は200エリートのスポーツバージョンで、非常に扱いやすくて乗りやすい1台。この個体は、オーナーの増田氏の個人車両である。

photo & text:Yoshiro Yamada
媒体:VINTAGE LIFE 16

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