2018.09.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ブリーディングに チャレンジしよう

 ベタは数ある熱帯魚のなかでも最も飼育がやさしい種類として知られている。微妙な水質調整や硝化バクテリアの繁殖を気にせずに飼育できる。だからといって、日々の管理をおろそかにすると、個体の美しさは消え、病気になってしまう。美しく元気に育てるために、飼育の基本をおさらいしておこう。

ベタの健康と美しさを保つため、飼育の基本をここでおさらい

飼育容器の底にフンなどのゴミが溜まってきたら、水質の悪化を防ぐためにスポイトで取り除く。

 使用する水槽は小型のものでかまわないが、水量は3ℓ以上入るものがベストだ。水量が多いほうが水質が悪化するスピードが遅く、水換えの必要頻度も少なくて済む。ベタを近くで複数飼育する場合は、日ごろはお互いの姿を見せないように、厚紙か不透明のプラスティック板で仕切っておこう。

 エサは1日1回、市販の冷凍餌やドライフードを与える。少しずつ食べるのを見ながら、ちょうど食べきる量を与えることが大切だ。残りエサやフンは大きなスポイトなどで取り除いておくとよい。

 水換えは、ベタ飼育で最も大切な作業といえる。水量にもよるが、3~5日に一度ぐらい、細いホースやチューブなどで底のゴミと一緒に吸い出しながら、3分の1~3分の2程度換えるとよいだろう。

 また、定期的にフレアリングをさせることも重要な作業のひとつ。これはヒレを美しくするトレーニングで、1日に数回、エサを与える前後や観賞するときに、仕切りをはずしてやると、お互いに大きくヒレを広げて威嚇し合う。その美しい姿を眺めることは、ベタ飼育の醍醐味でもある。

 このフレアリングをすることで、オスのヒレは大きく広がり、動きも活発になる。1匹しか飼育していない場合は、鏡を見せるだけで自分の姿を敵と思ってヒレを広げるだろう。ベタの健康を保ち、美しい姿を楽しむためにはこうした日々の管理が大切なのだ。

小型水槽の場合、加温が必要な冬期はシートタイプのヒーターを使うとよい。

ベタはマツカサ病やウーディウム病などにかかることがある。もしものときのために、市販されている魚病薬を常備しておくと安心だ。

よいオスとメスを選んで、お見合いをしてから同居させる

ベタのお見合い風景。水槽をぴったりくっつけたり、隔離水槽を使ったりしてオスとメスを対面させる。この状態で1~2日間様子をみる。

 グッピーのような卵胎生の魚以外のブリードは非常に難しい、と考えている人が多いかもしれない。しかし、ベタの繁殖は成熟した雌雄がいればそれほど難しくない。

 まずは成熟したオスとメスを用意しよう。ベタは必ず1ペアで交配させる。オスとメスの違いは、オスの方が全体的に各ヒレが大きく、ヒレ先も伸長する。メスは成熟して腹部に卵を持つと丸みを帯びた体型となり、総排泄口のあたりに白い突起があるのも特徴だ。

 繁殖用に使うオスは、飼育容器の中で盛んに水面に泡巣をつくっているような個体を選ぶとよい。繁殖させたいオス個体が決まったら、メスはそれに似た形質の個体を選ぶとよいだろう。似ているもの同士を交配させれば、イメージに近い子どもが多く採れるはずだ。また、繁殖用に使うメスは腹部に卵巣が発達した個体をセレクトしよう。ベタのメスは卵巣が発達してくると腹部がクリーム色に透けて見えるようになる。

 ベタのブリードのためには、特別な器具は必要ない。10~20リットル程度の水槽があれば充分だ。そこにオスが泡巣をつくる基礎となる浮き草を浮かべればOK。ベタの繁殖にはやや高めの水温が適していて、飼育下では28℃前後がベストだ。

 泡巣を作ったオスの水槽にメスを導入するが、その前に、産卵ケースなどに入れて、1~2日間オスとお見合いさせてから一緒にさせると安心だ。オスはメスの姿を目にすると、ヒレを盛んに広げて自分をアピールして泡巣の下へと誘う行動を行う。これに対して逃げるような行動をしているメスはまだ繁殖の準備ができていない証拠。繁殖可能なメスは自らオスに近付こうとする。メスがこのような行動を見せたらお見合い成功だ。メスをオスの水槽に迎えよう。

メスを目にしたら、ほとんどのオスは泡巣をつくりはじめる。水面には浮き草を散らしておくとよい。

メスは仰向けにり、オスがメスの体に巻きつく。この際、産卵と放精が行われる。

興味深い繁殖行動と子育て稚魚育成のポイントは?

産卵したばかりの卵。通常オスが見守り役になるので、卵を落とさないようにメスをすくって移動させる。

 お見合いさせたメスをオスの水槽に移すと、いよいよ繁殖のクライマックスだ。

 はじめはオスがメスを攻撃するように追い続けるが、それを何度か繰り返すうちに、産卵準備の整ったメスはオスの誘いに従い、泡巣の下に自分から近寄るようになる。この行程はペアによってさまざまだが、たいていはオスが激しく攻撃し、メスのヒレがボロボロになることも。

 飼育者としては心配だが、そうしたうえで産卵がはじまることが多いので、あまり神経質にならずに見守ることも大切だ。といってもメスを導入してから2日経っても産卵しない場合は、時期尚早か相性が悪いと考えてペアリングはいったん中止したほうがよい。

 産卵が可能になったメスは泡巣に近づき、2匹はダンスを踊るようにグルグルと回転する。するとメスは仰向けになって、オスはメスの体を巻くように抱きついて産卵を促す。このときに産卵と放精が行われる。産卵後メスは、しばらくの間放心状態だが、オスはこぼれ落ちる卵を口で集めて泡巣へと付着させる。

 この一連の産卵行動は何十回と続き、2~3時間程行われる。何度見ても飽きない行動だ。落ちた卵は基本的にはオスが口で拾い、泡巣に卵を付着させる。産卵が終わった後も卵がこぼれ落ちないように世話するのだが、稀にこれをメスが行うケースもあるようだ。

 卵は、水温にもよるがだいたい2日程度でフ化する。最初は白い卵にしっぽだけ生えたような形状だが、やがて眼がはっきりして体に黒い色素があらわれる。稚魚は泡巣に向かい頭を上にしてぶら下がるように付着している。しかし、ちょっと動いた拍子に泡巣からこぼれ落ちる稚魚が出てくる。すると世話をするオス親は慌ただしく動く。稚魚を口で拾い集めては、巣に戻す作業を繰り返さなくてはならない。親が子どものために一生懸命働く姿は涙ぐましいものがある。

 稚魚は白いヨークサックが残っているうちはそこから栄養を吸収しているので、エサを与える必要はない。フ化後3日もするとヨークサックがなくなり、それと同時に水平に泳げるようになる。最初のエサを与えるのはこのタイミングだ。ここで与える初期餌料の善し悪しにより、このあとの歩留まりや成長率が大きく変わってくる。ベタの繁殖の失敗の多くはこの時期に起こる。小さい稚魚のエサを用意できずに、たくさん産まれた稚魚を落としてしまうケースが多いのだ。

 稚魚の口は非常に小さいため、特別なエサを用意しなければならない。インフゾリアやマイクロワームなどが一般的に用いられる。インフゾリアは、水中にいるゾウリムシなどプランクトンの総称。発生を促すキットやコンディショナーも発売され、タネを入手すれば自分で培養することも可能だ。今ではメダカの稚魚用にも流通している。また、マイクロワームは土壌に住む線虫の仲間で、こちらも自分で殖やすことができる。

 フ化してから5~6日が経過するとようやくブラインシュリンプの幼生を食べられるようになる。ブラインシュリンプは、乾燥した休眠卵が販売されていて、それを塩水に入れて管理すれば、24時間後にフ化し、その幼生を稚魚に与えることができる。ブラインシュリンプを食べられるようになったら、稚魚の育成は楽になる。成長するにつれ与える回数を増やしていくとよい。

 ちなみにベタの稚魚は、状態のよいメス親から産まれた卵はやや大きいため、フ化した稚魚もそのぶん大きい。大きな稚魚は初期の育成で有利になるので、種親の状態を良好に保つことも繁殖成功の秘訣といえる。また、稚魚の段階から複数を同じ水槽で飼い続けていると、成魚でも混泳が可能だ。ただ、美しく育てようとするなら個別に飼うのが望ましいだろう。

ふ化したばかりの稚魚。おなかに白いヨークサックをつけている。まだ泡巣に付着したまま垂直に並んでいる。泡巣から離れて底に落ちていく稚魚は親が拾って泡巣に戻してくれる。

ベタの初期餌料として利用できるインフゾリアとクロレラの培養セット(右)。ブラインシュリンプの休眠卵(左)。これをフ化させて稚魚に与える。

カメラ&テキスト:平野 威 Takeshi Hirano
媒体:AQUA Style 8

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