2018.10.09

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

フランスの風を運ぶお店「bon côté」

 そのガーデンには、緩やかな時間が流れていた。時の流れが止まったかのような空間と、確かな息吹を感じる生き生きとした植物。そして、一歩店内に足を踏み入れると、そこに広がるのはめくるめくヴィンテージの世界。

 「ウチはフランスからアンティークのドアを持ってきて、日本で使えるようにしているんだよ。ここもお店ってワケじゃないんだ」

 申し訳なさそうに話を切り出した久永昌さんは、アンティークやヴィンテージを扱う「bon côté(ボンコテ)」のオーナー氏である。

 確かに、ボンコテにはヴィンテージドアなどをメンテナンスする職人さんはいても、セールススタッフは見あたらない。したがって、この記事を読んでいただいた読者の皆様も、アポ無しでいきなり押しかけるのはくれぐれもご遠慮いただきたいのである。

 だがしかし。置かれている家具をはじめとする、ヴィンテージな品々の魅力的なこと! ライトにストーブ、家具などなど、片っ端から愛でたい逸品ばかりなのである。とりあえず、テーマを「自転車」に絞り込むが、撮影早々、再訪を誓う取材班なのであった。

時が止まった部屋

お散歩に最適なバイク二台

Winster/
上体を立てて乗ることができるプロムナードハンドルを装着したモデル。泥はねを予防してくれるフェンダーや、ちょっとした荷物を積むのに便利なキャリアが前後についているのが雰囲気。砲弾型のヘッドライトはもちろん点灯可能。5段変速付き。

Unknown/
製造メーカーは不明だが、そんなコトよりもなによりもこの空気感にヤられてほしい。まるで映画のワンシーンに登場するような出で立ちは、インテリアショップの店頭などに置いても存在感大あり。メンテナンスを施せば実走も可能で、コースターブレーキも装備しているのだ。

乗り降りも楽なタンデムモデル

 ちょっと旧いスポーツバイクといえば、いわゆるクロモリ製のスティールパイプを使ったロードレーサーが人気である。

 フレーム自体がバネのようにしなり、カーボンやアルミにはない独特の乗り心地が楽しめるスティール製バイクは、現在再び注目を集めている。なにしろ細いチューブで構成された車体の、優雅な美しさときたら!

 スポーツバイクの先進国、ヨーロッパで作り出された自転車たちは、ヴィンテージとなってさらにその輝きを増す。イタリアはイタリア独特の、イギリスはイギリスならではの魅力。そして、フランスで熟成されたヴィンテージもまた、たまらないオーラを放っている。

 フランス製ヴィンテージバイクというのは、あまり日本には入って来ていないが、コレだけの数を目前にすると、圧倒されるばかりなのである。

在庫のバイクが居並ぶウエアハウス。なかでも可愛らしさで目を惹いたのが、かなーり本格的な作りのキッズ用スポーツバイクだった。キッズ用のクランクなど、すべてがダウンサイジングされている。

工業用デザインならではの無骨さと高い機能、細身のアームがもたらす華奢な印象が同居するジェルデのランプ。職人が一つ一つ手作りする1950年以来のロングセラーは、ヴィンテージでも高い人気を博している。

2台のミキストタイプ

Liberia Tandem/
いわゆる"二人乗り"の自転車である。エンジンが二人分というコトで、歴とした競技にもなっているのだが、こちらはツーリングモデル。リアのライダーが乗る部分のトップチューブが下がっていて、いわゆるミキストでタンデムを作るとこうなる? という見本のようなモデル。

Eddy Merckx Mixte/
史上最強と称されるレーサー、エディ・メルクス。現役引退後に彼自身の名を冠して立ち上げたブランドは、競技用バイクの他にも、様々なモデルを作っていた。こちらは、プロムナードバーを装備したミキストモデル。前2段×後ろ5段の10段変速で8万円なり(取材時)。

そこはヴィンテージの宝庫

なんとも味があるティントイ。ベースとなっているモデルを想像すると楽しい。奥にある、ブルメタのスポーツカーも気になる……。

 ボンコテのラインアップは実に興味深い。日本に入ってくるヨーロピアンブランドと言えば、やはりロードレーサーの王道たるイタリアが圧倒的に多い。フランスは? といえば、特にクロモリ時代に限定すれば、ランドナーなどが思い起こされるくらいではなかったか? 

 もちろん「ツール・ド・フランス」をはじめとするロードレーサー文化が根付いた国である。スポーツバイクは人々の生活に深く浸透している。競技用のレーサーだけではなく、自転車散歩に出かけるためのスポーツバイクも大変充実しているのである。ママチャリ的な自転車も踏みこめばしっかりと走り、ちょっとした小旅行に出かけられるショートツーリングモデルも魅力的。

 こうした「普通に良い自転車」にこそ、フランスらしい質実剛健さと、美意識を感じるのである。その点、ボンコテの自転車は面白い。ペアで楽しめるタンデムや、プロムナードハンドルを付けたポタリングモデルなど、肩肘張らずに楽しめるバイク満載である。もちろん、ヴィンテージならではの美しさは折り紙付きとくれば……。

基本的には、ヴィンテージドアを扱うボンコテだが、家具なども輸入している。まるで投光器のような超大型のライトもあって、まるで映画のセットのよう。

カンヌで暮らした経験を生かして

フランスから輸入されたヴィンテージドアを、自社内のファクトリーで丁寧に仕上げていく。職人さんが現状を目で確かめ、自らの手で最良の状態に仕立て上げるのだ。

 オーナーの久永氏は、29歳の時にフランス南東部のカンヌで暮らし始めた。フランスといえば、一つのモノを長く使うお国柄である。久永さんはといえば、まずはヴィンテージなストーブに魅了されてしまったのだという。

 「来る日も来る日も、ガレージでホーローのボディをピカピカに磨き上げてましたね」。

 フランス語で「エマイユ」。つまり、ホーローのボディを持つヴィンテージストーブに魅入られてしまい、気がつけばコレクターになってしまった久永さん。その後、カンヌの家を売却した資金を元に、現在の商売をスタートなさったのだとか。ストーブ以外のアンティークには、特に興味があったワケではないとおっしゃるが、やはり本物を見極める目は鋭い。かくして、ボンコテの店内には、かように魅力的なヴィンテージにかこまれるコトとなったのである。

シトロエンのアッシュ(H)トラック。貨物専用ならでは、働くクルマがもつ無駄のない工業デザインは、今見ても新鮮。もちろん、エンジンが掛かる状態である。

こちらが、フランス直輸入のヴィンテージドアたち。店舗やフォトスタジオなど、美しいドアを取り付けるだけで、雰囲気が一変するのである。

photo & text:Yoshiro Yamada
媒体:VINTAGE LIFE 16

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