2019.03.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

人気ブリーダー発「それいけ!メダカ最前線!」

進化のスピードが止まらない、改良メダカの世界。毎年新しい表現の品種が誕生し、注目度も年々高まっている。飼育繁殖が容易なため初心者でも簡単に楽しめる上、奥が深くて楽しみかたの幅がとても広い。今回は6人のブリーダーに、メダカづくりの熱意や考え方、独自の管理法など日々の飼育に役立つ情報を教わった。

MEDAKA BREEDERS REPORT 01「ブームははじまったばかり! メダカはもっともっと進化する」:花小屋 戸松具視さん

 季節の花が咲き誇る園芸店の奥に、メダカ販売のスペースが広がる。ここは埼玉県日高市にある「花小屋」。多種多様な品種が集められ、元気に育てられた立派なメダカたちが販売されている。初心者向けの種類から、マニア垂涎の最新品種まで、多彩な品揃えは全国屈指といってよい。花小屋にくれば、進化を続けている改良メダカの最先端に出会えるはずだ。

 花小屋オーナーの戸松さんは、日本メダカ協同組合の理事長も務め、メダカ業界全体をリードするひとりとして知られている。古くからメダカの飼育・繁殖に携わり、数々の種類を誕生させてきた。

 戸松さんが本格的にメダカを殖やすようになったきっかけは、ダルマメダカに出会ってから。そのずんぐりとした体型のメダカは水鉢で飼育されていて、はじめは金魚の子どもかと思ったほど。そのときに改良メダカの可能性を強く感じたという。

 これまでさまざまな品種を手がけてきたが、近年その改良と固定に取り組んでいるのは「パープルメダカ」だ。背中が紫色に輝くメダカで、これまでにない色彩表現をみせる。もとは普通体型の幹之の体外光が紫色に光っている個体をベースに交配を重ねたもので、さらに青ラメを掛け、体色の黒っぽいタイプを選別交配することで、紫色がより際立ってきたという。さらに今年は黒地に紫色が輝く「ブラックパープル」も登場。これは黒系品種のヒカリ体型を掛け合わせて固定させた種類で、渋みと華やかさを兼ね備えた体色が魅力だ。

 このほか、戸松さんが注目しているメダカのタイプはヒレ長の品種。ヒレ長は究極の変化ととらえていて、そのヒレに色や柄が現れれば、きっと世界に誇れる観賞魚になるはずと考えている。

 「そんな馬鹿なと思う人も多いとは思いますが、どうなるかはわかりません。だからこそワクワクするんです」と、戸松さんは笑う。10年前に三色のメダカが出現すると考えていた人はほとんどいなかった。だからこそ実現する可能性は大いにあると信じている。

 「メダカのブームははじまったばかり。進化はまだまだ続きます。いつかはメジャーな観賞魚として、金魚のように誰もが飼育を楽しむ時代がくることを望んでいます」。戸松さんの目には、メダカが産業としてより発展していく姿が、はっきりと見えているようだ。

個体の様子を確認する戸松さん。さまざまな系統の品種を取り入れ、優良個体の販売はもちろん、新たな表現の作出にも力を注いでいる。品種の数や生産する個体数も年々増えている。

幹之のヒレ長品種の翁。戸松さんはヒレ長のメダカに将来性を感じている。

MEDAKA BREEDERS REPORT 02「丁寧な飼育によって誕生する 彩り豊かな美しいメダカ」:烏城めだか 京深純夫さん

 黒の発泡ケースがきれいに並べられたファームでは、幹之系や楊貴妃系、三色など、いずれも立派な個体が豊富で元気に泳いでいる。ここでメダカづくりを行っているのは、「烏城めだか」の京深純夫さんだ。10年ほど前に、友人からレインボーメダカを譲られたことから飼育をはじめ、現在は独自のブランドを立ち上げるまでに至った。ちなみに烏城(うじょう)とは岡山城の別名で、その堂々とした城郭の姿にあやかって名付けられている。

 メダカが泳ぐケースの中には、溶岩石の底砂が敷き詰められ、すべてにエアレーションが施されているのが特徴。底砂を入れることで、水の浄化作用が働き、酸素を供給することで、メダカがより生き生きしてくるという。水換えは2~3週間に1度行うが、使用する水は名水百選にも指定されている「雄町の冷泉」を使用。車で30分ほどかけて汲みに行っているというこだわりようだ。

 さらに、産卵床に産みつけられた卵はひとつずつ手で採り、小分けして管理し、よく日に当ててふ化させている。その繁殖データは、ノートにぎっしり書き込み、情報を蓄積しているのもすごい。

 こうして手間を惜しまずにつくられた京深さんのメダカは、やはり美しい。なかでも最も注目を集めているのは、烏城三色と烏城紅白だ。鯉に似た魚とつくりたいという思いで、選別交配を重ね、はっきりとした色柄の三色と紅白をつくり出した。現在、埼玉県の専門店、花小屋でのみ販売されている。

 また、娘の絵美さんもブリーダーとして活躍。品評会でも受賞経験があり、現在では審査員を務めるほどの実績がある。さらに絵美さんは香港に「Mizuho Medaka」というメダカ専門店をオープン。海外では初めてのメダカ専門店として、烏城めだかをはじめ、組合加盟のメダカを輸出し、日本の改良メダカの魅力を伝えている。

飼育ケースには、すべて溶岩石の砂利を敷き詰め、エアレーションを施している。

ご自宅の庭を改装してメダカの飼育繁殖場に。黒の発泡ケースがずらりと並ぶ。エサは1日3回、欠かさずに与えている。

MEDAKA BREEDERS REPORT 03「独自の飼育理論を確立しインパクトのある品種を生み出す」:日本改良めだか研究所 深川善正さん

 日当たりのよい広大な敷地の一角に、突然現れるメダカ池の数々。広島県福山市にある「日本改良めだか研究所」では、自然豊かなこの場所でメダカの飼育・繁殖が行われている。代表の深川善正さんは、深川系三色と呼ばれる品種をはじめ、栗神や来光、黒蜂、オールブラックスなど、人気ある数々のオリジナル品種を作出してきた重鎮のひとり。そのメダカづくりの手腕には定評がある。

 本格的な飼育をはじめたのは11年ほど前。娘さんからプレゼントされたメダカがきっかけだという。その後、楊貴妃にはまり、オリジナルの品種を作出するまでになる。

 「インパクトのあるいい品種をつくりたい」というのが深川さんの身上。長年、地道な交配を行ってきた結果が、今に繋がっているといえるだろう。三色を発表したのは約6年前で、黒地がはっきりと体色に現れる三色は「深川系」と呼ばれるように。また、全身が黒ボディーでヒレに黄色が入る黒蜂の登場は衝撃的だった。色落ちしない真っ黒な体色が特長で、ブラック系メダカ人気の火付け役となる。

 多彩な品種を扱う深川さんだが、とくに三色はよい色柄の個体を代々とり続けていくのは難しいという。年間の温度差が大きいほうが有利で、黒をしっかり出すには充分な日照が必要になるそうだ。また、冬期はSサイズぐらいの大量飼育で冬越しさせ、春に成長させたほうがよい個体に仕上がるという。

 通常は60リットル入る容器に、100~120匹ほどの個体を収容。飼育水には地下180mから汲み上げる地下水を使用している。水換えは10~20日に一度。

 よいメダカをつくるためには、どれだけメダカと一緒にいられるかが重要だという。毎日じっくりメダカの世話をしているからこそ、優れたメダカが作出されるのだ。

2,000坪の広大な敷地の一角にずらりと置かれたメダカの飼育ケース。稚魚はバケツで育成されている。

白や黒の発色が際立つ万彩。ほほの赤みがない非透明鱗系の三色だ。今後、さらに進化していく品種。

MEDAKA BREEDERS REPORT 04「美しい体型のメダカをつくり維持していくことが大切」:めだか倶楽部クリーク 堀田祐二さん

 多種多様なメダカと豊富な個体数を誇る「めだか倶楽部クリーク」は、愛知県一宮市にある。自宅周辺を取り囲むように飼育ケースが並び、状態のよいメダカたちが涼しげに水面を泳いでいる。こちらは店舗としても開放されていて、好みの個体をじっくり選ぶことが可能だ。こちらの堀田祐二さんは地道な飼育・繁殖に定評があり、これまで小川ブラックやコスモといった人気品種を作出してきた。

 小川ブラックは野生のクロメダカをもとに、長年にわたって選抜交配を繰り返し、深い黒の体色につくりあげられた品種。今でも人気の高い系統で、ダルマやヒカリ体型のほか、ラメ個体なども誕生している。一方、コスモは青ラメ幹之のヒカリ体型だが、そのラメは体中を埋め尽くし、背中も体外光で覆われ、全身が輝くヒカリメダカとして高い評価を受けている品種だ。現在、コスモのアルビノ個体やオレンジ色のコスモも作出されている。

 このほか、楊貴妃系の紅貴や東天紅、オーロラ系のラメ、麒麟、灯、オールブラックス×オロチなどなど、多彩な種類の繁殖に取り組んでいる。堀田さんのモットーは「すぐに繁殖するような、できあがった個体しか販売しない」ということ。自信をもって育てた個体のみを販売するようにしているという。

 また、飼育水は浄水器を通した水で、オーバフロー方式で水換えを行う。水換えの時期は、メダカのエサ食いを見ながら飼育水の色で判断している。飼育容器のなかには別の器に入れられた砂利と二枚貝を導入し、水の浄化作用を促しているのもポイント。容器の色は、赤系やラメ系などは黒いもの、マリンブルーなどは白い容器で飼育を行っている。選別は色柄より体型を重視。背曲がりなどの奇形が出ないよう、手間をかけてでもていねいな選別をしなければいけないという。尾が大きく、しっかりした体型を絶やさずに維持することも目標に掲げている。

 これだけ大規模に飼育を行っていると、奥様の浩子さんのサポートも重要だ。きれいな個体が誕生したときの感動を味わうことで、一段とメダカ飼育に力が入ってきたという。夫婦そろって楽しみながら、メダカの道を極めていく。

自宅前にずらりと並ぶ大きな飼育ケース。品種によって容器の色を選んでいる。

オーロラ系のメダカをもとに交配され、麒麟と名付けられた品種。青い体外光がのるタイプ。

MEDAKA BREEDERS REPORT 05「横見でも楽しめるあざやかな幹之をめざして」:めだか道楽 神田博さん

 決して自然界では見ることができない、幹之の背中の輝きに魅了された、めだか道楽の神田博さん。一時期は幹之ばかりを飼育していたというほど、幹之に惚れ込み、強い影響を受けたブリーダーのひとりだ。

 神田さんがめざしたのは、幹之の光りが全身を覆うフルボディー。各ヒレにまできらびやかな輝きが表現された個体だった。幹之を大量に殖やしていくと、ごく稀にヒレに輝きのある個体が生まれてくるそうで、これをもとに累代繁殖を重ねた結果、誕生したのがMDS(Medaka Douraku Special)だ。ヒカリ体型で各ヒレが輝く種類のほか、背ビレ・尻ビレが同じ形をしたヒカリ体型のボディーに扇形ではない尾ビレをもつ新体型も登場。

 MDSを発表したのは3年ほど前で、その後、ヒレの大きい個体のみを選んで交配を重ね、徐々にスタイルのよいMDSへと進化させてきた。しかし、神田さんによると尾ビレの輝きが今ひとつの個体もいるという。とくに背ビレと尻ビレは向こう側が見えないほど色がのるタイプがほとんどだが、尾ビレはそこまで至っていないらしい。そのクオリティーを上げていくのが当面の目標だと語る。また最近では、MDSにヒレ長の天女の舞やカブキ系統のメダカなどを交配させ、新たな表現のメダカづくりにも励んでいる。

 選別では光りは後からついてくるものと考え、体型を重要視。体高や、すべてのヒレの開きかたなどを見て親魚を選んでいる。飼育面では、水質よりも水温を重視し、水温の変化がなるべくないように管理している。

 「進化を続けるメダカのパワーを感じている」という神田さん。この先どんな魅力のある個体が作出されるか楽しみだ。

ハウスを拡大させ、生産能力を増やしためだか道楽。土日祝は確実に営業しているが、平日は不定休。訪れる前に電話で確認するとよい。

MDSの新体型。背ビレや尻ビレだけではなく尾ビレも全面に、美しく輝く個体。

MEDAKA BREEDERS REPORT 06「オリジナルの進化が楽しみな新進気鋭のブリーダー」:しいらメダカ 岡本剛さん

 豊かな自然に囲まれた埼玉県秩父市に店を構える「しいらメダカ」。2015年にオープンし、先日2周年を迎えたばかりの専門店だ。代表の岡本剛さんは、10年以上前から本格的な飼育・繁殖に取り組んできたという筋金入り。2年前に一念発起して店を立ち上げた。自然光が降り注ぐ、成魚の販売スペースのほかに、大きな稚魚の育成ハウスが建ち、さらに山の上に貴重な親魚を管理し交配させている場所もあるというから、かなり大きな規模で生産と販売を行っているのがわかる。

 しいらメダカの代表的な品種といえば五式だろう。錦鯉の五色のような色彩の特徴をもっていることから、その名がつけられた。黒に濃いオレンジ色が入る独特の品種で、高い人気を誇っている。

 五式の作出過程は、まず黒蜂の黄色いヒレを赤くしたいというところからスタートしている。黒蜂に赤みの強い栗神や楊貴妃系統を掛け合わせていくと、ヒレだけではなく、体全体にオレンジ色がのる個体が出現してきたという。それをもとに交配を重ねて固定させたのが五式である。色落ちしない黒地とあざやかなオレンジ色の調和が美しい品種として広く知られるようになった。

 現在、五式はもとの親から6世代目まで進み、色彩や柄がよりはっきり表現されるようになってきて、その魅力が増している。岡本さんは今後、赤みをもっと強くし、赤黒の大きいインパクトのある柄を目指していきたいと語る。まだまだ進化が見込める楽しみなメダカといえるだろう。

 このほか、光りやラメなど、さまざまな形質が現れるオーロラ系メダカをベースにした改良にも取り組んでいるという。これまでにないまったく新しい表現を目標にしているというから期待したい。

 選別ではやはり体型を重視している。趣味で楽しんでいたころは表現重視の選別を行っていたというが、現在は違う。背骨のラインや泳ぎかた、ヒレの大きさ、横見の際の体高などをチェックして、体型が整っているものを先決し、そのうえで表現が意図に沿う個体を選ぶようにしている。

 店では岡本さんが手がけた多彩な品種のメダカが販売されている。いずれも状態がよく立派な体型で、元気に泳いでいる。秩父観光と合わせて、メダカ探しに出かけてみるとよいだろう。

明るい店内。一般種から珍しい個体まで多彩な品揃え。すべてに値段がついていて、安心して買い物ができる。

五式のペア。成長するにつれて黒みが増す。体型も美しい。

カメラ:平野 威 Takeshi Hirano、佐々木浩之 Hiroyuki Sasaki
テキスト:平野 威 Takeshi Hirano
媒体:AQUA Style 8

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