2018.12.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

プライベートアイズで探す「VINTAGEパテック フィリップ」

世界最高峰のウォッチメーカーとしばしば形容される「パテック フィリップ」。ヴィンテージモデルによる足跡を辿りながら、その揺るぎない地位を築いてきた秘密に迫る。

パーペチュアルカレンダー クロノグラフ/
1948年製のRef.1518永久カレンダークロノグラフ。Ref.1518は生産本数281本のレアモデル。搭載するムーブメントはキャリバー13Q。1枚の丸いプレートに永久カレンダー機構を取り付けたモジュールを、クロノグラフキャリバー13の文字盤側に合体させている。4番車と出車が一体化したブリッジや、シャポーと呼ばれるコラムホイールのカバーが特徴。18KYGケース。手巻き。

数々の名機にパテックが磨きをかけて誕生した珠玉のコンプリケーション

 スイス時計王国の中でも最高峰に君臨する、「PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)」。それは、卓越した技術力と品質、ハイプライス、歴史的な著名人が連なる顧客リストなど、その理由はさまざま挙げられるが、中でもヴィンテージパテックへの再評価が高まっている。

 例えば、2014年秋、サザビーオークションで時計史上最高額となる2320万フラン(約28億円)で落札された通称「グレーブスウォッチ」。この時計は1933年、ニューヨークの銀行家で芸術愛好家のヘンリー・グレーブス・ジュニアが、ティファニーを通じてパテック フィリップに特別オーダーしたポケットウォッチで、1989年に創業150年周年を記念して制作されたキャリバー89が発表されるまで、世界最高の複雑時計だったものだ。まさにパテック フィリップの最高峰たる所以を示すニュースだった。

 また、ヴィンテージパテックには他ブランドにはないアドバンテージがある。「永久修理」が保証されていることだ。これはたとえ保証期間が過ぎ、オリジナル部品の在庫がなくなった時計でも、創業当時のものから時計の設計図が保管されているため、イチから部品を作り、修理・修復してくれるというものだ。他ブランドではそうはいかない。

 ロレックスでも自社修理の対応が50年といわれており、ヴィンテージ市場においては、消耗品や修理用として純正パーツが高価に取引されているのが現状だ。つまり、ヴィンテージパテックはヴィンテージの持つリスクを比較的抑えつつ、長い間楽しむことができる時計といえる。こうしたヴィンテージパテックの高い評価が、現行品の人気も支えているのである。

カルティエとのダブルネームモデルの美品クロノグラフ

Ref.130 クロノグラフ/
バルジュー社製のキャリバー23をベースにした、Cal.13を搭載するクロノグラフ。2つインダイヤルデザインの基本設計に、アプライドのブレゲインデックス、ゴールドのスペード針を採用したレアモデル。カルティエとのダブルネームが、さらに希少性を高めている。18KYGケース。手巻き。

アールデコテイストの漂うブレスレット仕様

Ref.130 クロノグラフ/
1930年代の短い間に製造された、"セクターダイアル"を持つクロノグラフ。円周と放射状のラインを組み合わせたアールデコ調の意匠が特徴だ。もともとレアなステンレススティールケースに加え、ブレス仕様はなかなかお目にかかれない。1939年製。ステンレススティールケース。手巻き。

表情豊かな永久カレンダーの美しき佇まい

Ref.3448 パーペチュアルカレンダー/
1973年製の永久カレンダーモデル。12時位置の2つの小窓には曜日・月、6時位置には日付とムーンフェイズを備える。艶やかなエナメルダイヤルに、ダークブルーのムーンフェイズが映える。キャリバーは27-460Q。このQとは、カレンダーや日付を意味するフランス語の"カンティエム"の意。18KWGケース。自動巻き。

パテック独自のチューンナップが施されたクロノグラフの名品

左:Ref.591 クロノグラフ/
1943年製のツーレジスタークロノグラフで希少なRef.591。小ぶりかつ重厚感あるシリンダーデザインケースとストレートラグが特徴。エナメルコーティングを残したシルバーツートンダイヤルは、アラビア数字とバー仕様のアップライトインデックスにリーフハンドの組み合わせ。Ref.591の中でも最高の状態を維持した貴重な一本。バルジュー社ベースのCal.13を搭載。18KYGケース。手巻き。

右:Ref.1579 クロノグラフ/
1965年製の2レジスターのクロノグラフ。こちらもバルジュー社ベースのCal.13を搭載。外周にはタキメーターを備え、アラビア数字とピラミッド型のアプライド・インデックスにリーフハンドとなっている美しい1本。ダイヤルはエナメルコーティングされ、しっとりとした表情に仕上がっている。18KYGケース。手巻き。

 さて、ヴィンテージパテックの魅力がわかったところで、時計業界で確固たる地位を築いてきたその足跡を辿っていこう。

 まずはクロノグラフからだ。分業制の進んでいたスイス時計産業では、クロノグラフムーブメントなどは専業メーカーから供給されるのが一般的だった。パテック フィリップも例外ではなく、自社製クロノグラフは2005年スプリットセコンドクロノグラフの発表まで待たなければならなかった。それまで主に採用されていたのがバルジュー社製のムーブメントである。

 一説には1970年代までに生産されたクロノグラフの90%は、バルジュー23ベースのキャリバー13だったという話もある。といっても、変更点は多岐にわたり、調速脱進機はスワンネック緩急針を備えた高級仕様か、ジャイロマックスによるフリースプラングに変更され、キャリングアームの設計変更、あるいはピラーホイールにシャポーと呼ばれるトップキャップが追加されるなど、独自のチューンナップが施されていた。

 こうした念入りな改良の延長には、クロノグラフムーブメントにモジュールを追加するコンプリケーションモデルの開発に繋がる。今日でも人気な永久カレンダー付きクロノグラフは、こうした技術のひとつひとつの積み重ねの結果だったことがわかるだろう。

流麗なカラトラバケースを纏ったデュアルタイムモデル

Ref.2597 デュアル タイム ゾーン/
1959年製。キャリバー12-400 HSを搭載したデュアルタイムモデル。青い針は普段時針と重なって動いているが、2つの時間帯を同時に見るときには、左サイドの2つのプッシュボタンを操作することで青針が出現して確認することができる。コンディションもよく、製造本数はわずか30本前後の激レアモデルだ。18KYGケース。手巻き。

ミュージアム級の逸品!? 初代"トロピカル"のゴールドブレス

Ref.2526 トロピカル/
1954年製。パテック フィリップ初の自動巻きムーブメントのCal.12-600-ATを搭載。日差しの強い環境での経年変化を防ぐために、陶製の文字盤を採用したことから通称"トロピカル"と呼ばれる。トロピカルには3世代あるが、こちらはアプライド・インデックスを埋め込む時にできた"エクボダイヤル"と呼ばれる窪みを持つ初代モデル。RGブレスモデルはYGブレスモデルと比べ、製造数が1/30以下という大変なレアピースだ。18KRGケース。自動巻き。

傑作モデルに潜む激レアピース

左:Ref.2570アンチマグネティック/
1958年製。従来は炭素鋼を用いる主要パーツに、耐磁性のパーツを用いたアンチマグネティックモデル。またケースには2層構造になった耐磁インナーケースが採用されている。一見すると、ベーシックなモデルに見えるが、中身は堅牢なアンチマグネティック仕様のレアモデルだ。18KYGケース。手巻き。

右:Ref.2526 トロピカル/
1956年製。パテック フィリップ初の自動巻きムーブメントのCal.12-600-ATを搭載。通常プラチナケースに用いられるダイヤモンドインデックスがWGモデルに搭載されたレアモデル。18KWGケース。自動巻き。

 もう一つ忘れてならないのが、1932年の登場以来ヴィンテージパテックファンの心をつかんで離さない、ラウンドケースのカラトラバだ。1930年代といえば、ようやく腕時計が懐中時計の販売を上回り、時計といえば腕時計と認識されるようになった時代。そんな時代にパテック フィリップはケースとラグが一体化した、シンプルかつ合理的なカラトラバデザインを打ち出し、すべてのラウンドケースウォッチの規範とまでいわれるようになった。

 そしてこのシンプルさゆえ、微差によるさまざまなバリエーションが存在するのも愛好家を引き付ける魅力のひとつになっている。カラトラバの中でも唯一の耐磁仕様を備えたムーブメントを搭載するアンチマグネティック、またブランド初の自動巻きに艶やかな陶板文字盤を用いたRef.2526(通称トロピカル)などが代表例だ。このようなレアモデルとの出会いが、ますますヴィンテージパテックの深みへと誘うのだ。
 
 時代を超えてユーザーの心を捉えてきたパテック フィリップ。ヴィンテージにしかないディテールに宿る機能美やデザインを愛でるのは、愛好家にとって至福の時となるだろう。

カメラ:Noboru Kurimura
テキスト:Katsumi Takahashi
媒体:VINTAGE LIFE 17

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