2018.07.23

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ヴィンテージライフ的、鉄道ミュージアムの楽しみ方「京都鉄道博物館」

 2016年4月29日にオープンした「京都鉄道博物館」は、1972(昭和47)年に旧梅小路機関区を活用する形で誕生した「梅小路蒸気機関車館」を拡張し、1962(昭和37)年から2014(平成26)年まで親しまれた「交通科学博物館」(大阪市)の収蔵物の大宗を合わせリニューアルオープンする鉄道の博物館。

 JRが運営に関わる大規模な博物館としては「鉄道博物館」(JR東日本、埼玉県さいたま市)、「リニア・鉄道館」(JR東海、愛知県名古屋市)があるが、この京都鉄道博物館は、最も広い敷地面積3万㎡を誇る。展示車両は53輌で、特に動態蒸気機関車の展示は国内随一のものとなる。展示車輌は関西地方になじみのある車輌も多いが、鉄道ファンでも地元民でなくとも満足できるものだろう。

 博物館の基本コンセプトは「地域と歩む鉄道文化拠点」。学校教育、周辺施設など地域との連携を図り、地域の活性化に寄与して「憩いの場」となるとともに「見る、さわる、体験する」ことで誰もが楽しめる「学びの場」となることを目指している。

重量感あふれる機関車を間近で見る

EF66形「EF66 35」/
直流区間の大型貨物用電気機関車として開発され東海道〜山陽本線で活躍。ブルートレインの牽引を担当した車輌もあり、人気を集めた。

 京都鉄道博物館は蒸気機関車はもとより、その蒸気機関車に代わり無煙化に貢献したディーゼル機関車や電気機関車の展示も多い。男性に人気の各種機関車は、花形だったブルートレインの先頭に立ったり、長大貨物列車を牽引する力持ちというイメージがあり、また単体でも圧倒的な存在感がある。ここでは本館1階に展示された機関車に注目してみた。

 EF66形電気機関車は、東海道〜山陽本線を走る高速貨物列車を牽引するために1968(昭和43)年から製造され、その独特のスタイリングに人気が集まった。さらに1980年代中期からは一部のブルートレインの先頭に立つようになり、より人気が高まった。

 またオレンジ色の凸型、DD51形ディーゼル機関車は、それまでの蒸気機関車に代わって全国各地の主要非電化路線で客車列車や貨物列車を牽引して活躍した。

DD51形「DD51 756」/
1960〜70年代に649両も製造された凸型のディーゼル機関車。四国を除く全国各地で活躍した。この車輌は熊本、東新潟、米子など各地で長く稼働した。

 京都鉄道博物館では、この2輌の下に潜って床下の機器を見ることが可能だ。鉄道車輌の下回りは、検査や補修を受け持つ鉄道員がピットに潜ってしか見ることができなかったもので、その車軸の太さや機器の取り付けなどを大人でも屈まずに見ることができ、鉄道模型を楽しむモデラーには垂涎の的となるだろう。

 下回りを見ることはできないが、同じ本館1Fに展示されているチョコレート色(国鉄では『ぶどう色2号』と呼んだ)のEF52形電気機関車は、1928(昭和3)年に製造された機関車で、リベットの多い車体や運転台の前にデッキが付いているスタイルは非常に無骨で老兵を連想させる。1972(昭和47)年まで20年にわたり阪和線で活躍し交通科学館に展示されていたことで、関西のファンにはおなじみの旧型電気機関車だ。

機関車の床下をじっくりと眺めてみたい

EF66形「EF66 35」/
デビュー時は下関に配置され、その後吹田で主に貨物列車を牽引。今回の展示にあたり、デビュー当時のカラーリングに戻された。機関車下のピットに入って床下の機器を見ることができる。

昭和30年代の懐かしい情景が蘇る

まるで昭和30年代にタイムスリップしたかのような「なつかし商店」。たばこの看板や赤い公衆電話、バス停、軽オート三輪もいい味わいだ。

 本館1階中央、「鉄道のあゆみ」ゾーンには懐かしい「昭和乃駅」とその駅前の「なつかし商店」が設置されている。そしてうれしいことに軽オート三輪のダイハツミゼットMP型まで展示。「なつかし商店」ではアイスクリームのケースや店内を覗き込んでしまうこと、請け合いだ。昭和30年代にタイムスリップしてしまおう。

 本館2階「生活と鉄道」ゾーンには、昔の時刻表や旅のしおり、記念切符など懐かしい資料が展示されている。その脇には昔と今の駅改札口を並べて設置。時代によって駅舎も様変わりしていることが実感できる。昔の駅舎脇には荷車が置かれるなど細かい演出にもついうれしくなってしまうだろう。

 そして2階で時間を忘れてしまうのは「鉄道ジオラマ」コーナー。かつて全国各地にあったような機関庫や橋梁などが再現されている。

「なつかし商店」には4本足のテレビやちゃぶ台も置いてあり、白熱電灯もいい演出をしている。

本館2階の巨大なジオラマにはコンパクトな扇型機関庫もある。新型列車が軽快に走るなか、別の世界があるようだ。

ノスタルジーに浸れる資料も多く展示

本館1階には各種実車輌の運転台も何台か置かれており、さまざまな時代の違いを比べて見ることができる。

本館2階「生活と鉄道」ブースには懐かしい旅のしおりや小冊子などがいくつも展示されている。当時の鉄道旅行は魅力的だったに違いない。

こんな列車でもう一度旅がしたい

DD54形「DD54 33」/
福知山や米子に配置された箱型のDD54形ディーゼル機関車は、独特なスタイルで人気を集めた。山陰本線京都口の客車列車を牽引していたこともある。この33号機は米子に新製配置されブルートレイン「出雲」の先頭に立ったこともあった。

 京都鉄道博物館に入ると、まずは「プロムナード」という展示場が目の前に広がる。東海道本線で花形特急を牽引したC62形蒸気機関車、“湘南電車”と呼ばれた80系電車、そして東海道新幹線で活躍しただんご鼻の0系新幹線電車、腕木信号機が並び、自ずとテンションは上がる。
 現在の鉄道車両は電車やディーゼル車ばかりで、機関車の牽引する客車列車に乗る機会はほとんどなくなった。寝台列車の定期列車もなくなり、一部の豪華列車、イベント列車、地方私鉄などにわずかに残るにすぎない。だからこの博物館では、今となっては懐かしい客車にも注目したい。
 残念ながら昔の食堂車、寝台車、そしてつい昨年まで走っていたトワイライトエクスプレスなどの車内に立ち入ることはできないが、ブルートレインで活躍した食堂車、ナシ20にはテーブルや椅子まで設置されており、そこで弁当を食べれば旅の気分も体験できるかもしれない。

 「プロムナード」を抜けた本館左側には「トワイライトプラザ」があり、前述したトワイライトエクスプレスの客車と牽引した専用の電気機関車、ブルートレイン、オロネ24と電気機関車といった戦後を代表する花形列車が展示されている。また、その間に設営されたプラットホームには木製のベンチや洗面台も置かれており、つい腰掛けたり、鏡を覗き込んで蛇口を回してみたりしてしまいたくなるだろう。

 この建物は1914(大正3)年に建設された2代目京都駅の上家鉄骨の一部が使われている。現在の4代目京都駅が建設されるまで80年、1番ホームを支えたものだ。

旧型客車の食堂車であるスシ28は、実際に存在した車輌ではなく、以前に展示された鉄道科学館オリジナルの車輌だが、昔のままの雰囲気を残している。

「トワイライトエクスプレス」専用牽引機、EF81と、その独特のスタイリングで今なお絶大な人気を誇るEF58の150号機は長く吹田で活躍した。

重要文化財に指定されている圧巻の扇形車庫

 京都鉄道博物館の目玉と言えば、やはり「梅小路蒸気機関車館」の扇状車庫だろう。かつて全国各地にあった扇型の機関庫は、前と後ろがある蒸気機関車にとっては必需品。扇の要に位置する転車台で方向転換して入出庫する。築造100年を超えるこの梅小路扇形車庫は国の重要文化財にも指定されている。

 さらにここに保存展示される蒸気機関車には自走するSL、つまり動態保存機が8輌もある。除煙板(デフレクター)に燕のマークが入ったC62形「C62 2」、C61形「C61 2」、「SLやまぐち号」牽引機であるC57形「C57 1」、「SL北びわこ号」に使用されることもあるC56形「C56 160」、"デゴイチ"の愛称で知られるD51形「D51 200」の5輌には車籍があり、また最も小さなSLであるB20形「B20 10」、大正生まれの8620形「8630」、"義経"号としても知られる7100形「7105」は車籍はないが動態車輌である。

 また、扇状車庫内に自力走行できない静態保存機として12輌、本館内に3輌があり、京都鉄道博物館内では合計23輌もの蒸気機関車が保存展示されている。

 この機関庫には実際に蒸気機関車の点検整備を行う「SL検修庫」、その脇に新たに作られた「SL第2検修庫」があり、時期によっては点検整備されている蒸気機関車を見ることもできる。

 そして機関庫の脇の500mの運転展示線では、専用の客車を蒸気機関車が牽引する「SLスチーム号」が連日複数回運行され、最終運行後には転車台に乗り機関庫へ戻るシーンも見ることができる。

 かつて全国で活躍した蒸気機関車が煙や蒸気を吐いて動く様は、まるで人間のようでもある。子どもばかりでなく大人も夢中になってしまうこと間違いないだろう。

「SL第2検修庫」には取材当日は"義経"号の7105とD51 200が整備されていた。本館と扇形庫広場を結ぶデッキから中を覗くことができる。

"スワローエンゼル"と呼ばれたC62 2は「SLスチーム号」を牽引することもある。一般公開時にはこの扇形庫には蒸気機関車で埋まり、圧巻となるだろう。

テキスト:Kazuya Minakoshi
媒体:VINTAGE LIFE vol.17

NEWS of VINTAGE LIFE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH