2018.12.19

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

PRIVATE EYES「ROLEX BUBBLE BACK SELECTION...

ヴィンテージ・ロレックスの中で、最も奥深いのがバブルバックだ。腕時計を事実上、実用的なものにしたエポックメーキングなモデルでありながら、専門家ですら把握しきれないバリエーションの豊富さを誇る。その深遠な世界の一端をご紹介。

多彩なデザインが存在するから、バブルバックは奥深く、面白い!

防水ケースと自動巻きを備えた画期的な腕時計

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3599/
1940年代製。フード部分に2本の線が入った、スチール製のフーデッドラグタイプのバブルバック。個体数が少ないため、ゴールドモデル以上に希少性の高いモデルとなっている。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。450万円(税別。取材当時)

 "バブルバック"の名で親しまれているロレックスの「オイスター・パーペチュアル」は、世界で初めて防水ケースと自動巻き機構を搭載した腕時計だ。1932年1月14日にスイスで自動巻き機構「パーペチュアル」の特許申請が行われ、翌年特許を取得。1933年から発売され、1955年までの約22年間にわたって製造された伝説のモデルだ。

 この自動巻きモデルをバブルバックと呼ぶのは、"泡(バブル)"のような形状を持つ裏蓋をしていたから。その特徴である裏蓋を開けると、まずローターが現われる。初期のものは手巻きムーブメントにローターを搭載したため、そのローターの厚みがそのまま裏蓋の膨らみとなったというわけだ。

 裏蓋の膨らみの具合によって、初期に製造された「バブルバック」と後期の「セミバブルバック」に分類される。ムーブメントにフラットなローターを備えた前者と、ケースを大型化してローターに傾斜をつけ、膨らみを抑えたのが後者である。自動巻きの黎明期ということもあり、ローターの取り付けに試行錯誤して生み出した結果といえるだろう。このふたつのケースの厚みはほとんど同じなのだが、セミバブルの裏蓋のほうが緩やかなカーブを描いているので、薄い印象を与えるようになっている。

 バブルバックの特徴のひとつに、約22年の製造期間中に生まれた、さまざまなデザインの微差による豊富なバリエーションが挙げられる。ヴィンテージ・ロレックス収集は、"バブルバックに始まり、バブルバックに終わる"とよく表現されるが、それはダイヤルのロゴマークやインデックスはもちろん、ベゼルやケースの種類まで多岐にわたり、そのバリエーションはロレックス研究家でも把握しきれないといわれるほどであり、奥深いアイテムだからである。

 外装の仕様を構成するディテールのなかでも、印象の決め手ともなるインデックスはバリエーションが数多く存在する。特にバブルバックらしいインデックスといえば、次ページに登場するユニークダイヤルや、大きい書体のビッグアラビアインデックスが挙げられる。また同じインデックス表示でもプリント、アップライト、夜光塗料といった使い分けもされている。貴族の数字と称されるローマンインデックスには、アップライト仕様が多く、ドレッシー感を高めたデザインが特徴だ。

 一方、愛好家の心をくすぐるのは、年代ことに変化するロゴマーク&ロゴタイプの表記だ。1930年代はバブルバックの正式名称である「ROLEX OYSTER PERPETUAL」のみだったが、'30年代後半になると、お馴染みの王冠マークが追加されるようになる。'40年代に入ると、「ROLEX」の文字が強調され、「OYSTER PERPETUAL」のみ書体変更されるスタイルへと変化してきた。

 微差ディテールによる様々なバリエーションが、バブルバックの熱狂を生み出してきた。それゆえバブルバックとの出会いは一期一会。ピンときた時計との出会う幸運は見逃さないようにしたい。

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3134/
1940年代製。文字盤の中央と外周部分で異なったカラーリングを用いた2トーンになったバブルバック。青焼きされたリーフ針が文字盤に映える。ケースはベゼル、ケース、裏蓋の3ピース仕様。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。150万円(税別。取材当時)

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3130/
1930年代製。イギリスの老舗宝飾店「MAPPIN」とのダブルネームモデル。ホワイトダイヤルにリーフ型のブルースチール針を備えたゴールドのケースは、バランスがよく王道のデザインだ。Cal.620、18KYGケース、ケース径31㎜、自動巻き。200万円(税別。取材当時)

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.2940/
1940年代製。交差する「×」で2トーンを表現したCHRIST CROSSデザインのバブルバック。陰影のあるようなダイヤルには、視認性の高いビッグアラビアインデックスとペンシル針を備えた。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。98万円(税別。取材当時)

左上:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.2940/1940年代製。上半分がローマ数字と下半分がアラビア数字の2種類の書体とバーインデックスからなる、ユニークダイヤルと呼ばれるモデル。針は視認性の高いベンツ針。センターセコンド仕様。Cal.630、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。98万円(税別。取材当時)

左下:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3372/1940年代製。エンジンターンドベゼルにスモールセコンド仕様のユニークダイヤルモデル。デザインはほぼ同じなのに、シルバー文字盤はブラックとは違った上品さを備えている。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。150万円(税別。取材当時)

右:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3372/
1940年代製。エンジンターンドベゼルを備えたユニークダイヤルのバブルバック。インデックスはブラックダイヤルに夜光塗料がしっかりと塗られ、高い視認性を確保できる。スモールセコンド仕様。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。340万円(税別。取材当時)

レアモデルの本命はユニークダイヤル

 数多くバリエーションが存在するバブルバックの中でも、レアモデルとして人気を博しているのが、上半分のインデックスがローマ数字、下半分がアラビア数字のユニークダイヤルだ。ベンツ針との組み合わせたこの文字盤デザインは1942年に意匠登録もされている。しかも、協力関係にあったパネライにも同じデザインが使われていたこともあり、その人気は絶大。ミリタリーテイストの強いブラック文字盤は、ロレックスがいち早く採用してきたスタイルでもあり、ホワイト文字盤と見比べると、印象もずいぶん異なって見えるから不思議だ。

セクター、ピンク、フーデッド……レアモデルが揃い踏み

左:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.2940/
1940年代製。インデックスに区切りのようにデザインされたセクターダイヤルデザイン。夜光塗料の塗られたベンツ針と合わせ、主張の強いスタイルに仕上がったバブルバックだ。センターセコンド仕様。Cal.630、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。68万円(税別。取材当時)

右奥:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.2940/
1940年代製。レアなピンクダイヤルのバブルバック。書体の小さい飛びローマインデックスに、細いスティック針を合わせた。ダイヤルの中で王冠マークが一番大きい表示になっているのも珍しい。Cal.630、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。120万円(税別。取材当時)

右手前:OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3599/
1940年代製。ラグとストラップとの繋ぎ目を隠したフーテッドタイプのバブルバック。スチール製は不人気だったため、生産本数が少なく、今となってはゴールドモデルよりも希少となってしまったモデルだ。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。280万円(税別。取材当時)

バブルバックたらしめる自動巻き機構

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.2940/
1940年代製。ゴールドの飛びアラビアインデックスに細めのゴールドスティック針を合わせたドレッシーなモデル。王冠マークとブランドロゴが強調されたバブルバック後期のモデルだ。Cal.620、SSケース、ケース径31㎜、自動巻き。49万8,000円(税別。取材当時)

 ディテールの微差によって、ロレックス研究者でも把握しきれないほどのバリエーションを生んできたバブルバックであるが、肝心の中身のムーブメントについては約22年の製造期間の中で技術的な進化は緩やかだったといえる。

 バブルバックの基幹キャリバーは、キャリバーNA系である。製造が終了する1955年まで第6世代まで登場するが、サイズ違いなどあるものの、基本設計はすべて同じであるといっていい。特徴は手巻きムーブメントの上にカバーを覆い、自動巻きローターを備えたこと。第3世代からはムーブメントを大型化してローターに傾斜が付くようになる。

 第4世代には時計の精度を保障するクロノメーターを取得し、文字盤にも表記された。クロノメーター表記については、そのテストが1930~40年前半までメーカーごとで行われていたものを、40年代後半から外部の公的専門機関での実施が義務づけられた。そのため時代によって表記方法も変化している。そして第6世代ではダブルカットと呼ばれるローターの傾斜が2段階になっているものを採用。それによって、裏蓋の厚みを緩やかにして自然な印象となった。

 またバブルバックの中には、フーデッド(覆いの付いたのもの)と呼ばれる、メタルカバーの備えたモデルがある。ラグとレザーブレスレットの接続部を隠し、美しく見えるように考案されたディテールだ。この特集では、トップページのゴールドタイプと、極めて個体数が少ない36ページのスティールタイプがある。発売当時、不人気だったことから、生産数が限られたものだったが、それが今では逆にレアモデルとして人気を博しているのである。

 バブルバックは高騰してきた現行モデルと比較してもリーズナブルな価格だし、希少性を考えると今後も値崩れするとは考えにくい。まずは多彩なバリエーションの中から、自分だけのバブルバックを選んでみてはいかがだろうか。

 最後にロレックスにはバブルバック以外にも多くの希少性の高いモデルが存在する。例えば、通称ムーンスターと呼ばれる、インデックスが星型のアップライトになったトリプルカレンダーモデルだ。以前、クリスティーズのオークションで5000万円超えの落札価格を記録した。バブルバックを卒業したら、狙いたい、まさにラスボス的な存在といえるだろう。

OYSTER PERPETUAL"BUBBLE BACK" Ref.3372/
1940年代製。ゴールド製のエンジンターンドベゼルとスチールケースを組み合わせたコンビ仕様のバブルバック。ビッグアラビアインデックスとペンシル針で主張のあるデザインに仕上がった。Cal.630、SSケース×YGベゼル、ケース径31㎜、自動巻き。68万円(税別。取材当時)

愛好家が行きつくヴィンテージ・ロレックスの終着点

ROLEX OYSTER PERPETUAL"MOON STAR" Ref.6062/
1953年製。星型のアップライトインデックスが特徴の通称"ムーンスター"と呼ばれるトリプルカレンダーモデル。2つの小窓に曜日と月の表示、文字盤外周にデイト表示を備える。ゴールドモデルは実にレア。Cal.NA、18KYGケース、ケース径36㎜、自動巻き。ASK

カメラ:Yasuhiro Yokosawa
テキスト:Katsumi Takahashi
媒体:VINTAGE LIFE 19

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